犬が嘔吐した場合、嘔吐物や症状によっては命に関わる病気が隠れているケースがあり、よく観察する必要があります。
本記事では、嘔吐の主な原因や病院に行くべき症状について、高額な治療費に備えるペット保険のメリットなどとあわせて解説します。
犬が嘔吐してしまった!吐いたものによっては注意が必要なことも
犬は体の構造上吐きやすい体質の動物ですが、吐いた内容によっては早期の治療が必要となる場合があります。まずは、犬の嘔吐にはどのようなものがあるか解説します。
黄色い液体
犬が黄色い液体を吐いた場合、過度な空腹状態が疑われます。長時間胃の中に何も入っていないために、胃液が逆流して嘔吐が起こります。
これは空腹による胃酸刺激や胃炎などが原因として考えられます。
他に症状がなく、回数が少ない場合は、空腹にさせないなどの工夫で症状が落ち着くでしょう。
嘔吐量や頻度が増えた場合は要注意
黄色い液体を吐いている場合でも、嘔吐量や頻度が増えた場合は注意してください。
- 食後1〜2時間しか経っていない
- 吐いた後にぐったりしている
- 血が混じっている
嘔吐量や回数の他に上記のような様子がみられた場合、肝炎や膵炎、腎臓病などの疾患が疑われます。重症化すると命にかかわる危険があるため、早めに獣医師に相談することをおすすめします。
茶色のもの
茶色いものを吐いた場合は、食べたフードを吐き出している可能性が高いでしょう。特にご飯を食べた直後にそのまま吐き出した場合は吐き戻しといい、主に早食いが原因で起こります。
一方で、フードなどの固形物が含まれていない場合、胃液の可能性が高いです。
また、急性胃腸炎や胃潰瘍など消化器官で深刻なトラブルが起こっている場合があります。色の具合でトラブルの場所などが異なるため、受診する際には嘔吐物を見せられるようにしておきましょう。
未消化のエサ
嘔吐物からフードの臭いがしている場合は、エサの大きさや体質に合わないなどのケースが考えられます。食欲があり、その後吐くこともなく元気な様子なら、それほど問題はないでしょう。
しかし、頻繁に未消化のエサを吐き出す場合は食道拡張や重症筋無力症など、何らかの理由によって消化器官の運動機能が低下している状態が考えられます。
子犬の場合には消化器官が未発達であることも
子犬の場合、消化器官が未発達であるため、固いフードやおやつを食べるとうまく消化できずに吐いてしまう場合があります。
嘔吐自体が子犬の体力の消耗や、食道を傷める可能性があるため、飼い主が日頃からフードをふやかすなど予防してあげましょう。
白い泡や透明の液体
犬が白い泡や透明の液体を吐いた場合、主に飲んだ水やストレスによる胃のむかつき、空腹による胃酸過多などが考えられます。
特に夏場や散歩の後は犬が水を大量に飲むことが多いため、吐いてしまいやすいタイミングです。多くの場合はすぐに収まりますが、嘔吐が続くようなら脱水症状に進行する恐れがあるため、早めに獣医師に相談することをおすすめします。
赤色のもの
赤いものを吐いた場合、口の中や呼吸器、胃や腸など身体のどこかから出血しているかもしれません。
色が薄い場合も出血していることには変わりはないため、自己判断で様子見をせず、速やかに動物病院を受診しましょう。
血が混じっている場合には要注意
特に血が混じっている場合、緊急性が高いと考えてください。胃や食道などの消化器官からの出血が考えられます。
また、嘔吐した物が赤黒い場合は、消化器官内にできた腫瘍からの出血など重篤なケースが多く、大変危険です。なるべく早く獣医師の診察を受けましょう。
毛玉
換毛期は、犬が自分で飲み込んでいた毛玉を吐き出すことがあります。毛玉自体に害はありません。
しかし、毛玉は消化されないため、吐き出すか便から出すかしなければ体内に残ってしまいます。被毛の飲み込みを防ぐ対策としては、定期的なブラッシングやこまめな掃除が効果的です。
異物
誤飲などで犬が異物を飲み込んだ場合、体内から異物を排出しようと嘔吐することがあります。
嘔吐物におもちゃの破片など異物が混ざっていた場合は、速やかに動物病院へ向かいましょう。誤飲した内容によっては、中毒症状や腸閉塞などを引き起こしかねません。
犬の嘔吐で考えられる病気や原因
犬が嘔吐したからといってすぐに慌てる必要はありませんが、なかには病気が原因で吐き気に繋がっているケースがあります。
ここでは、犬の嘔吐から考えられる病気や原因について解説します。
参照元:福岡市獣医師会|家庭の獣医学コラム「下痢・嘔吐」
ストレスや乗り物酔い
