しかし、かえって体調不良を招いてしまうことのないよう、与える量や方法には注意が必要です。
本記事では、柿を犬に与えるメリットや与え方、子犬やシニア犬に与える際の注意点について解説します。
与えても大丈夫!犬は柿を食べられる

柿は、有害な栄養素もなくアレルギーも起こしにくいため、犬に与えても問題のない果物のひとつです。
しかし、稀にアレルギーをおこす犬もいるため、はじめて与える時はごく少量ずつ、様子を見ながら与えるようにしてください。
甘い味を好む犬も多く飼い主と一緒に季節の味覚を楽しめますが、果糖を多く含んでいるため、肥満防止の観点からも与えすぎに注意しましょう。
皮・ヘタ・種を取り除けば生で与えても問題ない
柿を与える際は、皮やヘタ、種を取り除いた果肉のみであれば生のまま与えても問題ありません。
特に柿の種は、果物の中でも大きく消化されないため、与えてしまうと喉や腸に詰まってしまう危険性があります。
また、皮やヘタも固く消化されにくいため、胃腸に負担がかかるばかりでなく、有害な農薬が残っている可能性もあります。
与える際は必ず取り除くようにしてください。
また、渋柿やまだ熟していない青柿は犬に与えないようにしましょう。
柿に含まれる栄養素が犬の体に与えるメリット

柿には、犬の体にメリットを与える栄養素も豊富に含まれています。
ここからは、犬の健康増進に効果が期待できる柿の栄養素について説明します。
食物繊維(ペクチン)
柿には食物繊維であるペクチンが含まれています。
柿に含まれるペクチンは、実が硬いうちは不溶性ですが、熟してくると可溶性に変化し、腸中の余分な水分を吸収して排便を促してくれます。
また、LDLコレステロールを低下させる効果や、腸内環境が整うことによる免疫力の増加も期待できます。
不足すると腸内環境の乱れから消化不良や便秘を引き起こすことも
食物繊維の不足は、腸内環境の乱れから便秘などを引き起こす可能性があります。
一方で、過剰に摂取すると下痢になってしまうため注意が必要です。
食物繊維は、とうもろこしやさつまいも、桃などにも豊富に含まれています。

参照元|日本食物繊維研究会誌 「食物繊維と脂質代謝」
カリウム
利尿効果のあるカリウムは、体内の水分量を調整し、余計な塩分の排出を促します。
また、免疫機能を健全に保ち、筋肉の機能を調整する役割も担います。
水に溶けやすいため、生のまま摂取するのがおすすめです。
不足すると食欲不振や元気消失状態にも
犬は、通常の食生活であればカリウムが不足することはありません。
しかし、嘔吐や下痢などの症状がある時には欠乏状態になることもあるため注意してください。
カリウムは、バナナやメロンにも多く含まれています。

ビタミンC
柿は100gに70mgと、果物の中でもビタミンCの含有量が多い食材です。
この量は、レモンの可食部分3.5個分と同じ量にもなるほどです。
ビタミンCは、皮膚や関節の健康維持に効果があり、骨や腱などの結合たんぱく質であるコラーゲンを生成するためにも必須となる栄養素です。
また、ビタミンCには抗酸化作用があるため、免疫力を向上させ、さまざまな病気に対しての抵抗力を高めます。
さらに最近では癌発生の抑制やストレスからの回復、歯周病の軽減なども認められている健康維持にかかせない栄養素です。
熱に弱いため、生で与えられる食材から摂取させるのがよいでしょう
不足すると皮膚や関節のトラブルや貧血などをおこしやすくなる
ビタミンCが不足することで起きやすいのは、コラーゲンの減少による皮膚や関節のトラブルです。
水溶性であるビタミンCは、過剰に摂取した場合は尿として排出されます。そのため、糖尿病や腎疾患など多尿傾向のある病気の犬は欠乏しやすく注意が必要です。
犬は体内でビタミンCを合成できますが、その量は限られています。
また、シニア犬はビタミンCの合成と貯蔵を担う肝臓機能が衰えるため、体内で合成するビタミンCの量が減少します。
体内で生成される量が不足しがちな犬にとって、柿はビタミンCを手軽に補える食材です。
また、柿以外にもいちごやキウイ、ブロッコリーなどからも摂取できます。
参照元|ペット栄養学会誌 「ビタミンの役割と要求量」



