症例編

【獣医師監修】猫の血便から疑われる病気とは?症状別の危険性や診療費について解説

猫が血便をした場合、血便の色や状態によっては重篤な病気を示している場合があるため、適切に対処することが求められます。

本記事では、猫の血便の見分け方や疑われる病気、血便に関連する病気の診療費や万が一の時に備えるペット保険について解説します。

猫の血便は色や状態から原因を推定できることも

こちらを見つめる猫
血便を起こしている猫の状態は、便の色や状態から原因を推定できることがあります。

血便が数日間続く場合は、下痢や軟便などにかかわらず、速やかにかかりつけの動物病院を受診して正確な原因を突き止めましょう。

参照元:一般社団法人・日本臨床獣医学フォーラム|便に血が混じる

便に鮮血が混じっている

便に鮮血が混じっている場合、食物アレルギーや細菌感染など何らかの原因によって、大腸から肛門までの下部消化官でトラブルが起きている可能性が考えられます。

一方、血が便の外側に付着している程度の場合、便秘などで肛門周辺が傷つき、切れ痔を起こしている可能性もあります。

場合によっては肛門周辺の炎症や腫瘍、大腸炎などの可能性もあるため、念の為、獣医師に相談しておきましょう。

また、子猫の便に鮮血が混じっている場合、たとえ元気があったとしても、肛門付近からの出血が確認できる時以外は一度動物病院を受診しておくことをおすすめします。

下痢に血が混じっている

下痢に血が混じっている場合、腫瘍や大腸炎など重篤な病気を患っている可能性があります。特にトマトジュースのような水様便が出る場合には、腫瘍や大腸炎など重篤な病気を抱えている可能性があり、非常に危険です。

また、多量の血液便が続くことで貧血や脱水症状、体力の低下などが起こりやすくなり、別の重篤な病気を引き起こす可能性もあります。

治療が遅れると命にかかわりかねないため、緊急に動物病院を受診してください。

猫 下痢
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黒いタール状の便

黒いタール状の便の場合、寄生虫や炎症、腫瘍などさまざまな原因によって、胃から小腸にかけての上部消化官でトラブルが発生している可能性があります。

便が黒い理由は、出血してから排泄されるまで時間が経つことで黒く変色してしまうからです。

特に子猫や何らかの病気などで体が弱っている成猫の場合、上部消化管からの出血が続くことでかなりのダメージを受ける可能性もあるため、迅速な対応が求められます。

黒い便の場合は便の色で気づきにくいため、普段からこまめに便の様子をチェックしておきましょう。

便の表面に粘液が付着している

便の表面に粘液が付着している場合、大腸に何らかの異常が生じている可能性があります。
粘液便がみられるのは、腸から分泌される粘液や腸粘膜が剥がれ落ちているからです。

こうした血便をする時は、食欲の低下や元気の消失、下痢を繰り返すなどの症状がみられることも多く、重篤な病気の可能性があるため特に注意が必要です。

粘液便の他にも明らかな異変がみられる場合は、一刻も早くかかりつけの獣医師に相談して、詳しい検査や治療を進めることをおすすめします。

肛門付近から出血が止まらない

肛門付近から出血が止まらない場合は、肛門嚢の破裂や、別の病気の影響で血液の凝固系の異常を抱えているなどが疑われます。

猫では稀ですが、肛門嚢炎とは肛門嚢の導管の閉塞や細菌感染によって引き起こされる病気です。

症状が進行した場合、肛門嚢が破裂して大きな穴が開き、膿や出血が出る他に、発熱や元気消失、痛みから排便が困難になることもあります。

放置すると菌が感染し、さらに悪化するリスクが高まるため、速やかに獣医師に相談するようにしてください。

参照元:壱岐動物病院|肛門嚢/肛門嚢破裂

血便ではなく血尿であるケースもあるため要注意

便に血が混じる程度ではなく、血尿である場合、尿石症や尿道炎、膀胱炎や腫瘍などの病気が疑われます。

特に真っ赤な血尿がわずかながらにポタポタと出て、トイレに頻繁に通う、食欲の低下や嘔吐、うずくまるなどの様子がみられる場合は、尿路が閉塞を起こしている可能性が高く危険です。