犬の嘔吐の原因としてまず挙げられるのが、ストレスです。
ストレスによって自律神経が乱れることで胃腸に負担がかかり、嘔吐しやすくなるとされています。過度なストレスがかかると、慢性化や胃潰瘍などに進行しかねません。
また、乗り物が苦手な犬は、車に乗るたびに吐いてしまうケースがあります。乗り物酔いが原因である場合は、以下のような工夫が効果的です。
- 乗る直前に食事を与えない
- 運動で発散させてから車に乗る
- 途中でこまめに休憩を取る
他に、事前に獣医師に相談して酔い止め薬を処方してもらうという方法もおすすめです。
アレルギーや中毒症状
アレルギーや中毒症状も、犬の嘔吐を引き起こす原因の1つです。
食物アレルギーを起こす食べ物はさまざまで、これまで問題なかった食べ物でも、年齢や体調によって突然アレルギー反応を起こすことがあります。
また、チョコレートやネギ類、タバコなど中毒を起こす危険のあるものを誤飲した場合、痙攣などの症状も生じかねません。
食べた量によっては一刻を争う状態であるため、速やかに動物病院に連絡して指示を仰ぎましょう。
食中毒や感染症
細菌やカビなどの病原体が付着した食べ物を食べた場合も、嘔吐の症状があらわれます。
特に下痢や嘔吐があまりにも激しい場合、脱水症状などを引き起こすこともあるので注意しましょう。
また、感染症も犬が嘔吐する原因の1つです。パルボウイルスやジステンパーウイルスなどのウイルスに感染すると、嘔吐の他に発熱などを伴う下痢も引き起こしかねません。
さらに多頭飼いをしている環境では、感染症が広がる可能性があります。こういった面からも、少しでも食中毒や感染症の疑いがある場合は速やかにかかりつけの獣医師に相談しましょう。
薬やワクチンの副作用
ワクチンの接種後や薬を飲んだ後に吐いた場合は、副作用が考えられます。
一般的に初めてワクチンを打つ犬が多い傾向にありますが、過去に打った経験のある犬も起こり得ることなので注意しましょう。
副作用としては、嘔吐の他に顔の腫れやチアノーゼ、呼吸困難や震えなどがあります。翌日になっても症状が続くようであれば、獣医師に相談してください。
ヒートによる体調不良
ヒート中である場合、その影響から吐いてしまうことがあります。ヒート中は発熱や倦怠感、食欲不振などの症状が生じることもあります。
ヒート以外にも、メスは子宮蓄膿症による細菌繁殖の副産物による中毒症状が原因で吐くこともあるため、特に出産経験のない犬は注意してください。
子宮蓄膿症は単なる生理と見分けがつきにくいことが多いため、嘔吐の他に多飲多尿や食欲の低下などの症状がみられた場合は速やかに動物病院で診察を受けましょう。
胃や小腸などの内臓トラブルや代謝性疾患
胃や小腸などの内臓トラブルからの嘔吐も考えられます。胃腸炎や膵炎などの炎症の場合は、短期間で激しい嘔吐を何度も繰り返す急性と、長期間嘔吐が続く慢性に分かれます。
また、代謝性疾患も嘔吐を引き起こす原因の1つです。肝臓や腎臓の炎症そのものに加えて、機能不全によって毒素が身体中にまわるために、嘔吐してしまいます。下痢や発熱、食欲不振や水を大量に飲むなどの症状がみられる場合もあるでしょう。
発見が遅れるとさまざまな疾患が併発し、治療が難渋することもあるため、早期発見に務める必要があります。
犬の嘔吐のうちすぐに動物病院を受診した方が良い症状
犬の嘔吐はそれほど珍しいことではありませんが、以下のような症状がみられる場合は注意が必要です。
様子をみているうちに症状が悪化してしまう恐れもあるため、1つでも当てはまる場合は速やかにかかりつけの動物病院へ連れていきましょう。
繰り返し吐いてしまう
犬が繰り返し吐いている場合、消化器官だけでなく内臓疾患などさまざまな病気の存在が考えられます。
嘔吐を繰り返せば、体内の電解質の欠乏や栄養バランスの乱れなどを引き起こしかねません。特に水を飲んでも吐いてしまう場合は、消化管の閉塞や胃捻転などの可能性があり、一刻を争う状態です。
命に関わる恐れがあるため、このような危険な吐き方をしている場合は、迷わず獣医師に相談しましょう。
嘔吐したものがネバネバしている
嘔吐したものがネバネバしている場合、脱水を起こしている可能性が考えられます。
特に噛む力も飲み込む力も弱いシニア犬は、吐くことで嘔吐物を喉に詰まらせてしまうことがあります。
愛犬の背中周辺の皮膚をつまんでから離し、元に戻るまで2秒以上かかる場合には脱水が疑われるため、速やかに動物病院で受診してください。
嘔吐が毎日続いている