β-カロテン
β-カロテンは、消化の過程で必要な分だけビタミンAに変換されます。
皮膚や粘膜の健康維持を助けるだけでなく、視細胞の働きをサポートして視力の維持にも効果があります。
不足すると皮膚のトラブルが起きる可能性も
β-カロテンが不足すると、フケが増えたり皮膚がベタつくなどの症状がでることがあります。
柿の他には、にんじんやかぼちゃなどにも含まれています。

タンニン
柿の渋みの成分であるタンニンは、ポリフェノールの一種で高い抗酸化作用があります。
また、血液の流れを改善することにより、動脈硬化や高血圧の予防を期待できます。
甘柿は渋みを感じませんが、これは熟す前に水溶性だったタンニンが、柿が熟すにつれ不溶性に変化するためです。渋みは感じなくなりますが、タンニンの含有量は熟す前と変わりません。
タンニンは渋柿の方が、多く含まれますが、生の渋柿にはアルカロイドという有害物質が含まれるため、犬には与えないように注意しましょう。
過剰な摂取は便秘や貧血の原因になるため適量を与える
メリットの多いタンニンですが、摂りすぎると犬の健康に弊害があります。
そのひとつが、鉄の吸収を悪くするために起こる、貧血の誘発です。
また、腸のぜん動運動機能を抑える働きがあるため、便が硬くなり、便秘を引き起こす可能性があります。
タンニンは、柿の他にレンコンから摂ることができます。
水分
柿は100gのうち約80gが水分のため、効率的に水分を摂れるのも大きなメリットのひとつです。
犬に必要な水分量は、体重1kgに対して50〜60mlが目安です。しかしドライフードをメインの食事にしている犬は、水分が不足しがちな傾向にあります。
水を飲むのが苦手な犬にとって、柿は水分をとるのにおすすめの食材です。
不足すると内臓機能の低下や老化の早まり・尿路結石などのリスクも
水分が不足すると、犬の健康へさまざまな影響が出るリスクもあります。
排尿回数が減ることによる尿路結石などの病気の誘発
腎臓や内臓機能の弱まり
骨の代謝や造血が滞ることによる老化の早まり
柿と同様に、スイカやいちごなどから水分補給を促すのもおすすめです。
暑い時期の水分補給には水を飲ませるのがいちばんですが、なかなか積極的に水分補給をしてもらえない場合には、このような果物を水に浮かべて一緒に食べさせると良いでしょう。

