一般的に、犬にりんごを食べさせても問題ありません。
しかし、腎臓が弱っている犬やバラ科のアレルギーを持つ犬には注意が必要です。
この記事では、りんごが犬にもたらす健康効果から与えるときの注意点について解説します。
与えても大丈夫!犬はりんごを食べられる
りんごは、犬が食べていい食材の1つです。
1年中購入できる上に、血圧の安定や腸内環境の改善など犬の体に多くのメリットがあります。
だからといって、りんごの過剰摂取は下痢など犬の体調を崩す原因になりかねません。
りんごはおやつやトッピング程度として、適量を超えて食べさせないよう注意しましょう。
りんごで犬に与えて良いのは皮と実だけ
りんごは生のまま犬が食べられる食材ですが、種や芯には有毒成分が含まれているため、皮と実だけを与えましょう。
犬がりんごを丸ごと食べてしまうと、喉に詰まってしまう恐れもあるため危険です。
一方、りんごの皮には栄養素も多く、リンゴポリフェノールなどが含まれています。
皮には農薬などが付着していることもあるため、十分に洗ったうえで小さくカットしたり、もしくはすりおろしたりして犬に食べさせると良いでしょう。
犬にりんごを与えるメリット|りんごに含まれる栄養素
「1日1個のりんごで医者いらず」ともいわれるほど栄養価が高いりんごですが、犬に与える場合どのようなメリットがあるのでしょうか。
ここからは、犬にりんごが与えるメリットについて紹介します。
カリウム
りんごには、カリウムが豊富に含まれています。
- 血圧を安定させる
- 健全な筋肉の収縮を維持する
カリウムは、細胞内に非常に多く存在するミネラルで、犬が健康を維持するのに欠かせない栄養素です。
主に体の余分な塩分を排出し、ナトリウムとのバランスを調整し、血圧を安定させる働きがあります。
不足すると反射機能の低下や筋肉の衰弱に繋がることも
体内のカリウムが不足した場合に障害を受けやすいのは、消化管や筋肉、腎臓や心臓系です。
大量のカリウムが失われて低カリウム血症を引き起こすと、反射神経の低下や嘔吐、筋肉の衰弱や高血圧などさまざまな症状に繋がります。
ただし、カリウムは過剰摂取することで、犬の腎臓に負担をかけてしまうこともあるため、摂取量には注意してください。
りんご以外に、肉類やかぼちゃなどからもカリウムを摂取することができます。
参照元:ペット栄養学会誌|ミネラルの役割と要求量

ペクチン(食物繊維)
りんごには、ペクチンも含まれています。
- 腸内環境の改善
- 下痢の改善
- 血中コレステロールの排出
食物繊維は三大栄養素の1つであり、なかでもペクチンは水に溶けるとゼリー状になる水溶性食物繊維です。
主な役割は腸内環境の改善ですが、水溶性食物繊維であるペクチンは過剰な水分を吸収することで下痢を改善させたり、血中コレステロールを低下させたりする効果も期待できます。
不足すると便秘や消化不良に繋がることも
体内に食物繊維が不足した場合、便秘や消化不良などに繋がる恐れがあります。
一方、過剰に水溶性食物繊維を摂取し続けた場合は、腸内の水分量の増加と酸性化が進むため、かえって下痢を誘発しかねません。
不足はもちろんのこと、過剰摂取も犬の腸に負担をかける原因になるため、バランスを意識して与えることが大切です。
りんごのほかに、いちごやじゃがいもなどからも食物繊維を摂取することができます。
参照元:厚生労働省|食物繊維
参照元:食品分析開発センターSUNATEC|ペクチンによる腸絨毛伸長作用


ポリフェノール
りんごを食べることで、複数のポリフェノールも摂取できます。
- アンチエイジング
- 生活習慣病の予防
ポリフェノールは高い抗酸化力を持つため、血行の改善など老化速度の緩和や生活習慣病の予防などが期待できます。特にリンゴポリフェノールの主成分である「プロシアニジン」は血糖値の上昇の抑制や脂質代謝の改善の働きもあるため、肥満の軽減などにも活用できるでしょう。
不足すると老化が早まってしまうことも
抗酸化物質が体内で不足すると、体内に活性酸素が増加してしまい、動脈硬化や白内障など多くの老化関連疾患を進行・悪化させる恐れがあります。