回数は少なくとも嘔吐が毎日続いている場合、消化器の病気や異物誤飲、何らかの感染症など重大な疾患にかかっている疑いがあります。
突然犬が吐きだし、その後も毎日続くような場合はかかりつけの動物病院に連絡しましょう。
吐こうとしているのに吐けない
吐こうとしているのに吐けない様子がみられたら、胃拡張や胃捻転の疑いがあります。
胃拡張とは多量のガスで胃が膨れ上がる症状のことを指し、胃捻転とは胃がねじれてしまう状態をいいます。
吐きそうで吐けないという症状以外に、お腹の膨らみや苦しそうなどの症状があるのが特徴です。
異物誤飲の場合、すべて吐き出せれば回復することもありますが、体内の消化器官を傷つけている可能性もあります。異物が腸に詰まれば腸閉塞を起こしかねません。
胃捻転や腸閉塞などは命に関わる危険な状態なので、思い当たる節があれば一刻も早く動物病院で検査してください。
嘔吐だけでなく体の震えや血便がみられる
嘔吐だけでなく体の震えや血便がみられた場合、ウイルスや寄生虫の感染が疑われます。
感染症の場合、種類によっては他の犬にウイルスを感染させる恐れがあるため、散歩は控え、また嘔吐物を素手では触らないようにしましょう。
元気がなくなり、ぐったりしている
明らかに元気がなく、ぐったりしている様子がみられた場合は脱水や栄養失調、低血糖などの他の疾患による体調の悪化の可能性も考えられます。
放置すれば命にかかわる危険があるため、速やかに動物病院を受診してください。
犬の嘔吐の原因となる疾患の治療費はペット保険で備えられる
犬の嘔吐には、命にかかわる病気のサインとなる場合があります。ペット保険への加入は、こうした愛犬の治療費の備えになるでしょう。
ここでは、ペット保険に加入するメリットを解説します。
※保険会社や発症のケースによって補償対象外となる場合もあります。詳細は加入中または加入を検討しているペット保険会社へお問い合わせください
犬の傷病の中でも胃腸炎や異物誤飲は保険金請求が多い
アイペット損保が行った、保険金請求が多い傷病のランキングでは、胃腸炎や異物誤飲で受診した人は多く、胃腸炎が第3位で異物誤飲が第5位です。
特に、犬の嘔吐の多くは急性胃腸炎が原因であるとされています。
たとえば急性胃腸炎疑いで動物病院を受診した場合、血液検査や超音波検査などが必要に応じて行われます。
急性胃腸炎疑いで検査した場合
- 初診料・・・約1,000円
- 血液検査・・・約4,000円
- 便検査・・・約500円
- 超音波検査・・・約3,000円
- レントゲン検査・・・約3,000円
- 点滴・・・約1,000円
- 合計・・・約12,500円(薬代など除く)
参照元:日本獣医師会|家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査
※上記の診療費等はあくまで一例であり、一般的な平均・水準を示すものではありません
※各診療項目の金額は、動物病院によって異なります
あくまで目安ですが、犬の嘔吐で受診した場合は10,000円前後の治療費がかかると考えておきましょう。その他にも、吐き気止めや腸運動を整える注射をすることがあります。
症状の程度によっては通院などが必要となるため、さらに治療費がかかる可能性もあります。
参照元:アイペット損保|ペットの保険金請求が多い傷病のランキング2021
日本臨床獣医学フォーラム|急性胃炎
高額な治療費など急な出費にも備えることができる
ペット保険の加入には、高額な治療費など急な出費にも備えることができるといったメリットも挙げられます。
アイペット損保によると、動物病院で全身麻酔をして内視鏡で異物を取り出した場合に7万円以上の治療費がかかったというケースがあるようです。
ペットの治療費は100%自己負担なので、手術が必要となった場合、数十万円の高額な治療費が突然必要になることも少なくありません。
こうした治療費を補償してくれるのがペット保険です。いざというときに家計の負担を抑えてくれるのも、ペット保険のメリットといえるでしょう。
※保険会社や発症のケースによって補償対象外となる場合もあります。詳細は加入中または加入を検討しているペット保険会社へお問い合わせください
参照元:アイペット損保|ペットの保険金請求が多い傷病のランキング2021
通院のハードルが下がって病気の早期発見にもつながる
ペット保険の加入は、通院ハードルを下げることにも繋がります。
病院で高額な出費があると受診を躊躇してしまいがちですが、ペット保険が医療費を補償してくれることで、心配なことがあれば悩まず動物病院に行こうという気になるでしょう。
