完熟しているトマトであれば、犬に与えても大丈夫です。しかし、完熟していないトマトやヘタなどには犬にとって有害な物質が含まれているため、与える際には注意が必要です。
本記事では、完熟していないトマトが危険な理由やトマトに含まれる栄養素、食べて体調不良を起こした際の対処方法などを解説します。
犬はトマトを食べて大丈夫?完熟しているならOK
犬にトマトは基本的に食べさせても大丈夫です。ただし、食べられるトマトは完熟したもののみです。完熟していない緑色のトマトには、犬にとって有害な物質が含まれる上に、消化もあまりよくないため、完熟したトマトであってもあえて積極的に与える必要はないでしょう。
また、消化器官が未発達の子犬や機能が低下している老犬などに食べさせる場合、消化しにくい皮と種子は取り除いてあげた方が良いです。
ヘタや葉、茎には有害物質が含まれるため要注意!
熟していない緑色のトマトやヘタ、葉、茎、花には、「トマチン」という犬にとって有害な物質が含まれているため、犬に食べさせないように注意しましょう。
犬がトマチンを摂取してしまうと、中毒症状が起こる可能性があり、下痢や嘔吐を招いたり、赤血球が破壊されてしまったりする可能性があります。
重篤な場合、命に関わることもあるため、決して口にすることがないように注意することが大切です。万が一、食べてしまった場合は、動物病院に連れていきましょう。
トイプードルの涙やけがトマトで治るという噂に信憑性はない
「トマトを食べることで犬の涙やけが治る」という噂を聞いたことがある方もいるかもしれませんが、これに信憑性はありません。
トイプードルなどによくみられる涙やけは、遺伝などの先天的な個体差や食事、飼育環境などさまざまな要因によって起こるもので、ただトマトを食べさせただけで治るということは期待できないでしょう。
愛犬の涙やけが気になる場合は、獣医に相談をして適切に治療をしていくことが大切です。
犬にトマトを与えるメリット|トマトに含まれる栄養素
トマトにはさまざまな栄養素が含まれており、犬に食べさせるメリットもあります。また、トマトは90%以上が水分のため、水分補給にも役立ちます。夏場など犬の水分不足が気になる際は、トマトから水分を補給するのもひとつの方法です。
トマトに含まれる栄養素にはどのようなメリットがあるのかを解説します。
リコピン
トマトにはリコピンという栄養が含まれています。トマトの赤い色は、リコピンによるものです。ビタミンEの100倍以上ともいわれている強い抗酸化作用があり、健康維持やアンチエイジングの効果を期待できます。
また、慢性疾患や、前立腺がんなどいくつかの悪性腫瘍のリスクの減少効果も期待できるでしょう。
スイカやマンゴーからも摂取できる
リコピンといえばトマトをイメージする方も多いかと思いますが、トマト以外にスイカやマンゴーなどにも含まれています。
あまりリコピンのイメージはないスイカですが、リコピンの含有量はトマトの約1.4倍以上ともいわれています。そのため、犬にリコピンを摂取させたいが、トマトを与えるのに不安がある方は、スイカなどを与えてみるのもひとつの方法です。


β-カロテン
トマトにはβ-カロテンも含まれています。犬の体内でビタミンAに変換され、視力の維持などに効果があります。β-カロテンに期待できる効果は以下の通りです。
- 抗酸化作用
- 免疫力の向上
- 老化防止
- 視力の維持
- 皮膚や粘膜の維持
β-カロテンはトマト以外にも、にんじんやほうれん草などにも含まれています。

肝臓に持病のある犬には与えすぎないように注意
一方で、過剰摂取には注意が必要です。犬がβ-カロテンを過剰に摂取すると、肝臓や皮膚のトラブル、嘔吐、下痢などがみられるビタミンA中毒を起こすリスクがあります。
特に肝臓に負担がかかり、肝臓病に繋がる恐れがあるため、すでに肝臓に持病がある犬に与えない方が良いでしょう。
カリウム
トマトにはカリウムも含まれています。カリウムには体内の余分なナトリウムを排出する働きがあります。その他にも以下のような効果が期待できます。
- 心臓の働きを正常に保つ
- 血圧を下げる
- 筋肉の収縮を正常に保つ
長期間の下痢や嘔吐、食欲不振などによって、カリウムが欠乏すると低カリウム血症を起こすことがあり、手足の脱力や筋肉痛、動悸、高血圧、多尿などを招きます。
通常、ドッグフードを食べていれば、不足を意識する必要はありませんが、不足が気になる場合には、みかんやメロンなどからも摂取することができます。さまざまな食べ物に含まれているため、愛犬が気に入る食べ物を選んで与えれば、食いつきも良いでしょう。