つまり、老化が早まってしまうのです。
りんごのほかに、黒豆にもポリフェノール(プロシアニジン)が豊富に含まれています。
参照元:日本食品科学工学会誌|リンゴポリフェノールの健康機能性とその活用


犬にりんごを与えるときの注意点
栄養満点のりんごですが、間違った与え方をすると犬の健康に悪影響を及ぼすこともあるため、注意が必要です。
犬に安心してりんごを食べさせるために、注意すべきポイントについて解説します。
1日あたりの適量は体重5kgに対してりんご1/4個
犬にりんごを食べさせる場合、「1日あたりの適量」をきちんと守りましょう。
前提として、おやつやトッピングとして1日あたりに必要なカロリーの10%ほどを与えることが推奨されています。
りんごは栄養価が高い一方で、食べすぎは肥満や糖尿病などの原因になりかねません。
5kgの健康な犬(避妊・去勢済み)・・・りんご1/4個ほど
体重5kgの健康な犬に食べさせる場合、1日に必要となるのは約370kcalであるため、適量はりんご1/4個ほどです。
犬の年齢や状態によって必要な栄養量や割合は異なるため、少量ずつ食べさせましょう。
参照元:文部科学省|食品成分データベース
有害物質のアミグダリンが含まれる種子や芯は与えない
犬に、りんごの種や芯は食べさせないようにしましょう。
種や芯には、アミグダリンという成分が含まれています。これらを犬が摂取すると腸内で毒性のあるシアン化水素に変わり、下痢や嘔吐などの中毒症状を引き起こしかねません。
犬が少量食べたぐらいで発症する可能性は高くないものの、万が一を考慮して種や芯を食べさせないことが大切です。
参照元:日本食品分析センター|シアン化合物について
初めて与えるときには体調の異変やアレルギー発症に注意する
りんごを初めて食べさせるときは、体調の異変やアレルギーの発症に注意しましょう。りんごには多く食物繊維が含まれるため、軟便や下痢になってしまう恐れがあります。
特にアレルギーを持っている犬には慎重に食べさせてください。過去にいちごや梨、桃などを食べてアレルギーが出た場合はバラ科アレルギーを持つ可能性が高いため、念の為食べさせないことをおすすめします。
犬の様子に異変がみられた場合は、すぐに与えるのを中止し、速やかにかかりつけの動物病院に向かってください。
病気で通院している犬は与える前に獣医に確認する
病気で通院している犬の場合は、りんごを食べさせる前に必ずかかりつけの獣医に相談しましょう。
特に、腎臓病や糖尿病などの持病がある犬の場合、カリウムや糖分などが犬の病状に影響を与える恐れがあります。また、療法食以外のものを与えることで効果が弱まったり、かえって有害になったりすることもあります。
犬が欲しがるからと勝手に食べさせることはせず、必ず獣医の指示に従うようにしてください。
参照元:国立循環器センター|食事療法について
りんごを加工した食品は与えないように注意する
りんごはさまざまな加工品でも楽しめる果物ですが、食品によっては犬が食べると体調不良を引き起こす場合があります。
ここからは、犬に食べさせないように注意する食品について、その理由とともに紹介します。
りんごゼリー
りんごゼリーは犬の健康を害する恐れがあるので、食べさせるのは控えましょう。
人間にとっては甘くて美味しい食品も、犬にとっては糖分の過剰摂取による肥満のリスクが高まります。
特に、甘味料としてキシリトールが使われているゼリーを与えるのは危険です。
犬がキシリトールを摂取すると、インスリンの分泌が急増して低血糖になったり、肝臓に障害をきたしたりと中毒症状を招く恐れがあります。
参照元:ペット栄養学会誌|犬のキシリトール中毒
りんごジュースやリンゴ酢
市販のりんごジュースは糖分が多く含まれていることが多いため、犬に飲ませないようにしましょう。
りんご100%ジュースであっても、食品添加物や香料が含まれている場合があります。どうしてもジュースで与えたい場合は、砂糖を使わずに手作りするのが安心です。
また、リンゴ酢を犬に飲ませることもあまりおすすめしません。
