入門編

【獣医師監修】犬は生肉を食べられる!健康を損ねないための与え方と栄養素がもたらすメリットを解説

生肉は犬が食べていい食材のひとつですが、与える肉の種類や鮮度には注意が必要です。
この記事では、生肉を食べるメリットや適切な与え方について解説します。

また、生肉をきっかけに発症する恐れのある病気や、体調不良時の対処法も紹介します。
犬に生肉を与えることについては賛否が分かれているため、正しい情報を身につけましょう。

犬に生肉を食べさせることについては賛否が分かれている

ご飯を待つ犬

犬が生肉を食べられるかどうかについては、賛否両論があります。
ここでは、犬に生肉を与えることについて意見が分かれる理由について解説します。

豊富な栄養素を効率良く摂取させることができるのがメリット

生肉には、豊富な栄養素が含まれていますが、加熱によって失われてしまうものも少なくありません。

生肉食はビタミン・ミネラルを効率良く補える

生肉には、犬に必要なビタミンやミネラルなどの栄養素が多く含まれています。
肉食動物である犬は、生肉を消化吸収する能力に優れています

生肉を与えると、これらの栄養素を、ドッグフードを与えるよりも効率よく補えます。

生肉食はドッグフードでは補えない酵素を摂取できる

生肉にはドッグフードでは摂取できない、犬の消化を助ける酵素が含まれています。
酵素は加熱処理によって失われてしまう栄養素であるため、生肉だからこそ摂取できる栄養素のひとつです。

酵素を摂取した犬は消化吸収能力が高まるため、消化能力が弱い犬や、下痢を起こしやすい犬におすすめです。

生肉食は水分補給ができるがとり過ぎは結石の原因になるため注意

生肉は水分も豊富な食材です。ドッグフードと一緒に与えると水分を補給でき、水分不足の解消の助けになります。
一方で、動物性脂肪を含むものを食べ過ぎると腸内でシュウ酸が増え、結石ができやすくなります

与え過ぎには注意しましょう。

懸念点として栄養バランスの偏りや高い保存コストが挙げられる

生肉だけの食事は、食物繊維や炭水化物など、生肉に含まれていない栄養素を摂取することはできないため、栄養バランスが偏ってしまう懸念もあります。

本来、野生の犬はとらえた獲物の肉や内臓を食べていました。内臓にはビタミンや脂肪酸、草食動物の消化酵素が含まれているため、生存に必要な栄養をきっちり摂取することができていたのですが、現代において生の内蔵を与えるのは、健康を損ねるリスクも高く、費用も決して安くはないため効率的だとはいえないでしょう。

また、犬に与える生肉は鮮度が大切になるため、保存にもコストがかかります

栄養のバランスに気を付けるためにも、ドッグフードをメインにしながら少量の生肉を与える方法がおすすめです。日々の食事に生肉をトッピングしたり、置き換え食を試したりして、生肉を取り入れると良いでしょう。

また、生肉には生食用と加熱用がありますが、必ず生食用を選ぶようにしてください。
人間と同様に、犬も加熱用の生肉を食べることはおすすめできません。

犬に生肉を与えるときの注意点

2匹の犬

犬に生肉を与える時には、注意すべきこともあります。
ここでは、犬に生肉を与える時に特に抑えておきたいポイントを2つ紹介します。

与える量は体重の1%にとどめる

ドッグフードと同時に生肉を与える場合、肥満を防止するためにも、体重の1%にとどめましょう。

特に初めて生肉を与える場合、食べ慣れていないために消化器の不調が起こりやすいです。まずは少量ずつ与え始めて、徐々に生肉に慣らしていくようにしてください。

必ず犬用に販売されている生肉を与える

犬に与える生肉は、必ず犬専用のものにしてください。スーパーで人間用に販売されている生肉は加熱用で、生食は想定されていません
食中毒を起こしたり、体調を崩したりする可能性が高くなるため、犬に与えるのは避けましょう。

