しかし、動物病院でかかった費用の全てが補償されるというわけではありません。
本記事では、加入後のトラブルをできるだけ回避するために押さえておきたいポイントを解説していきます。
トラブル①保険金を受け取れない
ペット保険には補償対象外となる項目が定められています。このことをきちんと理解しておかないと、補償されると思っていたのに保険金が受け取れないといったトラブルが発生する可能性があります。
本項目では、いざという時に保険金を受け取ることができないケースをいくつかご紹介します。
告知義務の違反をした場合
ペット保険に加入するには、現在のペットの健康状態や、これまでにかかったことのある傷病など、保険会社がペット保険の加入可否を判断するために必要な情報を正確に申告する必要があり、このことを告知義務といいます。
告知が必要な内容は保険会社各社で異なりますが、例えば以下のような項目があります。
- ペットの用途(愛がん用、補助犬等)
- ペットの生年月日
- ペットの品種
- ペットの健康状態・病歴
- 他社ペット保険の加入状況
告知が必要な内容に対して、告知をしなかったり、虚偽の告知をした場合には、「告知義務違反」として契約が解除されたり、保険金が支払われないことがあるため、正しく告知を行うことが非常に重要です。
申込み時に不明な点があれば、保険会社に問い合わせを行い、意図せず「告知義務違反」に該当してしまうといったトラブルを防ぎましょう。
告知義務に関してはこちらの記事でより詳しく説明しています。
免責事由に該当する治療の場合
病気予防である接種に対しても何%か補償してほしい(アイペット損害保険株式会社「うちの子」、神奈川県在住、50代女性)
ペット保険を検討する際に「免責」という言葉を見たことがあるかもしれません。保険における「免責」とは「保険会社が責任を免れること」、つまり保険会社が保険金を支払わなくてもいい状態を指します。
ペット保険の免責は、主に「免責事由」と「免責金額」の二つに分類されます。ここでは「免責事由」について説明します。
「免責事由」とは「保険会社が保険金を支払わなくてよい条件」のことです。
この免責事由にあてはまる場合は、補償の対象外となり、保険金を受け取ることはできません。
補償の対象外となる免責事由は各保険会社で異なりますが、例えば以下のような項目があります。
- 予防のためにかかる費用(例:ワクチン接種、ノミダニ予防薬など)
- 妊娠、出産に関わる費用
- 先天性疾患や遺伝性疾患によって生じる傷病
- 飼い主の過失によって生じた傷病
- 自然災害によって生じた傷病
- サプリメントなどの医薬部外品費用
※商品によっては補償対象となる場合もあります。
※補償対象外となる全てのケースを記したものではありません。詳細は、各商品の重要事項説明書および約款でご確認ください。
また、契約の際に「特定部位不担保」や「特定疾病不担保」などといった特約を付けて加入した場合は、特定の部位や傷病も補償対象外となります。
このほかにも、保険会社によっては膝蓋骨脱臼(パテラ)や椎間板ヘルニア、歯周病など特定の傷病を補償対象外項目に定めています。
「病気になってしまってから、その病気が補償対象外だったことに気づいた」といったトラブルを避けるためにも、保険加入を検討する際には、補償されない傷病をあらかじめ確認しておきましょう。
保険各社のより詳細な補償対象外項目に関しては以下の記事をご覧ください。
待機期間中に発生した治療の場合
新規の際に待機期間があるのは不満。(アクサ損害保険株式会社「ペット保険」、愛知県在住、30代女性)
ペット保険商品によっては待機期間が定められている場合があります。
待機期間とは、保険の開始日から一定の間、保険金が支払われない期間のことです。
待機期間の有無や日数等は商品によってことなります。
例えば、「病気は30日間、ガン(悪性腫瘍)は45日間、ケガは待機期間なし」といったように、項目ごとに待機期間を設けているペット保険もあります。
病気に対して待機期間が設けられている場合、待機期間中に発症した病気は待機期間が終わった後に治療を受けたとしても保険金が支払われないことにも注意しておきましょう。
また、待機期間を定めていない会社でも、病気やケガの原因が保険の開始日より前であると判断された場合には、補償を受けることができないこともあるようです。
支払限度額・支払限度日数(回数)を超えている場合
結石で手術をした際、15万円以上の手術費用に対し、10万円までしか給付されなかった。(株式会社FPC「フリーペットほけん」、新潟県在住、50代男性)
手術の補償額を増やして頂きたいです。(ペットメディカルサポート株式会社「PS保険」、福島県在住、20代女性)
ペット保険のなかには、診療形態(通院・入院・手術など)ごとに定める支払限度額とそれぞれに対応する限度日数または限度回数を定めているプランもあります。
このようなプランでは、支払限度日数(回数)に達してしまうと、保険期間が更新されるまで補償を受けることができません。
また、1回(日)の治療費が高額であったとしても、支払限度額までしか補償されないことも確認しておきましょう。
支払限度日数(回数)がないプランもありますが、そのようなプランでは年間の支払限度額を定めています。年間の支払限度額に達してしまうと、少なくとも保険期間が更新されるまでは補償を受けることができないことも認識しておきましょう。