早期に病気を発見できれば悪化リスクを下げることにも繋がるため、結果的に愛犬の身体と飼い主の金銭的負担を減らすことになります。
以下記事では、ペット保険各社について保険料や補償内容など、具体的な比較をしています。あわせてご覧ください。
犬が嘔吐をしてしまったときの対処法
犬が嘔吐してしまった場合、症状を悪化させないために適切な対処が求められます。
ここからは、万が一のときに慌てないよう、犬が嘔吐したときの対処法について解説します。
嘔吐から時間が経ってからごく少量の食べ物を与える
食事に関しては、嘔吐から少し時間が経ってから、消化に良いものをごく少量だけ与えてみましょう。ごく少量を与え様子を見てみて、再度嘔吐をしてしまう場合には動物病院へ連れて行くことをおすすめします。
また、水分に関しても少量を与えてみて、それでも嘔吐をしてしまう場合、脱水に繋がる可能性があるため、獣医にみてもらうようにしましょう。
ただし、水のがぶ飲みは嘔吐につながることがあるため、少量に留めることが大切です。
動物病院を受診する際は嘔吐物を持参すると良い
犬が嘔吐して動物病院を受診する際は、嘔吐物を持参しましょう。
さらに食事時間や嘔吐した時間、回数などをメモしておけば診療時の手助けになり、獣医師が判断しやすくなります。
また、下痢や軟便をしている場合は、便検査のために一緒に持っていくことをおすすめします。どちらも包み紙に吸収されないよう、ラップやアルミホイルなどを使って持っていくと良いでしょう。
犬の嘔吐についてよくある疑問
最後に、犬の嘔吐についてよくある疑問について解説します。
犬が吐き戻したエサを食べてしまっても問題ない?
犬が1度吐き戻したエサを食べてしまっても、基本的には問題ありません。
ただし、繰り返し吐く場合は食べたものが体に合っていない可能性や早食いなどの原因が考えられます。
また万が一、犬が食べてはいけないものを吐き戻した場合には、もう1度食べてしまうことのないよう注意してください。
散歩中に草を食べて嘔吐してしまうのはなぜ?
散歩中に草を食べてしまう理由についてさまざまな見解がありますが、現在のところ草を食べる行為と嘔吐の関係性について明確にはわかっていません。
- 胃の中の食べ物や余分な胃酸を吐くため
- 遊びのため
- お腹が空いたため
しかし、スイセンやチューリップなど中毒症状を引き起こす植物や、ダニなどが草に潜んでいる場合も考えられるため、積極的に食べさせるのは控えましょう。
参照元:ELSEVIER|Characterisation of plant eating in dogs
異物の誤飲や拾い食いなどに注意する
拾い食いは嘔吐の原因になりかねません。場合によっては口に入れたものを消化できず、犬の命を脅かす危険性があります。
特に散歩中は道にガラスの破片や葉っぱ、石などが落ちているため、勝手に食べないよう普段からしつけておきましょう。
誤飲を繰り返す犬や拾い食いの癖のある犬は、動物病院に相談してみるのもおすすめです。
獣医師からみた犬と嘔吐の関係
下痢と同じく、嘔吐も飼い主さんが直面しやすい消化器トラブルのひとつと言えるでしょう。
軽度の炎症による嘔吐であれば、給餌制限などでお腹が休まることで回復する可能性がありますが、長期化すると脱水などで致命傷になりかねません。
長期間に渡り様子を見ることは避け、くりかえしたり、症状の悪化が見られたりするようであれば早めに受診するよう心がけましょう。
よく直面しやすいトラブルでもある嘔吐ですが、実は大きな病気を抱えているサインかもしれません。
外科治療が必要だったり、長期の治療、入院治療になると高額になる可能性があり、家庭の経済状況によっては、治療費の支払いが難しくなってしまう飼い主さんもいるでしょう。
後から後悔することの無いよう、万が一の備えとして保険の加入の検討をおすすめします。
まとめ
犬の嘔吐はすぐに治まるなら問題ありませんが、吐いたものによっては重大な疾患が隠れている恐れもあります。
吐く前や吐き方、吐いた後の様子など、普段と比べて違和感がみられた場合は緊急度にかかわらず、早めに動物病院を受診するようにしましょう。
このとき、嘔吐物を持参するか、難しければ写真や動画を撮影して獣医師にみせることをおすすめします。
また、嘔吐の原因によっては動物病院で高額な治療費が求められる場合もあります。もしものときに愛犬に最善の治療方法を選択できるよう、ペット保険の加入を検討しておくのはいかがでしょうか。