近年は多くの業者から、犬用に生食用の処理がされた生肉が販売されています。
衛生処理がしっかりしているため、安心して生で与えることができます。

肉の種類によっては生のまま与えてはいけないものもある

豚肉・鶏肉・鹿肉や猪肉・レバーなど、犬に生肉を与えてはいけない種類もあります。
それぞれを食べてしまうことで懸念されるリスクについてご紹介します。

豚肉

生の豚肉には、E型肝炎や寄生虫のリスクがあるため、犬に与えてはいけません。カンピロバクターやサルモネラなど、食中毒の原因菌も多く生息しています。
豚肉を犬に与える際には、これらの細菌やウイルス、寄生虫を駆除するため必ず加熱をしましょう。

参照元|厚生労働省 豚のお肉や内臓を生食するのは、やめましょう

鶏肉

生の鶏肉にはカンピロバクターという食中毒を起こす細菌が多く生息しているため、犬に与えてはいけません。細菌は鶏肉を加熱することで死滅するため、加熱した鶏肉を与えましょう。

参照元|厚生労働省 カンピロバクター食中毒予防について

鹿肉や猪肉

鹿肉や猪肉などのジビエは生で食べると、食中毒や寄生虫、E型肝炎ウイルスのリスクが高いです。加熱すれば細菌や寄生虫、ウイルスは死滅するので犬には必ず加熱してから与えましょう。

参照元|厚生労働省 ジビエ(野生鳥獣の肉)はよく加熱して食べましょう

レバーなど

生のレバーには、様々な寄生虫が感染している可能性があります。

寄生虫に感染した犬にみられる症状

食欲不振
嘔吐
下痢
腹部が異常に膨らむ
子犬の発育不良

寄生虫によって人への感染の仕方は異なりますが、経口感染することがほとんどです。このような寄生虫は、肉類を加熱不十分で食べることが原因であることが多いです。
肉を加熱したとしても、調理器具の管理が不十分であれば、何かに付着して口に入ることがあります。

寄生虫の種類によって治療法は変わり、発見困難なこともあります。生食と書かれている肉類であっても十分注意しましょう。

人間に感染した回虫の駆除は非常に難しく、治療には長い年月が必要です。感染を避けるためにも、レバーは生で犬に与えないようにしましょう。

肉の種類ごとに適切な与え方は異なる

犬に安心して与えられる生肉は、牛肉と馬肉の2種です。
牛肉や馬肉の栄養価や適切な与え方について解説します。

牛肉

牛肉はレアのステーキやローストビーフでお馴染みの、生で食べても比較的安全な肉類です。
生の牛肉にはアミノ酸の一種のタウリンや鉄、色素タンパク質のミオグロビンが多く含まれています。

これらの栄養素は、造血や血圧の降下に効果的なので、貧血や高血圧に悩んでいる犬におすすめです。

与える際に、犬が喉に詰まらせないよう一口サイズにカットし、ドッグフードにトッピングするかそのまま食べさせましょう。
脂身のついている部位や、人間用に市販されている肉は、犬に与えるのに適しません。犬に与える生の牛肉には、モモや肩などの脂肪が少ない赤身部位を選んでください。

馬肉

馬は体温が高いため雑菌が繁殖しにくく、食中毒の原因菌がいる可能性も低いため犬に生で与えるのに適しています。

与える際には、赤身などの極力脂身が少ない部位を選びましょう。人間用の霜降り馬刺しなどは、脂肪分が多く肥満を招く恐れがあるので食べさせてはいけません。
一口大に細かくカットし、そのまま与えるかドッグフードにトッピングして与えてください。

馬肉のタンパク質は、牛肉や豚肉のおよそ2倍でありながら、脂肪分は牛肉の5分の1程度しかありません。カロリーは牛肉の半分程度なので、犬に与える生肉としては牛に肉よりも適しているという見方もあります。
また、馬肉には以下のような栄養素もたっぷり含まれています。

馬肉に含まれる栄養素

グリコーゲン
ビタミンA
ビタミンE
鉄分
カルシウム

特にグリコーゲンは身体を動かす主要なエネルギー源となるため、犬が健康に過ごすために必要な栄養素だといえるでしょう。

生肉に含まれる栄養素が補える食べ物

ほうれん草

生肉は豊富な栄養素や与えるメリットもある一方で、食中毒をはじめ体調を損ねる可能性もあり、食べさせたくないという場合には、生肉に含まれている栄養素を別の食材から摂取することをおすすめします。