トラブル②保険金の額が思っていたより少ない
加入している保険会社の補償内容をきちんと理解しておかないと「もらえる保険金の額が思ったより少なかった」といったトラブルが起こるかもしれません。
本項目では、もらえる保険金の額を正しく見積るために確認しておきたい項目をご紹介します。
補償割合が100%でない場合
本当は80%以上補償してもらいたいですが、70%なので少し不満です。(楽天損害保険株式会社「スーパーペット保険」、東京都在住、40代女性)
補償割合とは、補償対象となる治療費のうち、保険金として補償される割合のことです。
例えば、補償割合が70%の保険に加入していた場合、補償対象となる治療費10,000円の70%である7,000円が保険金として支払われ、残りの3,000円が自己負担額になります。
このように、補償割合が100%でない場合には、必ず自己負担額が発生することを認識しておきましょう。
補償対象外項目が含まれている場合
前述したような補償対象外の項目が治療費の中に含まれていると、保険金として支払ってもらえる金額も変わります。
例えば、動物病院での治療費10,000円の中に補償対象外であるサプリメント代が2,000円含まれていた場合、
(10,000円ー2,000円)×70%=5,600円
より、保険金として受け取る金額は5,600円であり、残りの4,400円が自己負担額になります。
※税金、免責金額、サプリメント代以外の補償対象外、支払限度回数や限度額などは考慮していません。
免責金額がある場合
免責金額が5000円なので、自己負担することもわりとある。(イオン少額短期保険株式会社「イオンのペット保険」、宮城県在住、30代女性)
「免責事由」については上述しましたが、ここでは「免責金額」について説明します。
「免責事由」とは別に「免責金額」を設定している保険会社もあります。
免責金額とは、治療を受けた際に自己負担する金額のことです。例えば、免責金額が5,000円に設定されている場合、補償対象となる治療費が5,000円以下の場合は、自己負担になります。
免責金額を超えた場合の対応は各社のプランによって異なります。
補償割合70%、免責金額5,000円のプランで、補償対象となる治療費が10,000円のケースを考えてみましょう。
この場合、10,000円の70%である7,000円から免責金額の5,000円を引いた2,000円が補償されるケースや、10,000円から免責金額の5,000円を引いた残りの5,000円の70%である3,500円が補償されるケースなどがあります。
免責金額が設定されていると比較的保険料が抑えられる反面、いざという時の自己負担額が多くなることもあります。免責金額の具体的な計算方法は各社異なるので、トラブルにならないようにきちんと内容を理解したうえで、加入を検討するようにしましょう。
トラブル③保険金請求時
保険金請求がスムーズにいかないと、トラブルに発展する可能性があります。本項目では保険金請求時に知っておきたいポイントをご紹介します。
診断書作成に費用がかかる
保険会社によっては、保険金を請求する際、診断書の提出が必要になることがあります。また、診断書以外にも、保険会社指定の保険金請求用書類を動物病院で作成してもらう必要があるケースもあります。
このような保険金請求時に必要な文書作成にかかる費用は補償の対象にならないこともあります。
また、書類を郵送して保険金を請求する場合は、その郵送代も自己負担となることもあるようです。
保険金を請求するためにお金がかかるケースもあることを認識しておきましょう。
各保険会社の保険金の請求方法については、次の記事で詳しく解説しています。
保険金の支払いまでに時間がかかる
申請してから支払われるまで時間がかかっている。(東京都在住、50代男性)
保険金の精算方法には、動物病院の窓口で治療費から保険金が差し引かれた額を支払う「窓口精算」と、動物病院の窓口でかかった治療費の全額を一旦支払い、後日保険会社に保険金を請求する「後日精算」の2種類があります。
「窓口精算」であれば、その場で手続きが終わりますが、「後日精算」の場合には自分で保険会社に請求をした後に、保険会社に保険金を振込んでもらうため、保険金を受け取るまでに時間がかかります。
保険会社によって保険金の請求から支払いまでの日数は異なりますが、保険金請求書類が保険会社に到着してから数日~30日ほどかかります。
少額の場合であれば振り込まれるまでの日数は気にならないかもしれませんが、手術をした際など高額の場合はなるべく早く受け取りたいと思うかもしれません。
トラブル④更新時
ペット保険の保険期間は1年間なので、継続をするためには契約を更新する必要があります。本項目では、更新時のトラブルを回避するために気をつけておきたいポイントをご紹介します。
更新できないケースもある
更新時には、これまでの保険金請求の状況や病気の受診状況などによって審査が行われます。
保険会社によっては更新を断られることもあります。
慢性疾患や完治が難しい傷病にかかった場合
更新の際には審査が行われることもあり、その結果契約の更新ができないことがあります。また、更新はできるものの、補償対象外となる傷病や部位が次の契約から発生することもあります。
補償限度額を使い切った場合
年間補償額を使い切るとその段階で契約が失効になることもあります。
