しかし、アレルギー体質の犬や通院している犬に与えるときは、症状が悪化しないよう注意が必要です。
この記事では、卵に期待できる健康効果から犬に与えるときの注意点まで解説します。
与えても大丈夫!犬は卵を食べられる

卵は、犬が食べてもいい食材のひとつです。
安価な上に、ビタミンCと食物繊維を除いた全ての栄養素が含まれていることから完全栄養食品とも呼ばれ、犬の体に与えるメリットも少なくありません。
しかし、卵を与え過ぎると、内臓に多大な負担をかけてしまいます。
犬に食べさせる際は、おやつやトッピングに留め、肥満や消化不良などの原因に繋がらないように注意しましょう。
卵の白身には有害な成分も!卵は加熱して与える
犬に卵を与えるときは、必ず加熱するようにしましょう。
特に白身部分を生で与えると、お腹を壊したり皮膚炎を発症したりと、犬の体に害を及ぼす原因になりかねません。
また、稀に生卵には「サルモネラ菌」が潜んでいることがあります。
サルモネラ菌は食中毒の元凶といわれ、体内に入ると血液や粘液を含む下痢や発熱、嘔吐などをはじめ、場合によっては敗血症を起こすことがあります。
サルモネラ菌は加熱によって死滅するため、安全に与えるためにも生の卵のまま犬に食べさせるのは避けましょう。
ゆで卵がおすすめ!黄身までしっかり火を通して与える
犬におすすめの与え方は、ゆで卵です。黄身までしっかりと火を通して与えましょう。
また、ゆで卵に、塩やケチャップなど調味料を使った味つけの必要はありません。
これらの調味料は犬にとって塩分過多になり、体調を崩す原因となります。
ゆで卵を食べさせる際は十分に冷まし、喉に詰まらないよう細かく刻んだり、すり潰したりすると良いでしょう。
うっかり卵の殻を食べても大丈夫!ただし細菌には注意
卵の殻ですが、万が一、犬が食べてしまったとしても大きな問題はありません。
カルシウムの塊である殻は、カルシウム補助食品としても優れています。
しかし、卵の殻を過剰に摂取してしまうと、皮膚異常や免疫不全、骨の異常やカルシウム結石に繋がる恐れがあります。
特にドッグフードなどの総合栄養食を与えている場合、1日に必要なカルシウム量は補えているため、あえて殻を与える必要はないでしょう。
また、殻の表面には、サルモネラ菌や次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌消毒剤が付着している可能性があるため、万が一与える場合であっても加熱処理を忘れずに行いましょう。
参照元|ペット栄養学会誌 イヌ・ネコのライフステージと栄養
参照元|ペット栄養学会誌 泌尿科疾患の栄養管理
犬に卵を与えるメリット|卵に含まれる栄養素

豊富な栄養素が含まれている卵ですが、犬に与えた場合、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここからは、犬に卵を与えるメリットについて解説します。
たんぱく質
卵には、タンパク質が豊富に含まれています。
・臓器、皮膚や骨の状態を整える
・筋肉の成長をサポートする
たんぱく質は三大栄養素の1つであり、筋肉や臓器、皮膚や骨など体作りに関わる主要な栄養素です。
特に動物性タンパク質は、犬にとって消化しやすい成分であるため、積極的に取り入れることをおすすめします。
不足すると皮膚病や内臓疾患などに繋がることも
体内のたんぱく質が不足すると、筋肉量や免疫力の低下から体の内部機能が弱まり、皮膚病や内臓疾患などを発症しやすくなります。
特に成長期の子犬の場合、骨格や筋肉などあらゆる体の機能の発育不全が起こるとされており、たんぱく質は人間と同じく、犬にとっても欠かせない栄養素といえるでしょう。
たんぱく質を摂取する場合は、卵のほかに犬用のチーズや魚類などもおすすめです。
脂質
卵には、脂質も含まれています。
・体のエネルギーになる
・必須脂肪酸の供給源となる
・脂溶性ビタミンを吸収する
脂質も三大栄養素の1つです。主な役割はエネルギー源であり、たんぱく質や糖質よりも消化しやすいため、優先的にエネルギーとして使われるという特徴があります。
また、脂溶性ビタミンの吸収などにも関与し、食欲増進の細胞膜の成分やホルモンの原料としての役割にも期待できます。
不足すると皮膚トラブルや毛艶の悪化などに繋がることも
体内の脂質が不足した場合、乾燥・痒みといった皮膚トラブルや毛艶の悪化を招く恐れがあります。
また、神経や筋肉、細胞などの組織生成力や免疫力も低下します。
一方で、体のエネルギー源になるからといって、過剰に摂取し続ければ、肥満をはじめ高脂血症や膵炎などの原因になりかねません。不足はもちろん、過剰摂取にも注意が必要です。
脂質を摂取する場合は、卵の他にも「魚類」や「肉類」などもおすすめです。

