そこで本記事では、とうもろこしをあげるときの適量や、アレルギー発症時の対処法について解説します。
与えても大丈夫!犬はとうもろこしを食べられる
とうもろこしは犬に与えても問題がない食べ物です。豊富な栄養素が含まれており、犬の健康維持にとってもメリットの多い食品のひとつです。
まず、とうもろこしを与えるときのポイントについて紹介します。
茹でたり蒸したりしてやわらかくして与える
とうもろこしを犬に食べさせるときには、生のままではなく、茹でたり蒸したりすることで加熱してから与えるようにしましょう。生のとうもろこしは消化がされにくく、犬の胃腸に負担をかけてしまう可能性があります。また、さらに消化しやすくなるため、また、加熱した後にすりつぶしたりミキサーにかけたりするなどして与えるのもおすすめです。
皮を散り除くとさらに良いでしょう。
犬はとうもろこしの芯を消化できないため与えない
とうもろこしの芯は、絶対に与えないよう注意が必要です。犬でも噛み砕けないほど固い芯は犬の体で消化することができず、腸閉塞を引き起こしてしまうリスクが非常に高いです。また噛めずにそのまま飲み込んでしまうと、気道を塞いで呼吸困難になってしまう可能性もあります。
トウモロコシの芯は催吐処置が無効なケースが多く、胃内にあったとしても内視鏡で取り出せずに開腹手術になることがほとんどです。
手遅れになると命にかかわる場合もあるため、必ず芯から実を取り除いて与えるようにしましょう。
犬にとうもろこしを与えるメリット|とうもろこしに含まれる栄養素
とうもろこしにはさまざまな栄養が含まれていますが、人間と同様に犬の体にとってもメリットの多い食べ物です。
ここからは、とうもろこしに含まれる主な栄養素が、それぞれどのように作用するかについて解説します。
葉酸
とうもろこしにはビタミンが豊富に含まれており、その中でも特にビタミンB9の葉酸の摂取が期待できます。
葉酸が、胎児の神経組織の発達に関わるのは有名ですが、それ以外にも細胞分裂や赤血球の産生に関係し、別名「造血のビタミン」ともいわれています。
水溶性ビタミンの一種である葉酸は、水に流れ出やすい栄養素であるため、とうもろこしを加熱する際には、茹でるよりも蒸したほうが効率よく摂取させることができるでしょう。
不足すると食欲減退や妊娠中は子犬に悪影響も
葉酸は、妊娠中に胎児が成長するために多く必要とされるために、摂取量が不足してしまうと、生まれてくる子犬の成長に影響を与えてしまう可能性があります。胎児の健康については、遺伝によるものなど葉酸以外のさまざまな要因が関わるため、必ずしも葉酸が原因のすべてではありませんが、摂取が推奨されています。
また、胃腸の細胞は葉酸の欠乏による影響を受けやすいため、食欲の減退がみられることもあります。
とうもろこし以外には、ほうれん草やブロッコリー、キャベツなどにも多く含まれているため、犬の体に合う食べ物で補ってあげるのも良いでしょう。



ミネラル
とうもろこしには、カルシウムやマグネシウム、カリウムなどのミネラルも多く含まれています。主な働きは以下の通りです。
カルシウム | 骨や歯の形成 |
---|---|
マグネシウム | 炭水化物や脂質の代謝に関わる |
カリウム | 細胞を正常に保ち、神経や筋肉の働きに関わる |
リン | 心臓や腎臓の働きを正常に整える |
鉄分 | 体内に酸素を運搬、必要なエネルギーの供給 |
ミネラルは相互に作用し合うことで、犬の健康維持において重要な役割を担っています。
またそれぞれの働きによって、別のビタミンなどが不足してしまうこともあるため、バランス良く摂取することが大切です。
不足すると食欲不振や脱水症状を起こしやすくなる
ミネラルが不足すると、食欲不振や体重減少、骨や皮膚のトラブルなどさまざまな症状を引き起こしてしまいます。一方で、過剰に摂取をしてしまうと骨の形成不全や尿路結石症などの発症にもつながってしまいます。
先述した通り、相互に作用し合うミネラルはバランス良く摂取することが大切になります。
食物繊維
とうもろこしには食物繊維も多く含まれています。犬の腸内環境を整えてくれるため、便秘の改善などにも寄与するでしょう。
また、糖質やコレステロールの吸収を抑制する働きもあるため、肥満の犬の減量などにも活用できます。
食物繊維は、とうもろこしだけでなくじゃがいもにも豊富に含まれている栄養素です。

不溶性食物繊維のセルロースが含まれているため与え方に注意
食物繊維を摂ることで腸内の環境が整えられるのは、水に溶けにくい不溶性食物繊維が便の量を増やすためです。一方でこの不溶性食物繊維は、犬が消化しにくいという特徴も持ち合わせています。
特にとうもろこしの黄色い皮にも含まれているセルロースは、多量に与えてしまうことで犬の胃腸に負担をかけてしまうこともあるため、必ず適量を守りながら与えることが重要です。
犬にとうもろこしを与えるときの注意点
