ナッツは、犬にとって中毒症状を起こす恐れがある危険な食材です。消化が悪く、嘔吐や下痢を起こすケースもあるため、食べさせることはおすすめしません。
本記事ではナッツを食べる危険性や、ナッツ中毒に備えるためのペット保険のメリットについて解説します。
犬にナッツを食べさせてはいけない!
犬にナッツを食べさせてはいけません。ナッツは、人にとっては美味しくて健康にも良い食材ですが、犬にとっては中毒を起こす可能性のある危険な食材です。
おつまみとしてナッツを食べる方も多いかもしれませんが、犬の届くところに無防備に置かないようにして、誤食や盗み食いのリスクを避けなくてはなりません。
ナッツ類を食べた愛犬の体調に異変がみられたら要注意
ナッツ類を食べた愛犬の体調に異変がみられた場合は、かかりつけの動物病院を受診しましょう。犬の体調や年齢によっては、重症化する可能性もあります。
特に注意が必要なものは、マカダミアナッツです。食べると数時間後に中毒症状を起こし、重症化する恐れがあります。中毒以外にも、消化不良や喉に詰まらせてしまうなどの危険性があるため、ナッツ類は安易に与えないことをおすすめします。
犬にナッツ類を食べさせてはいけない理由
ナッツ類は犬の健康にとって必要な食材ではなく、むしろ与えるデメリットが多い食材です。ここからは、犬にナッツ類を食べさせてはいけない理由について解説します。
マカダミアナッツは中毒を起こす可能性がある
まず挙げられるのが、マカダミアナッツが犬の体内に及ぼす影響によるものです。ナッツ類の中でも、マカダミアナッツは「マカダミアナッツ中毒」という病名もあるほど、犬に中毒症状を引き起こしかねません。
実際に、体重1kgあたり0.7gのマカダミアナッツで中毒症状が出た例があり、嘔吐や下痢をはじめ、痙攣や筋肉に力が入らず歩けないなどの症状が報告されています。しかし現時点では、中毒を引き起こすメカニズムや目安量について正確には解明されていません。
マカダミアナッツを摂取すると、たとえ少量でも症状が悪化する可能性もあります。万が一食べてしまった場合には、速やかにかかりつけの動物病院を受診してください。
参照元:Veterinary Manual|「Macadamia Nuts」
frontiers|「Household Food Items Toxic to Dogs and Cats」
アーモンドなど中毒症状まで至らないものもある
ナッツ類には、マカダミアナッツの他にも、アーモンドやクルミなどたくさんの種類があります。一般的に中毒性が低く、犬に与えても問題ないとされているナッツは以下の通りです。
- アーモンド
- カシューナッツ
- クルミ
- ピーナッツ
ただし、クルミやアーモンド、カシューナッツなど、多くのナッツ類は食物繊維や脂質が多い食材です。そのため、多量を与えてしまうと、下痢や軟便などを引き起こす可能性があります。また、どれも高カロリーで、肥満にも繋がる恐れがあります。
ナッツ類は犬にとって負担になる要素が多いことから、積極的に与えることは望ましくありません。
丸飲みして腸閉塞を引き起こす恐れもある
次に挙げられるのが、ナッツの丸飲みによる腸閉塞を起こすリスクです。
閉塞の状態によっては腸が破れてしまうため、早期に治療しなければ命に関わりかねません。犬が丸呑みして何度も嘔吐などをする場合は、すぐに動物病院に相談して指示を仰ぎましょう。
なお、ナッツを食べてからあまり時間が経っていないからといって、決して無理に吐かせようとはしないでください。場合によっては誤嚥性肺炎や食道内異物となって、症状をより悪化させてしまう可能性があります。
ナッツがきっかけの体調不良によくみられる症状
ナッツを食べることで起こる症状には、どのようなものがあるのでしょうか。ここからは、その主な症状について具体的に解説します。
一般的には嘔吐や下痢などの症状がみられる
ナッツ類は消化の悪いものが多いため、中毒症状がない場合でも、一般的に以下のような症状がよくみられます。
- 嘔吐
- 下痢
- 気力の低下
- 発熱
症状が軽度であれば、時間経過によって自然回復することもありますが、治療が遅れたために重症化する可能性もゼロではありません。