先述した通り、基本的に栄養素のほとんどはドッグフードを与えていればバランスよく摂取できていると考えられますが、おやつとして栄養補助を考えたい場合には参考にしてください。

ビタミンB類

ビタミンB類は、犬の身体の中でエネルギーを生み出す働きをしています。生肉に多く含まれるビタミンB類は、ビタミンB1とビタミンB2です。

筋肉だけではなく神経や脳、内臓の働きも司るビタミンB類が不足すると、犬には神経炎や脳の異常、肝機能障害などが起こります。

ほうれん草などでも十分補える

ビタミンB類は、ほうれん草などの野菜で十分補えます。しかし、犬は野菜の消化が苦手な傾向にあります。ほうれん草を与える際には柔らかく茹で、細かく刻むかミキサーでペースト状にして与えましょう

なお、ほうれん草のビタミンCは加熱により失われやすいため、茹で時間は軽く火が通る程度に留めると、摂取しやすいでしょう。
ただし、シュウ酸を多く含む野菜でもあるため、結石にかかったことがある犬には与えないよう注意してください。

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鉄分

鉄分は、犬にとって必須の栄養素で、体内で酸素を運ぶ血液を作る役割を果たしています。
鉄分が不足すると、犬は貧血や粘膜蒼白、下痢を起こし元気がなくなります。

小松菜や枝豆などで補える

鉄分は、小松菜枝豆などで補えます。小松菜は茹でて細かく刻むか、ミキサーでペースト状にして与えましょう。

犬に与える枝豆は必ず、塩茹でがされていないものを選んでください。さやごと茹でた枝豆はあら熱を取り、さやから出して細かく刻むかそのまま食べさせましょう。

酵素

生肉には、加工や加熱をされた肉にはない酵素が含まれています。酵素は胃や腸の消化吸収を助ける働きがあり、不足すると下痢や軟便、嘔吐などの消化障害が起こります。

市販の犬用グリーントライプでも補える

酵素は生の肉や内臓に含まれるため、市販の野菜や果物などの食品で補うのは難しいです。しかし、草食動物の胃の内容物を加工した犬用グリーントライプならば、簡単に酵素を補うことができます。

犬用グリーントライプには、匂いが少なく扱いが簡単なフリーズドライや、嗜好性抜群の缶詰タイプなどがあります。フリーズドライタイプはそのまま与えるか水でふやかし、缶詰タイプはそのまま犬に食べさせましょう。

生肉を食べた犬に見られる可能性のある症状

正面を向いている犬

生肉を食べた犬は、稀に体調不良を起こします。ここでは、生肉を食べた犬にみられる可能性のある症状とその原因を紹介します。

嘔吐や下痢

鮮度の低い生肉には、食中毒の原因菌が繁殖する事があります。食中毒菌に冒された生肉を犬に与えると、嘔吐や下痢などの食中毒症状を起こします。

食中毒は、鮮度の高い生食用の肉を与えることで予防できます。購入して時間が経った生肉は生で与えず、加熱してから食べさせましょう。

参照元|倉敷芸術科学大学生命科学部動物生命科学科 湯川 尚一朗 著 日本における犬用非加熱フード(ローフード)からのサルモネラ属菌検出

呼吸困難

犬が生肉を食べると、呼吸困難を引き起こすことがあります。これは、生肉に潜むトキソプラズマという寄生虫が原因です。

トキソプラズマは基本的に無症状ですが、犬の免疫が極端に低下すると、呼吸困難や筋肉の脱力を引き起こします。トキソプラズマが重篤な症状の場合、治療は困難になるため、犬の免疫を普段から下げないよう気をつけることが大切です

参照元|日本臨床獣医学フォーラム 犬の病気トキソプラズマ症

肝炎

生肉を食べた場合、人ではE型肝炎に感染する恐れがあります。

犬の場合もE型肝炎ウイルスを持つ生肉などを食べることで感染すると報告されています。
しかし、何ら臨床症状は示さず、感染しても比較的早く体内から排泄されてしまうと考えられています。