多くの栄養素が含まれており、犬の体にとってもメリットの多いとうもろこしですが、適切な量をはじめ、与え方には注意が必要です。
健康のために与えたはずが、かえって体調不良を招いてしまうことのないよう、注意するべきポイントについて解説します。
適量は体重5kgに対しておよそ30gから40g程度まで
前提として、犬に与えるおやつは1日あたりに必要なエネルギーの10%以内が適量とされています。体重5kgの犬の場合、1日に必要となるカロリーはおよそ350kcal程度です。
このうち、10%の35kcalがおやつ、フードなどの主食が315kcal*となります。
調理方法や品種にもよりますが、とうもろこしのカロリーは100gあたり99kcal**であるため、およそ30gから40g程度までが1日あたりの適量と考えられます。
ただし、適量には個体差があり、必ずしも体重に比例して適量が増えていくわけではないため、少量ずつを様子を見ながら与えるようにしましょう。
*4歳、避妊去勢手術済み、理想体重5㎏、350Kcal/100gのフードを食べていると想定しての計算
**参照元| 厚生労働省 食品データベース
味付けはしないで与える
とうもろこしを与える時には、味付けをしてはいけません。バターや塩などで味付けをしてしまうと、犬にとっては脂質や塩分の過剰摂取になってしまいます。
茹でて加熱処理をするときにも、塩を入れないよう注意しましょう。
初めて与えるときにはアレルギーの発症に注意する
とうもろこしを初めて与える際には、アレルギーの発症に注意しましょう。
万が一、下痢や嘔吐をはじめ体を痒がる様子などがみられた場合には、即座に与えるのを中止してください。
先述した通り、適量の範囲内で様子を見ながら少量ずつ与えることが大切です。
病気で通院している犬は与える前に獣医に確認する
持病があって通院や服薬をしている犬の場合は、とうもろこしを与える前に必ず獣医へ確認をしましょう。とうもろこしに含まれる成分が、治療に思わぬ影響を与えてしまう可能性があります。
また、体調不良時には消化機能が弱っていることもあるかもしれないため、とうもろこしを与えるのは避けた方が良いでしょう。健康状態が良いときに与えることをおすすめします。
とうもろこしを加工した食品は与えないように注意する
とうもろこしは、さまざまな食品に加工され多くの人から楽しまれていますが、人間用に加工された食品は犬に与えることはできません。
ここからは、代表的なとうもろこしの加工食品と、与えてはいけない理由ついて解説します。
缶詰
とうもろこしは缶詰で販売されているものも少なくありません。コーン缶がとうもろこしのみで作られているものであれば与えても問題ありませんが、塩や砂糖、保存料などの添加物などが含まれ加工されているものが多いため、犬にとっては好ましくありません。
基本的には与えられないと考えておいて良いでしょう。
コーンスープ・コーンポタージュ
コーンスープやコーンポタージュも、塩や砂糖のほか、犬にとって有害な玉ねぎのエキスが調味料として使われていることがあります。
犬の健康にとっては、リスクが高いため与えないことをおすすめします。
ポップコーン
ポップコーンは、ノンオイルの無塩、そのほかバターなどの調味料を不使用のものであれば食べさせても問題がありません。
とうもろこしと大きな違いはなく、健康面へのメリットもあるでしょう。
しかし、人間用につくられたポップコーンは、味付けがされているものが多いため与えてはいけません。自作する場合、弾けていないコーンは消化がしにくいため、こちらも与えないよう注意しましょう。
ペットショップなどで市販されている、犬用のポップコーンを与えるのが良いかもしれません。
コーンスターチ
ドッグフードの原料として使われることもあるコーンスターチは、とうもろこしから作られるでんぷんで、犬に与えても問題がない食材のひとつです。
反対に、とうもろこしにアレルギー症状が出たり、食べさせることで体調不良がみられる場合には、原材料にコーンスターチが使用されているドッグフードは与えない方が良いでしょう。
コーン茶
とうもろこしを原料としてつくられたお茶の「コーン茶」や、とうもろこしのひげを原料として作られた「とうもろこしのひげ茶」は、犬に飲ませても問題がありません。
犬に与えてしまうと痙攣を起こしてしまったり、興奮状態にしてしまったりする可能性のあるカフェインや、鉄分の吸収を阻害して貧血状態を招いてしまうこともあるタンニンが含まれているお茶は、本来与えてはいけないものです。
一方で、とうもろこしを原料としているお茶には、カフェインやタンニンが含まれていないだけでなく、とうもろこし由来の鉄分や食物繊維が作用して、皮膚の状態や便秘を改善する効果があるとされています。
とうもろこしにアレルギーがない場合には、水分補給の手段として積極的に与えても良い飲料だといえるでしょう。
とうもろこしを食べさせてアレルギー症状がみられたときの対処方法