食欲はあるが血尿が続くという場合も、重篤な病気が隠れていることがあるため、速やかに動物病院へ連れていきましょう。

参照元:白石動物病院|猫の尿道閉塞(尿閉)について

猫の血便を引き起こす原因として考えられる病気

寝そべる猫
猫の血便は、その多くは何らかの病気が原因で起こっています。

ここからは、血便を引き起こす猫に考えられる主な病気について解説します。

感染性の胃腸炎

まず挙げられるのが、感染性の胃腸炎です。
細菌の場合はカンピロバクターやサルモネラ、ウイルスなら猫パルボウイルスなどが考えられます。

細菌やウイルス感染による胃腸炎を患った場合、以下のような症状がみられます。

胃腸炎(感染性)によってみられる主な症状
  • 血便
  • 下痢
  • 嘔吐
  • 食欲の低下
  • 元気の消失

細菌感染の場合、下痢や腹痛などがみられるのも特徴です。

カンピロバクターやサルモネラなどの細菌に感染した場合、成猫ではあまり症状が出ないものの、混合感染や子猫が感染すると重症化しかねません。

一方、猫パルボウイルスに感染している場合、上記の症状の他に、じっとうずくまるなどの様子がみられることもあります。

猫パルボウイルスは致死率が高く、ワクチンを接種していない子猫がかかると重篤化しやすいため、定期的にワクチンを受けておきましょう。

感染による胃腸炎は、長期化すると脱水症状や栄養吸収不全などを引き起こす恐れがあるため、感染が疑われる場合は、必ず獣医師の指示を仰いでください。

参照元:一般社団法人・日本臨床獣医学フォーラム|猫汎白血球減少症(猫伝染性腸炎)

寄生虫による胃腸炎

次に挙げられるのが、寄生虫による胃腸炎です。

寄生虫とは、コクシジウムなどの原虫、回虫や条虫などに感染することで引き起こされる胃腸炎で、一般的には以下のような症状がみられます。

胃腸炎(寄生虫)によってみられる主な症状
  • 血便
  • 下痢
  • 嘔吐
  • 食欲の低下

体力の少ない子猫の場合は、下痢や血便などが続くことで、体力の消耗や脱水症状などを引き起こす可能性があります。

特に猫回虫は人間にも感染する恐れがあり、子猫と同様に、体力や免疫力の低い幼児や子どものいる家庭は注意しましょう。

血便がみられる場合は便をラップなどで包んで、なるべく早く動物病院で検査してもらうことをおすすめします。

参照元:あいむ動物病院|猫回虫(蛔虫、かいちゅう)症

胃腸の腫瘍

胃腸の腫瘍も、血便がみられる際に疑われる病気です。胃腸に腫瘍ができると、大きく膨張した後に破裂することから、出血がみられやすいのが特徴です。

胃腸に腫瘍が発生した場合、以下のような症状がみられます。

胃腸に腫瘍ができた場合にみられる主な症状
  • 血便
  • 下痢
  • 嘔吐
  • 食欲の低下
  • 体重の減少
  • 元気の消失

出血量が多い場合は、貧血を引き起こすこともあり、体力の消耗から命にかかわる危険性もあります。

胃腸の腫瘍はしっかりとした検査をしなければ存在が発見されにくいため、疑われる場合は、検査設備が豊富な動物病院を受診することをおすすめします。

悪性の場合には命にかかわる危険性も

猫の腫瘍の約80%が悪性であるといわれ、猫の胃腸の腫瘍ではリンパ肉腫と呼ばれる悪性腫瘍の発症率が高いといわれています。

主な症状は食欲の低下や発熱、貧血などですが、処置が遅れると腸閉塞などを起こし、命にかかわりかねません。

そのため、悪性の場合は早期発見・早期治療が重要です。
嘔吐の頻度が高い、急激に痩せてきているなどの様子がみられる場合は、速やかに動物病院を受診してください。

参照元:一般社団法人・日本臨床獣医学フォーラム|猫の腫瘍

フードの変更や普段と異なるおやつを原因としたアレルギー

食物アレルギーも、血便が出る原因の1つです。
猫と一緒に生活している中で、フードを変更したり、普段と異なるおやつを与えたりした際に突然アレルギー反応が出てしまうことも少なくありません。