ビオチン(ビタミン類)
卵を与えることで、ビオチンも摂取できます。ビオチンはビタミンB群の1つで、水溶性ビタミンです。
・脱毛を防ぐ
・皮膚や被毛などを保護する
ビオチンは細胞の再生を助けて皮膚や被毛などの健康を保ったり、脱毛を防いだりすることから「皮膚のビタミン」と呼ばれることもあります。また、酵素の働きを助け、皮膚炎を予防する効果も期待できます。
不足すると皮膚疾患や食欲不振などに繋がることも
ビオチンは犬の腸内でも作られます。
しかし、腸内環境が安定しなかったり、抗生物質を長期間服用したりする犬の場合、腸内細菌の働きが弱くなるために体内のビオチンが不足する可能性があります。
ビオチンが体内で不足すれば、皮膚疾患や食欲不振などを誘発しかねません。
ビオチンは、卵の他にレバーやピーナッツなどからも補うことが可能です。
参照元|ペット栄養学会誌 栄養素からイヌネコのサプリメントを考える
ミネラル
卵には、ミネラルも豊富に含まれています。
・筋肉や神経の興奮伝達に関与する
・骨や歯など体の機能を形成、維持する
・細胞の働きを円滑にする
ミネラルにはたくさんの種類がありますが、どの成分も犬の体の機能に必要不可欠な栄養素です。
特に卵にはカルシウムやリンだけでなく、ミネラルの1種である「セレン」が豊富に含まれています。
セレンは強い抗酸化作用によって、細胞のサビつきを抑え、免疫力を高める効果が期待されています。
不足すると発育の遅れや骨粗鬆症などに繋がることも
ミネラルが不足すると、体のさまざまな不調に繋がります。
たとえばカルシウムが不足すると骨粗鬆症、カリウムが不足すれば発育の遅れや反射機能の障害などの症状を引き起こしかねません。
また、成長期にカルシウムなどが不足した場合、骨や関節が変形する「くる症(骨軟化症)」を発症するケースが報告されています。
ミネラル不足が気になる場合、卵のほかにはカルシウムであれば犬用のチーズ、カリウムならブロッコリーや鶏肉などでも補えます。

参照元|ペット栄養学会誌 ミネラルの役割と要求量
犬に卵を与えるときの注意点

豊富な栄養素を含む卵も、与え方によっては犬の健康に良くない影響を及ぼす恐れがあります。
ここでは、犬に卵を与えるときの注意点について解説します。
1日あたりの適量は体重5kgに対して約28gまで
卵を犬に与えるときは、「1日あたりの適量」を守りましょう。
卵は多くの栄養素が含まれている分、カロリーの高い食材です。
与え過ぎは肥満の原因になりかねません。
そのため、おやつやトッピングとして与える場合、1日あたり必要なカロリーの10%ほどに留めることが推奨されています。
体重5kgで避妊・去勢手術済みの健康な犬の場合、1日あたりの適量は約28gとなります。
犬の体格やライフスタイルなどによって多少異なりますが、犬に与える際には上記の量を目安に与えるようにしましょう。
欲しがるからといって、犬が求めるまま与えると体調を崩す原因に繋がります。犬の健康を守るために、飼い主がうまく調整してあげてください。
参照元|ペット栄養学会誌 犬・猫のエネルギー要求量
有害な物質が含まれているため生のまま与えるのは避ける
先述した通り、犬に生の卵を与えるのは避けましょう。
卵白に含まれる「アビジン」には、犬の皮膚や被毛を健康に保つために必要不可欠な「ビオチン」の吸収を妨げる作用があります。卵白を与え続けてビオチンがうまく吸収されない状態が続けば、皮膚トラブルや脱毛などを発症しかねません。
なお、卵白に含まれるアビジンもサルモネラ菌も加熱することで破壊・死滅します。
少量食べたぐらいではビオチン欠乏症を起こす可能性は高くありませんが、より安心して与えるためにしっかり卵に火を通すことをおすすめします。
初めて与えるときには体調の異変やアレルギー発症に注意する
犬に卵を与える際は、体調の異変やアレルギーの発症に注意が必要です。
鶏肉に対して食物アレルギーを持つ犬の場合、稀に卵を食べてアレルギー反応を起こしてしまう可能性があります。
食物アレルギーを持っている場合に備えて、初めて与えるときは少量ずつ食べさせて体調の様子を観察してください。
卵を食べた後、下痢や嘔吐などの体調不良がみられた場合には、即座に与えるのを中止して、動物病院を受診しましょう。
また、皮膚の痒みや気力の低下などの異変がみられた場合、アレルギーを発症している可能性があります。現れた症状は詳細にまとめておき、獣医へ正確に伝えましょう。
病気で通院している犬は与える前に獣医に確認する
持病があり通院している犬は、卵を与える前に必ずかかりつけの獣医に相談しましょう。
特に腎臓に慢性的な疾患がある場合、リンやタンパク質の制限など食事療法が推奨されることも多いため、与え方には注意が必要です。
通院中はその病気にあった食生活が必要になるので、自己判断せずに獣医の指示を仰ぐようにしてください。
参照元|日本獣医腎泌尿器学会 「犬と猫の慢性腎臓病の治療」
卵を加工した食品は与えないように注意する