食べさせたものが、きっかけとして考えられる体調不良があらわれたときには、早急な対処が必要となります。
ここからは、とうもろこしを食べさせた際に下痢や嘔吐、痒みや皮膚の発疹などの症状がみられたときの対処法について紹介します。
速やかにかかりつけの動物病院で検査を行う
とうもろこしに限らず、与えた食べ物をきっかけにした体調不良がみられた場合には、早急に動物病院を受診してください。一般的に、アレルギーでみられる症状は以下の通りです。
・下痢や嘔吐
・口や体を痒がる
・フケや抜け毛
・排便の回数が増える
・足の裏や指の間をなめる
対処するタイミングが早ければ、吐き出せることで症状を軽減できる場合もありますが、素人が行うとかえって体調を悪化させてしまうこともあるため、必ず動物病院で処置してもらうようにしてください。
また食べさせた量や時間などをきちんと伝えることで、より適切な処置をしてもらえるため、あらかじめメモに取っておくなどしておきましょう。
緊急時には救急対応している動物病院へ
食べ物のアレルギー症状は、数日経ってから発症することも少なくないため、急な体調不良がみられる可能性があります。万が一、夜間や休日などに体調が悪化してしまった場合には、救急対応をしている動物病院を受診しましょう。
万が一のときに慌てないためにも、あらかじめ近隣の救急対応をしている動物病院を調べておくのもおすすめです。
急な体調不良に備えてペット保険の加入もおすすめ
愛犬が急に体調を崩してしまい、救急病院の受診が必要になってしまったときや緊急で手術が必要になってしまったときには、日常的な通院と比較しても、診療費が高額化しやすい傾向にあります。
そこで、将来的にいつ起こるかわからない事態に備えるための方法の1つとして、ペット保険へ加入する人が多くなっています。毎月の保険料負担は発生してしまうものの、ペット保険には多くのメリットがあります。
異変を感じたときにすぐ受診できる
愛犬の体調に違和感があった際、治療費に懸念があるために、しばらく様子を見てから動物病院を受診するか決めるという人も少なくありませんが、ペット保険の活用によって治療費の負担が抑えられれば、動物病院へ連れて行きやすくなり、すぐに受診できるようになるでしょう。
目に見えず気づけないうちに病気が進行してしまうケースも少なくない中、このように愛犬の病気の早期発見・早期治療ができることは、ペット保険に加入する大きなメリットだといえるでしょう。
緊急時の問い合わせに対応してもらえるペット保険も
通院や入院、手術にかかる費用が補償を受けられるほかにも、ペット保険を提供する各社は、さまざまな付帯サービスを設けています。
そのうちの1つとして、獣医師への相談サービスを提供している会社もあります。愛犬の体調で気になることがあった時や、動物病院を受診したほうが良いか迷った時、問い合わせをすることで獣医師が適切な対処について案内をしてくれるため、ペットを飼っていくうえで心強い味方になるでしょう。
下記記事では、犬のペット保険について具体的な補償内容などを比較しています。

ペット保険には加入が必要なケースと不要なケースがある
毎月保険料を負担して加入するよりも、貯蓄の方が良いと考える人も多いでしょう。
実は、ペット保険には加入したほうが良いケースと、貯蓄でまかなえるケースとがあります。
下記記事では、現役の獣医師の視点から、ペット保険に加入したほうがいいケースや、貯蓄とペット保険のどちらがおすすめかについて解説しています。合わせてご覧ください。

獣医師からみた犬ととうもろこしの関係
トウモロコシは甘みがあり好む犬が多い食材です。
葉酸やミネラル、食物繊維が多く含まれ、嗜好性だけではなく栄養面でも優れた野菜です。
実の周りについている皮は消化が悪いのでできるだけ取り除いた状態で与えるほうが良いでしょう。
また、芯は消化できないうえに丸のみにしてしまい手術が必要になることがありますので、犬の手の届くところに絶対に放置しないでください。
最近は植物性たんぱく質に対するアレルギーも増えてきていますので、初めて与える場合は少量にして、痒みや発赤、下痢や嘔吐が起こらないかよく観察してください。
トウモロコシを食べた後に体調不良が起きた際には、動物病院で診察を受けてください。
治療費が高額になることも考えられますので、保険加入しておくと安心して治療を受けさせることができます。
健康なうちに保険加入を検討しておきましょう。
まとめ
とうもろこしには、さまざまな栄養素が含まれており、犬の体にとってもメリットの多い野菜のひとつです。しかし、与え方によっては犬の健康に悪影響を及ぼしてしまう可能性もあるため、加熱してから適量を与えるなどの基本的な食べさせ方は守りましょう。
食べ物を通じての体調不良は、いつ起こるかわかりません。
将来的な治療費への備えのひとつとして、ペット保険への加入を検討してみるのも良いでしょう。