アレルギーを発症した場合、以下のような症状がみられます。

食物アレルギーによってみられる主な症状
  • 皮膚の痒み
  • 血便
  • 下痢
  • 脱毛

食物アレルギーの典型的な症状は皮膚の激しい痒みですが、猫によっては血便や下痢、脱毛などの症状を生じることもあります。

食物アレルギーと獣医師に診断された場合は、獣医師の指示の下、食生活の改善を図りましょう。

異物誤飲

異物を飲み込んだ場合も、血便が出ることがあります。
猫が誤って尖ったものや消化できないものを飲み込んでしまい、腸内の粘膜を傷つけた際に出血を起こすのです。

異物を誤飲した場合にみられる主な症状
  • 嘔吐
  • 食欲の低下
  • 元気の消失
  • 血便

また、チョコレートやネギ類など、猫にとって毒性のものを食べたことによる中毒症状から血便を起こすことがあります。

飲み込んだものや食べた量によっては緊急度が高いため、誤飲や中毒症状の疑いがある場合は、速やかに動物病院へ連れていきましょう。

炎症性腸疾患(IBD)

血便がみられるケースとして、炎症性腸疾患(IBD)を発症している可能性も考えられます。

炎症性腸疾患とは慢性的に腸に炎症が起こる病気で、猫種を問わず発症する恐れがあるといわれています。

炎症性腸疾患の主な症状としては、以下のようなものがあります。

炎症性腸疾患にみられる主な症状
  • 血便
  • 下痢
  • 嘔吐
  • 食欲の低下
  • 元気の消失
  • 体重の減少
  • 腹水(重度の場合)

炎症性腸疾患の原因は未だ分かっていませんが、食事への異常な反応や過剰な自己免疫など、さまざまな要因が組み合わさって発症しているとされています。

また、病状がかなり進むまで異常値が出にくいという点も、炎症性腸疾患の特徴です。しかし、状態が悪化した場合は命の危険が生じるため、根気よく獣医師に相談して、正確な診断を受けることをおすすめします。

参照元:あさくさばし動物病院|IBD(炎症性腸疾患)

猫に血便がみられた時にはなるべく早めの受診がおすすめ

撫でられる猫
猫に血便がみられた場合、まずは猫の様子と便の状態をよく観察してください。
軽い症状なら自然に治ることもありますが、異変を感じる場合は早めに動物病院に連れていきましょう。

特に子猫や高齢猫は、免疫力の低さから急激に状態が悪化しかねないため、注意が必要です。

1回だけでごく少量の鮮血の付着程度であれば様子をみても良い

ごく少量の鮮血の付着程度で、普段どおり食欲も元気もある場合は、少し様子をみても良いでしょう。

例えば、特定の食べ物で出血する場合はフードを切り替えたり、便に血が混じる場合はフード量を減らしたりして、胃腸への負担を軽減させるのもおすすめです。

念の為、少量の鮮血が付着してからの数日間は、猫の様子に変わりはないかこまめにチェックしておきましょう。

早急に受診をしたほうが良い症状

一方、以下のような症状がみられる場合は、注意が必要です。

  • 肛門から大量の出血がみられる
  • トマトジュースのような水様便がある
  • 血便の他に元気・食欲低下がみられる

また、血便の他に、事故や中毒の可能性があったり、別の部分でも出血がみられたりする場合も、緊急性が高いと考えられます。

治療が遅れると症状が長引いたり、別の病気を誘発したりする恐れがあるため、早急に動物病院を受診してください。

参照元:一般社団法人・日本臨床獣医学フォーラム|便に血が混じる

猫の血便にかかわる病気で発生する診療費事例

血便にかかわる病気にかかる費用は、検査や症状の程度によって異なります。
例えば、猫パルボウイルス感染症の疑いで受診する場合、一般的には以下のような診療費が想定されます。

猫パルボウイルス感染症の疑いで受診する場合

  • 初診料……約1,000円
  • 血液検査……約4,000円
  • 便検査……約500円
  • パルボウイルス検査……約2,000円
  • 皮下点滴……約1,000円

合計金額:約8,500円(薬代など除く)

参照元:日本獣医師会|家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査
※上記の診療費等はあくまで一例であり、一般的な平均・水準を示すものではありません
※各診療項目の金額は、動物病院によって異なります

