症例編

【獣医師監修】鼠径ヘルニア・臍ヘルニア・椎間板ヘルニアはペット保険で補償される?

本記事では、鼠径(そけい)へルニア・臍(さい)へルニア・椎間板ヘルニアを補償対象外と定めているペット保険をご紹介します。
診療費や補償事例、かかりやすい犬種などもあわせて解説しているので、ペット保険への加入を検討している方はぜひご一読ください。

ヘルニアはどんな病気?

ヘルニア ペット保険
ヘルニアとは、臓器や脂肪などが本来あるべき位置から飛び出てしまっている状態をいいます。同じ「ヘルニア」とはいっても部位によって名称が異なり、症状や原因もさまざまです。

鼠径ヘルニアの症状と原因

鼠径(そけい)ヘルニアは、足の付け根(鼠径部)にある隙間からお腹の中の臓器(腸・子宮・膀胱など)が飛び出た状態をいいます。

先天的に起こる場合や、事故などの外傷や腹圧の上昇などによって後天的に起こる場合があります。後天的に起こる場合であっても、生まれつき鼠径部に異常があることが原因となっていると考えられています。

ヘルニアがある部位から臓器が出てしまうと命にかかわるような症状が起こる場合があります。腸が飛び出ると腸閉塞、膀胱が飛び出ると排尿障害などの症状がみられ、最悪の場合は消化管の壊死や急性腎不全などが起こり緊急処置が必要になることがあります。

臍ヘルニアの症状と原因

臍(さい)へルニアは、おへそにできるヘルニアで、いわゆる「でべそ」です。主に先天的な原因により起こります。

臍へルニアは痛みを伴わないこともあり、ヘルニア部位がごく小さい場合はそのままにしていても1歳くらいまでに自然に治ることもありますが、多くの場合手術が必要です。

押してもお腹のなかに戻ることができない状態になってしまうと臓器の血行が悪くなり、飛び出た部分が壊死を起こしてしまい痛みや全身状態の悪化が起こることがあります。臍ヘルニアは様子を見ることも可能ですが、できるだけ早めに整復手術を行う方がよいでしょう。

椎間板ヘルニアの症状と原因

椎間板は脊椎(背骨を構成するそれぞれの骨)の間に存在し、骨と骨とのクッションのような役割を担っています。この椎間板の内容物が飛び出て脊髄を圧迫してしまう状態を椎間板ヘルニアといいます。

原因は激しい運動や加齢などによる後天的なものと、遺伝的なものが考えられます。抱き上げると痛がる、四肢が麻痺する、排尿障害を起こすなどの症状がみられることもあります。

ヘルニアになりやすい犬種は?

ヘルニア ペット保険

鼠径ヘルニアになりやすい犬種

バセンジー、ペキニーズ、プードル、チワワ、ダックスフンドなどが好発犬種といわれています。

先天性の鼠径ヘルニアは去勢手術をしていないオスで、後天性の鼠径へルニアは避妊手術をしていない中年齢のメスでみられることが多い傾向にあります。

臍ヘルニアになりやすい犬種

ワイマラナー、シーズー、キャバリア、ペキニーズ、ポインター、エアデールテリア、アメリカンコッカースパニエル、バセンジー、秋田犬などが先天性の臍ヘルニアを引き起こす可能性が高い遺伝子を持っているとされています。

椎間板ヘルニアになりやすい犬種

「軟骨異栄養症」の遺伝子を持っている犬は、椎間板ヘルニアになりやすいといわれています。

ダックスフンドやコーギーなどの胴長短足な体型の犬種はこの遺伝子素因を持ちあわせているため、椎間板ヘルニアには注意が必要です。

ヘルニアの治療方法と診療費は?

ヘルニア ペット保険

鼠径ヘルニアの治療方法と診療費例

ヘルニアが小さい場合には経過観察をすることが多いようです。

経過が悪化したり、臓器がヘルニア内に入り込むなど重症化している場合には手術が勧められます。

手術の費用は動物病院によって異なりますが、平成27年度の家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査によると、鼠径ヘルニアの診療費の中央値(麻酔料は含めず、犬10kgの場合)は2万8,563円となっています。

臍ヘルニアの治療方法と診療費例

痛みがなく、ヘルニアが小さい場合は生後半年~1年ほどの間に自然治癒することがあります。自然治癒しなかった場合は経過を観察し、必要に応じて手術を行います。

手術の費用は動物病院によって異なりますが、平成27年度の家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査によると、臍ヘルニアの診療費の中央値(麻酔料は含めず、犬10kgの場合)は1万9,460円となっています。

避妊手術や去勢手術と同時に行う場合には麻酔代などを軽減できるので割安になることもあるようです。

椎間板ヘルニアの治療方法と診療費例

内科的治療と外科的治療があり、症状の強さに応じて治療法が選択されます。
痛みのみや軽度の麻痺の場合には、内服薬を処方し安静にするという治療が主になります。

重度の麻痺がある場合には手術が必要になるケースが多くなります。症状に応じた術式で手術を行い、手術後にはリハビリが必要になることもあります。

au損保によると、椎間板ヘルニアで、7泊8日の入院・手術と5日間の通院をした場合に25万円ほど診療費がかかったケースがあるようです。

ヘルニアはペット保険で補償される?