犬に柿を与えるときの注意点

柿は犬の体にいい栄養素が豊富な食材ですが、与え方によっては健康を害するおそれもあります。犬に柿を与える際に気を付けるポイントや、適切な量について解説します。
1日あたりの適量は体重5kgに対して15g程度まで
犬におやつを与える場合の目安は、1日に必要な摂取カロリーの10%以内が良いとされています。しかし、柿は水分や糖分を多く含んでいるため、10%よりも少量に留めることをおすすめします。
体重5kgに対して15g程度を目安にすると良いでしょう。
ただし、適量はライフステージや犬種により個体差があります。そのため、少量ずつ与えるようにしましょう。
肥満・下痢のリスクがあるため与えすぎに注意する
柿は糖分が多く、食べすぎると体重増加につながります。
また、食物繊維も多いため、与え過ぎると下痢や嘔吐などの体調不良につながります。
適量を守って食べさせましょう。
喉につまりやすいため小さくカットして与える
犬は食材を咀嚼せず、与えられたまま丸飲みしてしまうことも少なくありません。
柿の果実は固く、喉につまらせやすいため、小さくカットして与えるようにしてください。
生の渋柿や青柿は与えない
生の渋柿や青柿には、犬にとって有害なアルカロイドが含まれています。
犬は苦味に対する味覚が鈍感なため、青柿や渋柿を食べてしまうことがあります。
散歩中に熟していない青柿を見つけたら、食べないように気をつけてください。
初めて与えるときには体調の異変やアレルギー発症に注意する
柿はアレルギーを起こしにくい食材ですが、ごくまれにアレルギー症状をおこす犬もいます。
はじめて与える時は、様子を見ながら少量ずつ与えるようにしてください。
消化器のトラブルを起こしやすい犬は要注意
腸内環境を整える効果のある柿ですが、過剰に食べさせてしまうと下痢や便秘などの消化系の体調不良に繋がる可能性もあります。
消化器トラブルを起こしやすい犬は、気をつけて与えるようにしましょう。
腎臓病など持病のある犬は与える前に獣医師に確認する
腎臓病はカリウム制限の食事が推奨されているため、柿を与える際は必ず事前に獣医師へ確認してください。
また、肥満傾向にありダイエットをしている犬も、獣医師と相談しながら与えるようにしましょう。
柿を子犬やシニア犬に与える時の注意点

柿は食物繊維も豊富で利尿作用もあるため、トイレパターンの定まっていない子犬に与える時はごく少量にしましょう。
また、シニア犬にとってはメリットの多い食材ですが、体の機能が弱っている可能性も考えられるため、与え方の注意点をしっかり守るようにしてください。
消化機能が弱いため適量を守って与える
子犬やシニア犬は消化機能が弱く、与えすぎると消化不良や下痢の原因になります。適量よりもやや少なめに与えた方が安心です。
また、子犬の場合は、消化機能が発達して成犬用のフードを食べられるようになってから与えましょう。
与える際は細かくカットするかピューレ状態にする
子犬もシニア犬も、大きいまま与えると喉につまらせたり消化不良を起こしたりする危険があります。
一口大に小さくカットして与えるかピューレ状にすることで、喉のつまりだけでなく消化の負担も減らせます。
シニア犬の水分補給や流動食の補助におすすめ
柿は水分と栄養を同時に摂取できるため、固形物を食べづらくなったシニア犬にもおすすめの食材です。
ピューレ状にしたものを少量与えることで、加齢により失われがちなビタミンCや水分を補給することができます。
柿を加工した食品は与えないように注意する

生のまま与えればメリットも多い柿ですが、加工食品には危険なものも少なくありません。
基本的に人間用に味付け加工された食品は、犬にとって有害な添加物などが含まれている可能性があるため、食べさせてしまうことのないよう注意しましょう。
柿のコンポート・ジャム
コンポートやジャムには大量の砂糖が入っています。ごく少量食べるだけで大量の糖質を摂ってしまうため、肥満や糖尿病の原因になります。
糖質は健康維持のために必要な栄養素ですが、通常の食事でも十分に摂取できるため、与える量に注意しましょう。
柿の葉寿司
柿の葉は繊維が多く、犬の消化機能にとっては大きな負担がかかるため与えないようにしてください。
また、柿の葉茶はタンニンの過剰摂取につながるおそれがあるため、与えるのは控えましょう。
干し柿・ドライフルーツ
干し柿やドライフルーツの柿は、砂糖や添加物など余計なものが入っていないため、犬に与えても問題ありません。ただし与える量には注意が必要です。
ただし、干し柿やドライフルーツの柿は、水分が抜けている分、生の柿と比べて高カロリーです。
例えば、生の甘柿は100gで63kcalですが、干し柿では274kcalと約4倍強にアップします。肥満防止のためにも与えすぎに気をつけましょう。
柿の種
柿とは直接的な関係はありませんが、よくピーナッツと一緒になって売られているスナックの柿の種は、犬の体にとって有害な添加物が多く含まれています。
また、ピーナッツ自体は食べても問題ありませんが、ピーナッツをはじめとしたナッツ類でアレルギーを起こしてしまうこともあるため、こちらも与えない方が良いでしょう。
柿を食べさせて体調不良やアレルギー症状がみられたときの対処方法