下痢や嘔吐は食物アレルギーでも似た症状を起こすケースがあるため、様子がおかしいと感じた場合は、早めにかかりつけの動物病院で診てもらうことをおすすめします。
中毒症状として重篤化すると痙攣や脱力などがみられる
中毒症状として重篤化した場合、以下のような症状がみられます。
- 痙攣
- ふらつき
- よだれや震えが止まらない
- 脱力
- 後ろ足の麻痺
- 歩けない
症状が重度である場合、命に関わる危険性もあります。上記の症状がみられた場合は、速やかに動物病院に連れていってください。
中毒症状を引き起こす目安となる量は正確には解明されていないため、マカダミアナッツを含めたナッツ類を犬に与えることは避けましょう。
食欲不振やお腹を痛そうにしている場合は腸閉塞の疑いも
愛犬が以下のような仕草をしている場合、食べたナッツが腸などに詰まっている可能性があります。
- 食欲がない
- 便が出ない
- 嘔吐を繰り返す
- お腹を痛そうにしている
- ふらつきや痙攣している
上記の症状がみられた場合は、早急に獣医師の判断が必要になるため、速やかに動物病院で検査してもらいましょう。レントゲンや超音波検査などで腸閉塞が判明すれば、一般的には手術による外科的処置が行われます。
ナッツによるアレルギーの発症が疑われる症状
人間同様、犬もナッツ類でアレルギーを起こす可能性があります。アレルギーの発症が疑われる症状は以下の通りです。
- 皮膚炎
- 食欲不振
- 肉球や足・指の間をしきりに舐める
- 目の充血
- 下痢
- 嘔吐
ナッツ類にアレルギーがある犬の多くは、皮膚に痒みを伴う炎症や下痢などの消化器症状があらわれます。上記の症状が続くようであれば、動物病院を受診しましょう。
ナッツを食べた事による体調不良の治療費はペット保険でカバーできる
犬がナッツを食べてしまった場合、「高額な治療費を求められたらどうしよう」と気がかりな人も多いでしょう。
ペットには人間のような公的保険制度がないため、ナッツの誤食による治療費も100%自己負担となります。こうした場合の備えとしておすすめなのが、「ペット保険」です。
※保険会社や発症のケースによって補償対象外となる場合もあります。詳細は加入中または加入を検討しているペット保険会社へお問い合わせください
ナッツに起因する体調不良の治療費は高額になることも
ナッツを食べて体調不良になった場合、血液検査や催吐処置、レントゲン検査などさまざまな検査と治療が行われます。
一般的な検査費用は以下のとおりです。
- 初診料・・・1,000〜2,000円(再診料500〜1,000円)
- 血液検査(CBC、生化学)・・・4,000〜7,000円
- レントゲン検査・・・3,000〜5,000円(複数枚撮ることもあり)
- 造影レントゲン検査・・・3,000〜5,000円
- 腹部の超音波検査・・・3,000〜5,000円
- CT検査(造影なし)・・・20,000〜25,000円
- CT検査(造影あり)・・・30,000〜40,000円
参照元:日本獣医師会|「家庭飼育動物(犬・猫)の診察料金実態調査」
※上記の診療費等はあくまで一例であり、一般的な平均・水準を示すものではありません
※各診療項目の金額は、動物病院によって異なります
これらの検査結果から、催吐処置や内視鏡など、獣医師は必要な処置について判断します。
たとえば、検査結果の後、内視鏡によって異物が摘出された場合には、上記に加えて以下のような費用が発生することが想定されます。
内視鏡で異物を摘出した場合
- 全身麻酔・・・10,000〜12,500円
- 内視鏡による異物摘出・・・10,000〜12,500円
- 入院・・・2,000〜3,000円(1泊:小型犬の場合)
- 麻酔などの注射料や内服薬料
参照元:日本獣医師会|「家庭飼育動物(犬・猫)の診察料金実態調査」
※上記の診療費等はあくまで一例であり、一般的な平均・水準を示すものではありません
※各診療項目の金額は、動物病院によって異なります
内視鏡で異物を取り出した場合、1泊入院もしくはその日に帰宅が可能ですが、いずれにおいても急な出費には変わりありません。