人間にとって美味しい卵の加工食品も、犬にとっては害となる場合があります。
ここからは、犬に食べさせえてはいけない卵の加工食品について紹介します。
タルタルソース
タルタルソースは犬の健康を害する恐れがあるので、与えるのは控えましょう。
マヨネーズには油分が多く含まれており、過度な油分の摂取は内臓に負担をかけるリスクが高まってしまいます。
また、市販のタルタルソースにはタマネギが含まれていることも多く、犬が食べると中毒症状を引き起こす危険があります。
味付き玉子や煮玉子
味付き玉子や煮玉子も、犬に与えるのは控えましょう。
味が濃く、塩分の高い食品は犬の肝臓や腎臓などに負担をかけてしまいます。
体調不良の原因にも繋がりかねないため、油や調味料がたっぷり使われている加工食品は少量であっても与えない方が良いでしょう。
卵焼きやスクランブルエッグ
市販の卵焼きやスクランブルエッグは調理の際に多くの油を使用している危険があるため、犬の健康面から与えることはおすすめしません。
人間にとっては少量でも、犬にとっては過剰摂取になる場合があります。
また、加熱前に生の状態で卵白と卵黄をかき混ぜてしまうと、アビジンとビオチンが結合され加熱後も切り離せず、思わぬ体調不良を招くリスクがあります。
卵を食べさせて体調不良やアレルギー症状がみられたときの対処方法

卵を食べて犬の体調に異変がみられた場合、飼い主はパニックにならず落ち着いて対処する必要があります。
ここからは、卵がきっかけの可能性がある体調不良がみられた場合の対処方法について解説します。
速やかにかかりつけの動物病院で検査を行う
卵を食べた後に下痢や嘔吐の症状がみられた場合、卵を与えるのを中止して速やかにかかりつけの獣医に相談しましょう。
また、体中を痒がったり、目が充血している場合にはアレルギー症状の可能性があります。
食物アレルギーは、過去にアレルギーの症状が出たことがない犬も発症し得るため、注意して様子を観察しておきましょう。
緊急時には救急対応している動物病院へ
休日や夜間などに犬が体調を崩してしまった場合、救急対応している動物病院に連絡しましょう。
電話で犬の異変状態と診察を受けたい意思を伝え、病院のスタッフの指示に従ってください。
このとき、日頃から犬の体重や服用中の薬などを記録したノートなどを作っておくと、獣医が犬の状態を把握しやすく、処置がスムーズになることがあります。
また、発作など動きに異変がある場合は動画を撮影しておくと良いでしょう。
いざというときに落ち着いて対応できるよう、普段から救急対応している動物病院の電話番号と住所を確認しておくことをおすすめします。
急な体調不良に備えてペット保険の加入もおすすめ

愛犬の急な体調不良や怪我によって動物病院を受診した場合、経済的に不安のある方も少なくありません。
いざというときの費用負担を抑える手段の1つとして、ペット保険が挙げられます。
ここからは、ペット保険のメリットについて紹介します。
異変を感じたときにすぐ受診できる
ペット保険に加入することのメリットとして、「異変を感じたときにすぐ受診できる」という点が挙げられます。
獣医療は自由診療であるため、ペットが病気を患ってしまった場合、処置の内容によっては治療費が高額になってしまうこともあります。
治療費が気になるせいで、愛犬に最善の治療を受けさせられないという事態になれば、愛犬が苦しい思いをするだけでなく、飼い主自身も後悔してしまうかもしれません。
そこでペット保険に加入することで、少しでも異変を感じたときにためらわずに動物病院を受診できるでしょう。
さらに、自己負担額を抑えられるため、治療選択の幅を広げられるという点もメリットとして挙げられます。
緊急時の問い合わせに対応してもらえるペット保険も
ペットの長寿化に伴って病気やケガのリスクが高まるなか、緊急時の問い合わせに対応してもらえるペット保険もあります。
食べ過ぎによる消化不良や誤飲、階段から落ちたことによるケガなど、今は健康でも犬の病気やケガはいつどこで起こるかわかりません。
ペット保険へ加入しておけば、思いがけない事態が起こったときも安心です。
いざというときに大切な家族であるペットを守れるか不安と感じる人は、手段の1つとしてペット保険への加入検討をおすすめします。
以下の記事では、犬が加入できるペット保険の特徴を比較しています。合わせてご覧ください。

まとめ
卵は栄養価が高く、犬の健康づくりに非常に魅力的な食材です。与える際はしっかり加熱し、消化しやすいよう細かく刻んであげましょう。
しかし、なかには卵アレルギーを持つ犬もいるため、与え方には十分注意してください。
愛犬に健康的な食事を提供するために、しっかりとした知識を持って、体重にあった適量を与えるようにしましょう。