人間が飲みやすいよう砂糖やブドウ糖など糖質を添加しているものも多く、酢の刺激臭を得意とする犬も少ないことから、積極的に与える必要はないでしょう。
アップルパイ
アップルパイには大量に砂糖やバターが使われています。犬がアップルパイを食べれば、過剰な糖分摂取に繋がり、肥満や糖尿病のリスクが高まってしまいます。
また、パイによっては洋酒やレーズンなど犬にとって悪い影響を及ぼす食材が含まれているため、少量でも食べさせないことをおすすめします。
りんごジャム
りんごジャムは、もともと糖分の多いりんごに大量の砂糖を足して作られています。そのため、犬が食べるとカロリーオーバーを招きやすく、肥満になる危険があります。
肥満は高血圧や糖尿病などさまざまな健康被害のリスクを高めるため、りんごジャムを食べさせるのは避けましょう。
りんごを食べさせて体調不良やアレルギー症状がみられたときの対処方法
りんごを食べさせて体調に異変がみられたとき、落ち着いて対処するためには正しい知識とその方法が必要となります。
ここからは、犬が体調不良やアレルギー反応を示した場合の対処法について紹介します。
速やかにかかりつけの動物病院で検査を行う
りんごを食べたことに起因する犬の体調不良でよくみられるのが、下痢や嘔吐ですが、それに加えて別の症状がみられる場合、アレルギー反応を起こしている可能性があります。
一般的に、食物アレルギーでみられる症状は以下の通りです。
- 下痢
- 嘔吐
- 体中の痒み
- 目の充血
- 肉球や指の間をしきりに舐める
上記のような症状がみられた場合は、速やかにかかりつけの動物病院に向かってください。
緊急時には救急対応している動物病院へ
休日や夜間などに急に体調を崩してしまった場合は、緊急対応している動物病院を受診しましょう。
処置時に慌てないよう、病院に着くまでに「何を・いつ・どのくらいの量を・症状はいつから」といった情報をまとめておくと診察に役立ちます。
アレルギー症状の可能性を考慮して、もし症状が出たときのために、初めて食べさせるときは平日の午前中に試すことをおすすめします。
急な体調不良に備えてペット保険の加入もおすすめ
近年の犬の平均寿命やいつ起こるかわからない事故や病気を考慮して、ペット保険の加入を検討している人も多いのではないでしょうか。
愛犬が体調を崩したとき、いざというときに頼りになるのが「ペット保険」です。
ここからは、ペット保険のメリットについて紹介します。
異変を感じたときにすぐ受診できる
ペット保険の加入には、異変を感じたときにすぐに受診できるというメリットがあります。
加入することで小さな異変に気づいてから動物病院へ行くハードルが下がるため、病気の早期発見に繋がります。
さらに、普段から動物病院に通って体調を管理しておけば、治療の適切なタイミングも見極めやすくなります。
人間同様、ちょっとした異変の放置が命取りになることがあるため、動物病院へ行きやすくなることは愛犬の長生きにも繋がる可能性があるといえるでしょう。
緊急時の問い合わせに対応してもらえるペット保険も
保険会社によっては、緊急時の問い合わせにも対応してもらえるサービスを提供しているものもあります。
万が一のときのために加入するペット保険ですが、いつその事態が起こるのかは誰にもわかりません。病気やケガなど、誰しも起こり得るもしもの時のために安心を得られるという点も加入メリットといえるでしょう。
金銭的負担を気にせず、大切な家族であるペットに最善かつ最適な治療を受けさせてあげたい人は、早めの加入をおすすめします。
下記記事では、ペット保険に加入した方が良いケースを獣医が解説しています。ペット保険を検討する際は参考にしてください。

まとめ
りんごは、甘くて歯ごたえを楽しめるだけでなく、健康面からも犬にとって多くのメリットがあります。
しかし、食べ過ぎは犬の体調に良くない影響を及ぼしかねません。なお、りんごの種や芯には犬にとって有害なアミグダリンという成分が含まれているため、必ず実と皮だけを食べさせてください。
おやつやトッピングとしてうまく取り入れて、愛犬の健康維持に努めてあげましょう。