腎臓機能が低下している犬には与えすぎないようにする
腎臓機能が低下している犬の場合、カリウムを過剰に摂取すると高カリウム血症を起こす可能性があるため注意が必要です。高カリウム血症は手足の痺れや筋力低下、吐き気、脈拍異常などを起こし、重篤な場合では命に関わることもあります。
腎臓機能に不安がある犬にトマトを食べさせる際は、獣医に確認してから与えるようにしましょう。
犬にトマトを与えるときの注意点
犬にトマトを食べさせる際は、与える量や与え方などの注意点があります。ここからはトマトを食べさせる際の注意点を解説します。
1日に食べて良い量の目安
1日におやつなど、メインの食事以外で与えて良い量は1日の消費カロリーの10%以内が目安とされていますが、トマトは下痢をしやすい食べ物のため、10%より少量の方が良いでしょう。
犬の大きさ別の与えて良い量の目安は以下となります。
- 小型犬・・・半分〜1個
- 中型犬・・・1〜2個
- 大型犬・・・2.5〜4個
消化機能の個体差もあるため、便の状態を見て与える量を調節することも大切です。まずは目安量より少ない量を与えて体調不良などを起こさないかを確認しましょう。
また、メインの食事であるドッグフードを十分に食べられる量に留めることも大切です。
食べやすい大きさにカットして与える
トマトを食べさせる際は、犬が食べやすい大きさにカットしてから与えることも大切です。特にミニトマトの場合、つるつるとしていて小さいことから、そのまま飲み込んでしまい喉に詰まらせてしまう可能性があるため、食べやすいように切ってから与えましょう。
また、トマトは水分を多く含み、下痢をしやすいため、できればカットするだけでなく、加熱をして与えるとより消化にも良いといえます。
あまり咀嚼せずに飲み込む癖のある犬などに与える際は、ミキサーでペースト状にしたものを食べさせるのもおすすめの方法です。
初めて与えるときには体調の異変やアレルギーの発症に注意する
トマトを愛犬に初めて食べさせる際は、体調の異変やアレルギーにも注意が必要です。初めて与える際は、まずは少量を食べさせて体調不良などを起こさないかを確認してから与えましょう。
犬が食べ物に対してアレルギーを起こすと以下のような症状がみられます。
- 下痢
- 嘔吐
- 口周りを痒がる
- 手足を痒がる、噛む
- 震える など
病気で通院している犬は与える前に獣医に確認する
何らかの病気などで通院や服薬をしている犬にトマトを与える場合、事前に獣医に食べさせても問題がないか確認をするようにしましょう。トマトに含まれる成分が治療や薬に思わぬ影響を与える可能性があるためです。
トマトに限らず、通院や服薬している犬に普段とは違うものを食べさせる際は、獣医に確認してから与えると安心できます。
トマトを加工した食品は与えないように注意する
トマトはケチャップをはじめ、さまざまな食品に加工されます。そうしたトマトを加工したものは犬に与えないようにしましょう。
トマトケチャップ
ケチャップには、犬が中毒症状を起こす可能性のある玉ねぎが使用されていることが多いため、与えないようにしましょう。
また、ケチャップには糖類や食塩が加えられていることも多く、犬にとっては糖分や塩分が多い食べ物になっています。糖分や塩分を過剰に摂取してしまうと、肥満や高血圧などを招いてしまうことも考えられます。
トマトジュースやトマト缶
トマトジュースやトマト缶は、塩分などが加えられていないトマトのみで作られているものであれば与えることができます。
ただし、人間が美味しいと感じられるように、添加物が入っているものは与えないようにしましょう。トマトジュースやトマト缶に含まれる添加物が、思わぬ悪影響を与えてしまうリスクがあるためです。
トマトスープ
トマトをベースに作られるトマトスープも、犬に与えないようにしましょう。トマトスープには、中毒症状を起こす可能性のある玉ねぎやニンニクが使用されることが多いためです。
また、市販のトマトスープには添加物が含まれているため、トマトジュースなどと同様に思わぬ悪影響を与える可能性があるため、食べさせないようにしましょう。