通院・入院・手術とそれぞれで限度回数と限度金額が定められているタイプの保険商品の場合、年間補償額全てを使い切ることはあまり考えられませんが、念の為確認しておきましょう。
保険料を支払っていない場合
保険料が未納の場合には保険が更新できないこともあります。口座やクレジットカードを変更した場合には必ず保険会社に届け出を行い、保険料の振替が滞りなく行われているか確認することも大切です。
更新ができないことがわかった際に、他社保険への切り替えを検討することがあるかもしれませんが、既に他社へ新規加入できる年齢ではなかったり、引受を断られてしまうこともあります。また、いくつかの傷病が補償対象外となる条件付きでの契約となることもあります。
加入を検討する際には、各社の更新時の対応も確認しておくようにしましょう。
各保険会社の更新時の対応については、以下の記事もご覧ください。
保険料が値上がりすることも
保険料が年齢毎に上がっていくので、飼い主が歳を取るのに支払いが続けられるか不安。(アクサ損害保険株式会社「ペット保険」、神奈川県在住、50代女性)
ペットが幼いころには保険料が安いと思って加入をしたのに、年を重ねるにつれて保険料が年々高くなっていくと感じることがあるかもしれません。
一般社団法人ペットフード協会の調査によると、2020年時点で犬の平均寿命は14.48歳、猫の平均寿命は15.45歳です。生活環境の向上や医療技術の発展に伴い、ペットの寿命はこれからも伸びていくかもしれません。一般的に、ペット保険はペットの年齢が高くなるほど保険料も高くなります。加入時の保険料のみではなく、高齢になってからの保険料も確認したうえで、どの保険に加入するか検討するようにしましょう。
また、アニコム損保の「どうぶつ健保ふぁみりぃ」のように、保険利用回数に応じて翌年の保険料が割引されたり、割増されたりする制度を導入している保険商品もあります。
割増引制度が設けられている場合、保険の利用回数が少ない場合にはお得になることもありますが、利用回数が多いと保険料が値上がりすることも把握しておきましょう。
トラブルを回避するには
さまざまなトラブルの可能性を紹介してきましたが、そもそもトラブルをできるだけ避けるためにはどうしたらよいのでしょうか。トラブルを回避するために心がけたいポイントをいくつか紹介します。
約款・重要事項説明書をきちんと読む
保険会社は約款に基づいて保険金の支払いや契約の更新をしています。重要事項説明書では、主に特に注意してほしいことや確認してほしいこと、約款ではより細かな定めが記載してあります。
文章が長く、理解するのが難しいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、加入後のトラブルを避けるためにも重要事項説明書と約款の両方を確認し、納得した上で保険に加入するようにしましょう。
気になる項目は問い合わせする
トラブルを回避するためには、約款や重要事項説明書に関して気になった点やその他の不安な点に関して、保険会社に問い合わせをして明らかにしておくことも大切です。問い合わせ内容は念の為メールなどのデータとして記録に残しておくと、のちのトラブルが回避できるかもしれません。
もしもトラブルになってしまったら?
これまでにご紹介した注意点に気をつけていても、トラブルになってしまうことはあるかもしれません。ここでは、トラブルになってしまったときにも利用できる制度をいくつかご紹介します。
クーリング・オフ制度
一度契約の申込みや契約の締結をした場合でも、一定の期間内であれば申込みを撤回したり契約の解除ができるしくみをクーリング・オフ制度といいます。
クーリング・オフは保険期間が1年を超える保険契約を対象としているので、保険期間が1年以内であるペット保険は、原則としてクーリング・オフの対象とはなりませんが、独自にクーリング・オフ制度を設けている保険会社もあります。
契約後に気になる点が発生し、契約を解除したくなった場合には、契約した保険会社がクーリング・オフ制度を設けているか確認してみましょう。
最寄りの消費生活センターに相談する
保険金の支払いや契約に関して、保険会社に聞いても解決しないことがある場合には、消費生活センターに相談することも選択肢のひとつです。
消費者ホットライン「188」に電話すると、住んでいる地域の相談窓口(市区町村の消費生活センターや消費生活相談窓口など)を案内してもらうことができます。詳しくは、全国の消費生活センター(消費者ホットライン)をご確認ください。
また、指定紛争解決機関へ相談するという選択肢もあります。保険会社ごとに、相談先を重要事項説明書やホームページで案内しているので、そちらを利用することも可能です。
まとめ
ペット保険は、各保険会社が定めた内容によってそれぞれ特徴や違いがあります。認識違いでのトラブルを防ぐためにも、約款や重要事項説明書などで必ず詳細を確認し、納得したうえで加入するようにしましょう。
【募集文書番号】アニコム損害保険株式会社:W2201-0048/株式会社FPC:AL-KY241209-091(25.12)/ペットメディカルサポート株式会社:ANI211115
調査目的:加入しているペット保険の満足度調査
調査方法:インターネット調査
調査対象:現在ペット保険に加入しており、ペット保険加入時に選定をした方
調査地域:日本国内
調査期間:2020年2月18日~2021年8月26日
調査主体:株式会社アニマライフ
調査機関:クラウドワークス