ヘルニア ペット保険
犬や猫の診療費の一部を補償してくれるペット保険ですが、すべての病気やケガの診療費が対象ではありません。
ペット保険には商品ごとに補償対象外項目が定められています。

ここでは、それぞれのヘルニアがペット保険で補償されるかどうかを確認していきましょう。

鼠径ヘルニアはペット保険で補償される?

鼠径へルニアが補償されるかどうかは、各保険会社で対応がわかれています。
当サイトで掲載しているペット保険のなかで鼠径ヘルニアを補償対象外としている保険会社は以下のとおりです。

  • アニコム損保
  • アイペット損保
  • ペット&ファミリー損保
  • SBIプリズム少短
  • SBIいきいき少短

なお、アイペット損保では他の傷病の治療の手段として鼠径ヘルニアの処置または鼠径ヘルニアに対しての処置を行った場合、補償対象としています。

また、ペット&ファミリー損保では鼠径ヘルニアが病化(腹膜炎や壊死等)しており、その治療として実施した場合は、動物病院の診断内容と一般獣医学情報等により総合的に保険金支払可否を判断するようです。

臍ヘルニアはペット保険で補償される?

臍ヘルニアは各保険会社で補償対象外として定められています。
しかし、ペット&ファミリー損保では鼠径ヘルニアと同様に臍へルニアの診療費は、病化(腹膜炎や壊死等)しており、その治療として実施した場合は、動物病院の診断内容と一般獣医学情報等により総合的に保険金支払可否を判断するようです。

椎間板ヘルニアはペット保険で補償される?

椎間板へルニアが補償されるかどうかは、各保険会社で対応がわかれています。
当サイトで掲載しているペット保険のなかで椎間板ヘルニアを補償対象外としている保険会社は以下のとおりです。

  • SBIいきいき少短

椎間板ヘルニアを補償対象外項目に定めているペット保険はそれほど多くありません。

椎間板ヘルニアになりやすい犬種を飼っているなど、椎間板ヘルニアも補償するペット保険に入りたい方は、重要事項説明書等で補償対象外項目に椎間板ヘルニアがないかきちんと確認するようにしましょう。

※補償対象外となるすべての病気・ケガを記したものではありません。詳細は、重要事項説明書および約款でご確認ください。
※実際の保険金の支払いについては、「補償開始前からの症状か」などを含め保険会社が審査・査定を行ったうえでの判断となります。また、前提条件の相違等により補償内容が異なる場合があるので、実際に適用される補償内容について保険会社に問い合わせたうえで商品選択を行ってください。
※ここには保険商品の内容すべてを記載しているものではありませんので、あくまで参考情報としてご使用ください。
※ここに記載されている保険商品の詳細な内容については、重要事項説明書および約款にて必ず全般的にご確認ください。

各社の重要事項説明書等

・アニコム損保/重要事項説明書
・アイペット損保/重要事項説明書
・FPC/重要事項説明書
・PS保険/重要事項説明書
・楽天ペット保険/重要事項説明書
・ペット&ファミリー損保/重要事項説明書
・SBIプリズム少短/重要事項説明書
・SBIいきいき少短/ご契約に際しての大切な事柄(契約概要、注意喚起情報 等)
・イーペット少短/重要事項説明書

ヘルニアの保険金支払事例

ヘルニア ペット保険
ペット保険に加入していた場合、どのくらい保険金が支払われたのか保険金支払事例を確認してみましょう。

<手術費用>3歳のミニチュア・ダックスフンドが椎間板ヘルニアと診断され、手術・入院を行った例(手術1回・入院6日)

診療項目 金額
診察 1,500円
入院(5泊6日) 20,400円
検査 39,700円
MRI 89,000円
全身麻酔 15,000円
手術 127,300円
点滴 12,200円
処置 7,100円
注射 23,000円
お薬 2,450円
合計 337,650円
ペット保険の補償額
(うちの子70%プランの場合)
236,355円
飼い主の自己負担額 101,295円

※上記の診療内容・診療費等は参考であり、実際のお支払い例や一般的な平均・水準を示すものではありません。
※診療費は動物病院によって異なります。
※保険金は、支払限度額・支払限度日数(回数)等の補償範囲内でお支払いします。
参照元:アイペット損保|犬の手術・通院費用はどのらいかかる?

