症例編

【獣医師監修】止まらない犬のくしゃみは病気の可能性も!原因や症状とともに治療費に備えるペット保険を解説

犬のくしゃみにはさまざまな原因があり、特に鼻血やくしゃみが止まらないといった場合は、早めに獣医師の診察を受けることをおすすめします。

本記事では、くしゃみの主な原因や病院に行くべき症状、万が一の高額な治療費に備えるペット保険について解説します。

犬もくしゃみをすることがある

見上げる犬
犬も、くしゃみをすることがあります。人の場合、基本的に鼻腔内の埃や異物を排除しようとしてくしゃみをしますが、犬も同様に鼻に異物が侵入することによってくしゃみをします。

こうしたくしゃみは生理現象であり、その後体調の変化がなければ特に問題ありません。

ただし、くしゃみの原因や回数などによっては病気が疑われるため、注意しましょう。そして、犬ならではのくしゃみもあります。

人間にはない「逆くしゃみ」がみられることもある

犬の場合、人間にはない逆くしