本記事では、犬のいびきの原因や疑われる病気、関連する呼吸器疾患の診療費にペット保険で備えるメリットについて解説します。
犬がいびきをかく原因

犬がいびきをかく原因はさまざまで、一時的ないびきであれば問題がないケースがほとんどです。
しかし、症状によっては治療が必要になるため、愛犬のいびきが気になる場合は、その様子や状態を確認しましょう。
まずは、犬がいびきをかく主な原因について解説します。
なんらかの理由で喉や鼻などの気道が狭くなっている
犬が呼吸をする際には、鼻や口から気管を通って肺に空気が運ばれます。
このとき、空気の通り道である気道が狭くなっていることで、空気が通るたびに振動し、それがいびきとして聞こえてしまいます。
普段の呼吸音に変化がなく、軽いいびきをたまにかく程度の場合はそれほど心配する必要はありません。
一方で、いびき以外の症状がみられる場合は、何らかの病気が隠れていることもあるため、様子がおかしいと感じた場合は速やかに動物病院で検査しましょう。
短頭種はいびきをかきやすいといわれている
2つ目に挙げられるのが、犬種の特徴によるものです。
特に短頭種は、体の構造上いびきをかきやすいといわれています。
シーズーやパグなどの短頭種は、鼻のつくりが狭く、睡眠中に気道が狭くなりやすいためにいびきをかきやすいという特徴があります。
短頭種には、主に以下のような犬種が含まれます。
- ブルドッグ
- フレンチ・ブルドッグ
- シーズー
- ボクサー
- パグ
また、短頭種気道症候群という呼吸関連の病気を発症しやすい傾向もあります。
いびきを原因とした病気を発症している場合、早期の発見で愛犬の体への負担が軽くなることもあるため、日頃から愛犬の様子をチェックしましょう。
気管虚脱の症状がいびきに聞こえる
3つ目の原因として、気管虚脱の症状がいびきに聞こえている可能性が挙げられます。
気管虚脱
何らかの理由によって気管が圧迫され、正常に呼吸するのが困難になる状態
気管虚脱を発症すると、ガチョウのような咳がみられるようになります。
これが、いびきのように聞こえている可能性があるため注意が必要です。
気管虚脱の正確な原因は明らかになっていませんが、肥満や老化による発症事例も多いです。
また、一般的にチワワやトイプードルなどの、「トイ」と呼ばれる犬種に多く認められることから、遺伝的な要素も関連しているといわれています。
鼻詰まり
4つ目の原因として、鼻詰まりが挙げられます。
鼻詰まりになる原因の多くは、鼻腔の炎症やスギ花粉などのアレルギー反応です。
炎症によって気道が狭くなり、空気の通りが悪くなることで、睡眠中にいびきをかいてしまうのです。
また、ケンネルコフや犬ジステンパー感染症などの呼吸器感染症、歯周病の悪化や鼻の腫瘍などが原因で、鼻詰まりを引き起こすこともあります。
鼻詰まりで呼吸が苦しそう、食欲がないなど症状がみられる場合は、早めに獣医師に相談することをおすすめします。
肥満
5つ目の原因として、肥満が挙げられます。
肥満は、それ自体が病気とはいえません。しかし、人間と同じく、犬も肥満であるほどいびきをかきやすい傾向があります。
これは、肥満による喉まわりの脂肪が上部気道を圧迫して、空気の通り道を狭めてしまうからです。
肥満は、いびき以外にもさまざまな病気に繋がりかねません。愛犬のいびきが気になる場合は、食事や運動習慣などを振り返り、愛犬の体型をコントロールしてあげましょう。
いびきをかく犬に疑われる病気

先述した通り犬のいびきは、持病をはじめ、何らかの病気が原因で起こっているケースがあります。
ここからは、いびきをかく犬に疑われる可能性のある病気について解説します。
軟口蓋過長症
犬がいびきをかいている場合、軟口蓋過長症を起こしている可能性があります。
軟口蓋過長症
軟口蓋(俗名・のどちんこ)が通常よりも長いことで空気の通り道である気管を一部塞いでしまい、呼吸がしにくくなる呼吸器系の病気
低い鼻や短く太い首などの身体的構造をもつ短頭種に多くみられることから、先天性疾患である可能性が高いと考えられています。
- フレンチ・ブルドッグ
- パグ
- ボストンテリア
- ペキニーズ
- 狆(ちん)
- イングリッシュブルドッグ
いびきやガーガーという呼吸音が聞こえるのが特徴的な症状で、重症になるとチアノーゼや失神、呼吸困難に陥ることもあります。
なお、上記の犬種以外でも軟口蓋過長症になる可能性はあるため、注意しましょう。
先天性の場合は若齢期から発生することが多く、少しでも呼吸が苦しそうな場合は速やかにかかりつけの獣医師に相談することをおすすめします。
参照元|般社団法人犬・猫の呼吸器臨床研究会 U14 軟口蓋過長症
鼻腔内腫瘍
鼻腔内に腫瘍ができたことで、いびきを生じることがあります。
犬の鼻腔内腫瘍でよくみられる症状は、粘液性の鼻水やくしゃみ、鼻詰まりや鼻血などです。
腫瘍が進行すると顔の腫れや変形、眼球突出や開口呼吸、呼吸困難などがみられ、脳に浸潤した場合はてんかん発作などの神経症状にまで繋がりかねません。
悪性腫瘍である場合も多いため、疑われる場合は速やかに動物病院を受診してください。
参照元|動物臨床医学 犬の鼻腔内腫瘍の診断と治療
短頭種気道症候群
パグやシーズーなど短頭種の場合、短頭種気道症候群を引き起こしていびきをかいているケースも疑われます。
短頭種気道症候群
短頭という顔の作りのために、小さい鼻の穴、長い軟口蓋などによって生じる呼吸障害
パグやフレンチブルドッグ、キャバリア・キングチャールズ・スパニエルなどの短頭種は、短頭種気道症候群を発症しやすいといわれています。
進行性疾患であるため、愛犬に気になる咳や呼吸音がみられた場合は早めに獣医師に相談しましょう。
心臓病
犬の心臓病の中でも特に発症率が高い疾患は、「僧帽弁閉鎖不全症」です。
僧帽弁
左心室と左心房を区切る2枚の弁
僧帽弁がうまく働かなくなることで左心室から左心房への血液が逆流し、全身にスムーズに血液を送り出せなくなります。
その結果、肥大した左心房に気管支が圧迫され、咳が生じます。睡眠中に起これば、いびきのように聞こえる可能性もあるため注意が必要です。
症状が悪化すると、不整脈や肺水腫を伴う失神などの症状があらわれ、治療をしない限り命の危険があります。
急に大きないびきをかくようになった、ゼーゼーという呼吸音が聞こえて苦しそう、などの症状がみられた場合はすぐに医師に相談しましょう。
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎は、花粉やダニなどのアレルギー物質により鼻の内部に炎症が起こる病気です。鼻の粘膜が腫れて鼻の空気の通りが悪くなることで、いびきをかきやすくなります。
他にも、くしゃみや粘り気のない透明な鼻水などの症状が目立ちます。
放置していると症状が悪化する一方であるため、原因を1日でも早く特定するために動物病院でアレルギー検査を受けることをおすすめします。
睡眠時無呼吸症候群
いびきをかく犬の場合、睡眠時無呼吸症候群を患っている可能性もあります。
睡眠時無呼吸症とは、寝ている間に何度も呼吸が止まる病気であり、短頭種気道症候群に関係しているといわれています。
主な症状は大きないびき以外に、無呼吸の時間が生じることや日中の強い眠気、睡眠途中に目を覚ましたときの息切れなどが挙げられます。
頻繁に起こる場合は犬が睡眠不足に陥り、他の健康上の問題を引き起こしかねません。
睡眠無呼吸症候群の疑いで受診する際は、愛犬の睡眠時の様子を動画やメモを残しておくと、獣医師が判断しやすくなるでしょう。
参照元|相模が丘動物病院 犬と猫の睡眠
犬のいびきのうち速やかに動物病院を受診したほうが良い症状

ここまでご紹介した通り、犬のいびきにはさまざまなケースがありますが、以下のような症状がみられる場合は緊急性が高いです。
気になる症状がみられたら、いびきの原因にかかわらず、速やかに動物病院を受診しましょう。
急に大きないびきをかくようになった
犬が急に大きないびきをかくようになった場合、呼吸器系の異常や腫瘍など、呼吸を妨げるような何らかの要因が進行した症状として現れている可能性があります。
進行して呼吸困難などを起こす前に、かかりつけの動物病院を受診してください。
また、いびきの音が大きくなってきた場合も同様に注意が必要です。
愛犬が普段と異なる行動をとった場合は、病気が潜んでいるケースを疑うべきといえるでしょう。
トイプードルなどの犬種でいびきがうるさい場合
トイプードルなどの犬種でいびきがうるさい場合、鼻詰まりをはじめとした呼吸器疾患の発症が疑われます。
そのため、ただのいびきとして放置するのは危険です。
いびきがだんだん大きくなっていく、ガーガーとアヒルのような喉鳴りが聞こえるなどの様子がみられる場合、症状が進行して気道が狭くなっているのかもしれません。
日頃から愛犬のいびきのトーンや大きさなどを観察しておき、異変を感じた場合は速やかに獣医師に相談してください。
睡眠時だけでなく起きている時の呼吸音も大きい
睡眠時だけでなく、起きている時の呼吸音も大きい場合も注意が必要です。
この場合、アレルギー性鼻炎や鼻腔内腫瘍の発生によって喉や気道周辺を圧迫されているなど、何らかの体調不良が考えられます。
起きている時にゼーゼーと呼吸が苦しそうな場合以外に、鼻汁の増加や鼻からの出血、顔の腫れなどの様子がみられた場合も速やかに動物病院を受診してください。
いびきの合間に呼吸が止まっているような様子がみられる
いびきの合間に呼吸が止まっているような様子がみられる場合、睡眠時無呼吸症候群を引き起こしている恐れがあります。
睡眠時無呼吸症候群は短頭種が特にかかりやすく、たとえ短時間でも呼吸が停止することで心臓や脳、血管などに負担をかけてしまいます。
さらに睡眠不足になりやすいため、愛犬の体力低下やストレスにも繋がるでしょう。
重症化する前に、早めにかかりつけの獣医師に相談しましょう。
犬のいびきに関連する呼吸器疾患はペット保険の補償対象となることも

犬のいびきに関わる呼吸器疾患は、ペット保険の補償対象となるケースもあります。
最後に、犬のいびきに関連する呼吸器疾患で急な診療費が求められた場合などに役立つペット保険について解説します。
犬の呼吸器疾患の診療費事例
いびきに関わる犬の病気にかかる診療費は、病気の種類や、具体的な症状の進行具合によってさまざまです。
例えば、軟口蓋過長症では血液検査やレントゲン検査、内視鏡検査などの結果に応じて、軟口蓋の長い部分を切除する外科手術が行われるケースがあり、費用も高額化しやすい傾向にあります。
軟口蓋過長症で来院した場合
- 軟口蓋過張症レーザー手術(4日入院治療含む)……13万円~
参照元|松波動物病院メディカルセンター 手術料金
※上記の診療費等はあくまで一例であり、一般的な平均・水準を示すものではありません
※各診療項目の金額は、動物病院によって異なります
また、軽度の気管虚脱の疑いで実際に来院した場合には、以下のような費用がかかると想定されます。
軽度の気管虚脱で来院した場合
- レントゲン検査(胸部2枚)
- 注射
- 薬
合計金額:13,200円~14,300円
参照元|銀座ペットクリニック 診察・手術料金表
※上記の診療費等はあくまで一例であり、一般的な平均・水準を示すものではありません
※各診療項目の金額は、動物病院によって異なります
もちろん愛犬の気管虚脱の程度によりますが、外科的治療が必要な場合ほど高額になりやすく、状況によっては、検査や手術を含めて、合計で70万円〜80万円*前後の診療費がかかることもあります。
なお、上記の診療費はあくまで一例であり、各項目の内容や金額は動物病院によって異なります。
*参照元|京都動物医療センター 料金
動物病院を受診しやすくなり早期発見・早期治療につなげやすくなる
ペット保険は高額な診療費の一部をカバーしてくれるため、治療の選択肢を減らさずに済むだけでなく、診療費の補償が安心感につながり、気になった時にすぐ動物病院を受診できるようになるメリットがあります。
気軽に通院しやすくなれば、早期発見・早期治療にも繋がり、結果として愛犬の体の負担も軽減させられるでしょう。
いびきが何らかの病気のサインとなっている場合、放置すると症状が進行してさまざまな合併症を引き起こしかねません。
愛犬の異変を感じた際は、医師の診察を早めに受けることが大切です。
補償対象としている疾患は保険会社によって異なるため比較が重要
補償対象としている疾患は、保険会社によって異なります。
愛犬に合ったペット保険を選ぶ際には、気になる保険会社それぞれの資料を請求するなど、商品の内容を比較するようにしましょう。
また、補償の待機期間や保険金の請求方法なども保険会社によって異なるため、確認しておくことが大切です。
加入前に発症した病気については、十分な補償が受けられない可能性が高いため、万が一の備えとしてペット保険の加入を考えている方は、愛犬が若く健康なうちに検討しておくことをおすすめします。
以下の記事ではペット保険各社の具体的な補償内容について解説しています。

犬がいびきをかいてしまっている時の対処法

ちょっとしたいびきであれば基本的に心配ありませんが、愛犬のいびきが気になる時は、以下のような方法で対処すると改善される場合があります。
室内の温度や湿度などを調整する
まずは、温度や湿度を調節して環境を整えてあげましょう。
パグなどの短頭種は生まれつき気道が狭く、熱を逃すのが苦手なため、日本の高温多湿な気候は適した環境とはいえません。
呼吸器の負担を軽減するために、加湿器やエアコンなどを使って快適な環境を保ってあげると改善されることもあるでしょう。
体勢を変えてあげる
犬によっては、寝る姿勢を変えることでいびきが治まることがあります。特に仰向けで寝ている場合、上部気道が狭まるためにいびきが発生しやすくなります。
いびきが気になるときは、呼吸がしやすいよう背中を丸めるような体勢で寝かせたり、毛布やクッションを使ってそっと体勢を変えたりしてあげましょう。
睡眠中に気道が押しつぶされないような体勢にすることで、いびきの発生を抑える効果が期待できます。
肥満の改善
いびきの原因に肥満が疑われる場合には、とにかく愛犬が適正な体重を保てるよう食事や睡眠、運動量など全体の生活習慣を見直してあげましょう。
食事による肥満の改善には、以下のような工夫が効果的です。
- 低カロリーなダイエット用フードに変える
- 理想体重を考えてフード量を計算する
- 水でふやかしてかさ増しをする
急激に食事量を減らすと、かえって健康を損ねることがあるため、獣医師に相談しながら少しずつ食事量を調整していくことをおすすめします。
監修者からのコメント
犬が寝ている時の様子の中でも、
いびきは飼い主が病気に気づきやすい症状のひとつです。
いびきの原因には、犬種に特徴的な短頭種気道症候群や鼻腔内腫瘍、喉頭麻痺といった大きな病気もあり、
進行すると呼吸困難となり命の危険があるため、注意が必要です。
いびきの様子や呼吸の様子に変化があった場合は、なるべく早く動物病院を受診することをお勧めします。
これらの病気を診断するためには、様々な検査が必要になるので検査費が高額になる場合もあります。
また治療についても、長期的な治療や手術などが必要になることもあるため、高額になる可能性があります。
万が一、病気が見つかってしまった時のために、満足のいく治療が受けられるように準備しておくと安心ですね。
愛犬の健康を守るために、保険の加入もぜひ一度お考えください。
まとめ
犬のいびきの原因は、生まれつきや肥満といったものから症状が進行すれば命の危険があるような怖い病気までさまざまです。
そのため、いびきが大きくなる、呼吸がしにくそうなど普段と異なる様子がみられた場合は、速やかに獣医師に相談しましょう。
また、1日も早い原因の特定や診療費の備えの1つとして、ペット保険の活用もおすすめです。