トマトを食べさせて体調不良やアレルギー症状がみられたときの対処方法
犬にトマトを与えた際に、下痢をしてしまうことがあるかもしれません。水分量が多いトマトによって下痢をしてる可能性もありますが、先述したような口まわりを痒がる、手足を噛むといった行動がみられた際は、アレルギーを起こしているかもしれません。
犬にトマトを食べさせて、体調不良を起こした際の対処方法を紹介します。
速やかにかかりつけの動物病院で検査を行う
犬にトマトを与えて、体調不良がみられた際は、速やかに動物病院に連れていきましょう。「もう少し様子をみよう。」と思っている間に、人間よりも身体の小さい犬の場合、予想よりも症状が悪くなってしまう可能性があります。
動物病院に連れて行った際は、何をいつ、どのくらい食べたのかを聞かれるため、正確に伝えられるようにメモなどしておきましょう。また、どういった症状がいつ頃からみられたのかを聞かれるため、症状に関しても正確に伝えましょう。
緊急時には救急対応している動物病院へ
夜間や休日などかかりつけの動物病院があいていない時間に、体調不良を起こした場合は救急対応している動物病院に連れていきましょう。
その際にも、何をどのくらい食べたのか、食べた時間帯、みられた症状などが聞かれるため、正確に伝えられるようにすることが大切です。
また、緊急時には飼い主も焦ってしまうため、救急対応している動物病院の住所や電話番号を日頃から控えておくようにしましょう。
急な体調不良に備えてペット保険の加入もおすすめ
トマトを食べて体調を崩す以外にも、ケガや病気をいつするかはわかりません。動物病院でさまざまな検査や治療をすれば、治療費が高額になってしまうこともあるでしょう。
ペットの治療費は、人間のような健康保険制度がないため、全額自己負担になってしまいます。
しかし、ペット保険に加入しておけば、治療費の一部または全部が補償されます。いざというときの備えとして一度ペット保険への加入を検討してみることをおすすめします。
異変を感じたときにすぐ受診できる
愛犬が体調を悪そうにしている際に、治療費が気になり動物病院に連れて行くことを躊躇してしまうかもしれません。
しかし、ペット保険に加入しておくことで、治療費の一部または全部が補償されるため、連れて行こう、という気になる可能性が高まるでしょう。
このように受診のハードルが下がることで、動物病院に連れていきやすくなり、早期発見、治療開始が期待できる点はペット保険のメリットといえます。
緊急時の問い合わせに対応してもらえるペット保険も
ペット保険の中には、体調が悪そうなときなどに獣医に相談できる付帯サービスを提供しているものもあります。体調が悪そうだが、すぐに動物病院に連れて行くべきなのか、もう少し様子をみるべきなのかといった相談ができます。
また、しつけなど愛犬との暮らしの中での困りごとや悩み事を相談できるものもあります。
犬と生活する上で、獣医といった専門家に相談できることはとても心強いものです。
下記記事では、貯蓄で備えるよりもペット保険に加入した方が良いケースを獣医が解説しています。ペット保険を検討する際は参考にしてください。

獣医師からみた犬とトマトの関係
トマトは抗酸化作用のある成分も含まれており、普段のメニューにも多く含まれる野菜でもあるため、口にしたことがある犬も多いのではないでしょうか。
水分などで下痢を起こしやすい野菜でもあるため、加熱調理や細かくするなどの工夫が必要です。
また、持病によっては注意すべき成分も含まれるため、与える量や犬によっては、与えていいかどうかの判断も慎重に行う必要があります。
茎や葉、そして青い完熟していないものなどは中毒を起こす可能性があり、お散歩コースや飼い主の庭で摂食してしまう可能性もあるでしょう。中毒を起こす量は個体差もあるため、口にしてしまった可能性があったらすぐに受診をしましょう。
誤食してしまったときはパニックになりがちですが、保険の加入をしておくことや、加入をしたら受診グッズとして、かかりつけの病院の診察券や、普段服用しているお薬のメモなどと一緒に、保険証や保険会社の資料もまとめておくと安心です。
まとめ
犬にトマトは基本的に食べさせて大丈夫です。しかし、完熟していないトマトやヘタ、葉、茎、花は有害な物質が含まれているため、犬が口にしないように注意が必要です。
また、愛犬がいつケガや病気をするかはわからないため、いざというときの備えとしてペット保険への加入を一度検討してみることをおすすめします。