なお、上記値段はあくまで一例であり、費用は動物病院によって異なります。
こうした「急な出費に対応できるか不安」という場合には、貯蓄のほか、治療費を補償してもらえるペット保険の加入も検討すると良いでしょう。
受診ハードルを下げるための備えの1つとしてもおすすめ
ペット保険は、動物病院の受診ハードルを下げられる点においてもメリットの大きなものです。
治療費の金銭的負担が抑えられることは、「出費が気になるから受診しない」という選択をする機会を減らし、治療の選択肢の幅を広げることが期待できます。
また、定期的に動物病院で受診していれば飼い主がペットの健康状態を正しく把握でき、病気の早期発見、早期治療にも繋がるという点もメリットとして挙げられます。
異変を感じたらすぐに獣医師へ電話相談できる保険もある
ペット保険には、異変を感じたらすぐに獣医師へ電話相談できるといったサービスを提供しているものもあります。
たとえば、愛犬と暮らしていると、「様子がおかしいけれど、動物病院に連れていくべきか?」と迷うこともあるでしょう。こうした愛犬の対応に迷った場合や動物病院を受診するべきか判断できない場合に、獣医師に相談できるものもあります。
いざというときに助けとなる保険なので、こうしたサービスを活用したい場合は加入時に補償内容をしっかり確認しておきましょう。
以下の記事では、ペット保険について補償内容をはじめ具体的な項目ごとに比較しています。合わせてご覧ください。

犬に与えてもOK!ナッツに含まれる栄養素を摂取できる食べ物
ナッツに含まれる栄養素には、犬の健康に良い影響を与える成分もあります。最後に、ナッツ類に含まれる栄養素を補える食材とともに、その栄養素についてご紹介します。
かぼちゃ
ナッツに豊富に含まれているビタミンEは、かぼちゃからでも摂取できます。
- 皮膚や被毛の健康維持
- 老化の予防
ビタミンEは強い抗酸化作用から、体内の脂質の酸化を防ぎ、細胞の健康維持を助ける栄養素です。摂取することで老化や免疫機能の低下予防といったアンチエイジングが期待できることから、「若返りのビタミン」とも呼ばれています。
柔らかくなるまで加熱した後、細かく刻んだり、スープにしたりと消化しやすいようにしてから与えましょう。
参照元:インターズー出版|動物栄養管理学

亜麻仁油
ナッツ類の中でもクルミにはオメガ3脂肪酸が多く含まれており、この栄養素は亜麻仁油からでも摂取できます。
- 皮膚や被毛の健康維持
- 中性脂肪やコレステロールのバランス調整
- 心臓や血管などの健康維持
オメガ3脂肪酸は、犬が体内で合成できないため、食事から摂る必要がある必須栄養素の1つです。
皮膚や被毛の健康維持や、中性脂肪や悪玉コレステロールの低下に欠かせない成分で、腎臓病の進行を防ぐことも期待されています。
ただし、オメガ3脂肪酸は熱に弱いため、与える際はドッグフードにかけるのがおすすめです。また、亜麻仁油が配合された犬用のサプリメントもあるため、状況に応じて与えるのも良いでしょう。
参照元:ペット栄養会誌|腎不全と栄養
レバー
ナッツ類に多く含まれている亜鉛は、レバーを食べることで摂取できます。
- 皮膚や被毛の代謝
- 骨の形成
- 免疫機能の向上
亜鉛は、皮膚や被毛の代謝、骨の形成など、皮膚から内臓免疫に至るまでさまざまな体内の反応に関わっている重要なミネラル成分です。
亜鉛が不足すると、皮膚病や成長遅延、結膜炎などの眼疾患などを引き起こしかねません。
特に手作り食では亜鉛が不足しやすいため、レバーを積極的に使って適量を摂取させることをおすすめします。
参照元:ペット栄養会誌|イヌの亜鉛欠乏

まとめ
犬に、ナッツ類を与えてはいけません。特に犬がマカダミアナッツを食べると中毒症状を引き起こしかねず、場合によっては命に関わることもあります。万が一食べてしまった場合は、速やかに動物病院へ向かいましょう。
他のナッツも下痢や嘔吐、肥満などの可能性があるため、食べさせないよう注意が必要です。
また、人間でも「もしも」に備えて保険に加入するように、愛犬の保険加入も検討してみましょう。経済的負担を抑えることで、万が一のときも安心して医療を受けさせてあげられます。