症状が重く、入院が必要となった場合は診療費が高額化するでしょう。猫パルボウイルスは感染力が強いために隔離病室となることが多く、入院費が高めに設定されることもあります。

次に、腸の腫瘍を摘出する場合は以下のような費用が想定されます。

腸の腫瘍を摘出する場合

  • 消化器(腸)腫瘍摘出……25万円(入院日数6泊7日)

参照元:ガレン動物病院|手術料金
※上記の診療費等はあくまで一例であり、一般的な平均・水準を示すものではありません
※各診療項目の金額は、動物病院によって異なります

腸の腫瘍の治療は、基本的には外科的切除が行われます。
なお、リンパ肉腫の場合は切除ができないため、抗がん剤での治療が一般的となり、診療費が高額になる傾向があります。

猫の血便の診療費にはペット保険が適用できるケースも

遠くを見つめる猫
猫の血便の原因となる病気は、症状の程度や治療方法によっては高額な診療費がかかる傾向があります。

最後に、不安を感じやすい猫の診療費への備えとして活用できるペット保険について解説します。

入院や手術などで高額な費用がかかる可能性がある

ペット保険に加入することで、入院や手術などの高額な費用への備えをすることができます。

血便を伴う病気の中には、治療が長期化するものや高度な外科手術が必要となるものもあります。治療内容によっては、数十万円もの高額な費用がかかってしまうケースも少なくありません。

ペット保険に加入していれば診療費の一部を負担してくれるため、経済的負担が軽くなります。金銭面での不安がなくなれば、飼い主が納得する治療を愛猫に受けさせてあげられるでしょう。

早急に通院できれば病気の早期発見や早期治療にもつながる

ペット保険の加入には、診療費を気にせず受診できるようになるといったメリットも挙げられます。

ペットの診療費は全額自己負担となるため、ちょっとした異変では受診を躊躇してしまう、という飼い主も多いでしょう。
しかし、愛猫の体調が悪化した場合、動物病院で診療をしてもらわないとどのような治療が必要なのか飼い主では判断ができません。

ペット保険に加入していれば診療費の一部を負担してくれるため、手元の備えだけを気にすることなく獣医師に相談できます。
こまめな受診は病気の早期発見・早期治療にも繋がるため、愛猫と長く一緒にいるためにもとても重要です。

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監修担当の獣医師より

小島 麻里 先生

血便はさまざまな病気のサインですが、猫ちゃんはキレイ好きな動物ですので、排便後にトイレの砂で便を隠すことが多く、少量の鮮血便だとなかなか気づけないことがあります。

やっかいなのが寄生虫感染によるもので、多頭飼いの場合は気づかないうちに他の猫ちゃんにうつしてしまったり、寄生虫の種類によっては、人間にも感染する「人獣共通感染症」というものがあったりと注意が必要です。

そのような少しの変化に気づけるよう、健康診断をかねて定期的に病院を受診するのもいいですね。

まとめ

寝ている猫
猫の血便の原因はさまざまですが、どれもが明らかな体の異常をあらわすサインです。

場合によっては腫瘍など重大な病気が潜んでいる場合があるため、症状がみられる場合は速やかに獣医師に相談してください。
日頃から愛猫の便の様子や色などに注意しておくと、異常が発見しやすいでしょう。

また、血便にかかわる病気には高額な診療費がかかる可能性があるため、経済的不安を抑える方法の1つとしてペット保険を活用することをおすすめします。

ABOUT ME
記事監修|小島 麻里 先生
酪農学園大学獣医学部獣医学科を卒業後、10年間小動物臨床に従事。 地域密着型の1次病院で経験を積み、東京大学動物医療センターで内科系研修医と並行して臨床研究を行う。 潜水士およびペット管理栄養士取得。7歳になる保護猫2匹(おもち・だんご)と暮らす。 めい動物病院
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トリセツ編集部(アニマライフ)
トリセツ編集部(アニマライフ)についてはこちら>>

ペット保険のスペシャリストである少額短期保険募集人資格保有者が記事の執筆・監修をしています。ペット保険の情報をわかりやすくお伝えすべく、日々最先端のペット保険情報をチェックしています。犬や猫の「もしものとき」に備えるためのペット保険選びを正しい情報でサポートします。
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