<手術費用>8歳のミニチュア・ダックスフンドが椎間板ヘルニアと診断され、手術・入院を行った例

診療項目 金額
基本診察資料 5,000円
入院料(13泊14日) 126,000円
検査料 40,060円
画像診断料 126,000円
薬治療 9,800円
注射料 25,100円
処置料 35,100円
麻酔料 49,500円
手術料 154,700円
消費税 45,701円
合計 616,961円
ペット保険の補償額
(プラン70の場合)
431,873円
飼い主の自己負担額 185,088円

参照元:アクサダイレクト|犬の保険金請求事例

椎間板ヘルニアの治療では手術と入院が必要な場合も多く、診療費が高額になることは珍しくありません
ペット保険に加入していると、かかった診療費の一部が補償されるため、万が一の場合でも安心して治療を受けさせてあげることができます。
もしもに備えるための選択肢のひとつとして、ペット保険の加入を検討してみてもよいかもしれません。

ヘルニアの予防法は?

ヘルニア ペット保険

鼠径ヘルニアの予防法

犬の鼠径ヘルニアは、予防が難しい病気といわれています。そのため、早期発見が大切になります。

日々のスキンシップで足の付け根付近にしこりや膨らみがないかを触って確認し、疑わしいふくらみがあればなるべく早く動物病院で受診しましょう。

臍ヘルニアの予防法

臍へルニアを予防する方法は残念ながらありません。

日ごろから身体の様子をチェックし、気になることがあれば早めに動物病院に相談するようにしましょう。

椎間板ヘルニアの予防法

背骨に負担がかからないようにすることが大切です。

フローリングなどの滑りやすい床にはカーペットを敷く、高いところに登れないようにするなど日常生活での注意が必要です。

肥満も椎間板ヘルニアの発症率を高くする要因となるので、体重管理を心がけましょう。

まとめ

ヘルニア ペット保険
鼠径ヘルニアや椎間板ヘルニアはペット保険によって補償対象となるかどうかがわかれる病気です。加入後に後悔しないためにも、重要事項説明書や約款等で補償対象外項目をきちんと確認しておきましょう。

ヘルニア以外の補償対象外項目は?

ペット保険ではヘルニア以外にも補償対象外の病気があります。
診療費が高額になりやすい歯周病や去勢・避妊手術等に関して保険が適用されるか知りたい方は、下記の記事もチェックしてみてください。

補償対象外 ペット保険
ペット保険が補償対象外としている犬の病気やケガ|保険の上手な選び方とあわせて解説診療費の一部を補償してくれるペット保険ですが、すべての診療費に保険が適用されるわけではありません。この記事では、犬がかかりやすい病気ごとにペット保険適用の可否について解説します。...

【募集文書番号】アイペット損害保険株式会社:募2402-382(26.03)/アニコム損害保険株式会社:W2303-0023/SBIプリズム少額短期保険株式会社:JACAP202300043/ペット&ファミリー損害保険株式会社:23D095-230810

ABOUT ME
記事監修|平松 育子 先生
山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。皮ふ科と内科、予防医療に注力する。 日本獣医がん学会、日本獣医皮膚科学会所属。 2023年にふくふく動物病院を閉業し「アイビー・ペットライティング」を立ち上げ。 ライターというかたちで、生涯飼い主さまやペットたちとつながっていきたいと思います。 (アイビー・ペットライティング 代表)
ABOUT ME
トリセツ編集部(アニマライフ)
トリセツ編集部(アニマライフ)についてはこちら>> ペット保険のスペシャリストである少額短期保険募集人資格保有者が記事の執筆・監修をしています。ペット保険の情報をわかりやすくお伝えすべく、日々最先端のペット保険情報をチェックしています。犬や猫の「もしものとき」に備えるためのペット保険選びを正しい情報でサポートします。

FPC|フリーペットほけん

フリーペット保険

FPCの魅力はお手頃でシンプルな保険料設計です。
保険料の値上がりのタイミングは小型犬・猫では5歳と12歳の2回のみ、中型犬・大型犬では5歳と9歳と12歳の3回のみとシンプルでお手頃な保険料設計となっています。

  • 保険料は、今後の商品改定等により変更となる場合があります
  • 詳細は重要事項説明書等でご確認ください
詳しく見る
人気1位のペット保険を見てみる
×