柿を食べた犬の体調に異変がみられたり、アレルギー反応がみられたりした場合は、自己判断せず早急に対処することが必要です。
様子を見ている間に症状が悪化し、取り返しのつかないことになる前に病院を受診しましょう。
速やかにかかりつけの動物病院で検査を行う
ごくまれに、柿がきっかけとなってアレルギー症状をおこす犬がいます。
下痢・嘔吐発熱
皮膚の赤み・湿疹
腫れ・かゆみ
元気消失
これらの症状が認められた場合は、早急にかかりつけの動物病院で検査を行ってください。
また、下痢や嘔吐のみなどであっても、いつ重症化するかはわかりません。
素人判断で様子を見ることはせずに、早急にかかりつけの動物病院を受診しましょう。
緊急時には救急対応している動物病院へ
かかりつけの動物病院の休診日や、夜間などの診療時間外に体調不良が起きた場合、可能な限り救急対応している動物病院を受診してください。
受診の際に食べた量や時間、症状の変化などを伝えられるように、メモを残しておくことも大切です。
万が一の場合に備えて、救急対応している病院をあらかじめ調べておくなどの準備をしておきましょう。
急な体調不良に備えてペット保険の加入もおすすめ

自由診療である動物病院は、診察内容や診療費が病院によってさまざまです。
また、急な手術や長期の治療などが必要になった場合、治療費の高さを理由に選択肢が狭まってしまう可能性もあります。
こうした治療費の負担を軽減させるためには、手段の1つとして「ペット保険」への加入もおすすめです。
ここからは、いざという時の安心に繋がるペット保険のメリットについて解説していきます。
愛犬に適切な治療を受けさせることができる
ペットの怪我や病気は事前に予測できません。ある日突然、高額な治療費が必要となる可能性もあります。
ペット保険へ加入していれば治療費への不安がなくなり、ペットに適切な治療をうけさせることができるでしょう。
緊急性のある判断や、高度な医療を行うかを決断する必要となった場合でも、金銭的な理由で治療を断念したり延期したりしなくてもよいのは大きなメリットだといえます。
緊急時の問い合わせに対応してもらえるペット保険も
ペット保険では、通院・入院・手術の費用の補償だけでなく、病院に行くかどうか迷っている時や、ペットの様子が気になる時などに、獣医師へ相談できるサービスを提供している会社もあります。
緊急時の適切な対処なども教えてもらえるため、いざというときの備えとしておすすめです。
以下の記事では、獣医師の専門的な知見からペット保険加入の必要性について解説しています。合わせてご覧ください。

獣医師からみた犬と柿の関係
柿は甘くて水分も多く含むため、飼い主と一緒に楽しむのに適したフルーツといえます。
ただし、毎日大量に摂取していると肥満につながるなど、健康に良い食物も、体に害を及ぼす可能性が生じてしまいます。
また、記載されている量は目安になるため、愛犬の消化機能などによっては、記載された量でもどんどんお肉がついてしまったり、便の状態があまり良くなくなる可能性もあるでしょう。
その際は量をさらに減らしたり、場合によっては与えることを中止する判断をしなければならない場合もあります。愛犬の健康のために最適な判断をしながら楽しんでいただけたらと思います。
健康でいてもらうことも大切ですが、万が一の時に治療の選択肢を広めて、後悔をすることのないよう保険の加入を検討することも、犬との充実した生活にするために有意義なことだといえるでしょう。
まとめ
柿は犬に与えてもいい果物のひとつです。ただし、欲しがるまま与えることは避け、1日あたりの適量を守って健康を損ねてしまわないよう注意しましょう。
また、柿以外にも犬の健康にメリットの多い果物はたくさんあるため、主食と合わせて上手に活用することをおすすめします。
万が一、柿を食べたのがきっかけで体調不良を起こしてしまった場合には、早急に動物病院を受診して医師の判断を仰いでください。