犬の場合は大丈夫だと油断することはできません。注意が必要と言えるでしょう。 

参照元|公益社団法人日本獣医師会 犬もE型肝炎に感染するか

犬に生肉を食べさせて体調に異変がみられたときの対処方法

生肉

万が一、生肉を食べた犬が体調不良を起こした場合、早急に対処することが重要になります。ここでは、犬に生肉を食べさせて体調に異変がみられたときの対処方法について解説します。

速やかにかかりつけの動物病院で検査を行う

生肉が原因で引き起こされる体調不良には、細菌感染による食中毒症状やアレルギー症状など、さまざまなものがあります。愛犬に生肉を食べさせて体調に異変がみられた際には、早急にかかりつけの動物病院を受診してください。

また、動物病院では原因の究明や症状に対して適切な対処をしてもらうためにも、食べさせた生肉の種類や量、時間帯や症状などについて細かくメモを取っておき、正確に伝えられるようにしましょう。

動物病院では血液検査や検便、レントゲン検査などが行われる場合があります。
また、症状によって催吐処置や注射、入院等の治療が勧められるでしょう。

緊急時には救急対応している動物病院へ

夜間や休日など、かかりつけの動物病院が開院していない場合は、救急対応をしている動物病院を受診しましょう。

いざというときに慌てないためにも、近所で救急対応をしている動物病院をいくつかピックアップしておくことをおすすめします。

急な体調不良に備えてペット保険の加入もおすすめ

犬と飼い主

犬の急な体調不良に備える手段のひとつとして、ペット保険への加入もおすすめです。ここでは、犬がペット保険に加入するメリットを紹介します。

異変を感じたときにすぐ受診できる

ペット保険に加入していれば医療費の負担が大きく抑えられるため、動物病院を受診しやすくなります。
異変を感じたときにすぐ受診できるため、病気や怪我の早期発見・早期治療を行いやすくなるのは大きなメリットだといえるでしょう。

緊急時の問い合わせに対応してもらえるペット保険も

ペット保険の中には、24時間365日で獣医師による緊急時のサポートが受けられるサービスもあります
体調に異変がみられた際に、動物病院の受診も含め適切な対処を案内してもらえるため、心強い味方になるでしょう、

以下の記事では、犬が加入できるペット保険を比較しています。合わせてご覧ください。

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獣医師からみた犬と生肉の関係

平松 育子 先生

生肉の生食については賛否両論と言えるでしょう。
衛生的な処理が行われており、微生物や寄生虫の感染の恐れがないものを少量なら生食は良いと言えるでしょう。

そのためには生食用とされたものを選ぶようにしてください。加熱用はしっかり芯まで加熱して、加熱不十分にならないように注意してください。
初めて与えるときには必ず少量からにして、嘔吐や下痢などの異変が起こらないか確認しましょう。

生肉を調理した後の手を洗うことはもちろん、調理器具などは他のものと分けてしっかり洗うことを心がけてください。

生の肉を食べた後に体調不良が起きた場合は、入手ルート、量、食べた日時などがわかるようにして、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。

治療内容によっては費用が高額になる場合があります。
万が一は突然起こることがありますので、ペットをお迎えしたら保険加入を検討しましょう。

まとめ

生肉食にはビタミンやミネラル、酵素や水分を効率良く摂取できるメリットがあります。しかし、ドッグフードと比べて栄養バランスが崩れやすいというメリットも見逃せません。
生肉食については賛否両論なので、メリット・デメリットを理解した上で食事に取り入れるかを決めましょう。

生肉を食べた犬が体調不良を起こした場合、食中毒やトキソプラズマ症、肝炎の恐れがあります。発熱や呼吸困難、嘔吐がみられたらすぐに動物病院を受診してください。
この際ペット保険に加入していれば、緊急時の医療費を抑えられます。

ABOUT ME
記事監修|平松 育子 先生
山口大学農学部獣医学科(現在 山口大学共同獣医学部)卒業後、山口県内の複数の動物病院に勤務。その後2006年にふくふく動物病院開業。 年間約6000頭の診療に従事。得意分野は皮膚病です。YIC情報ビジネス専門学校ペット総合科の講師も務め、動物看護師の育成にも携わっています。 https://fukufukuvet.com
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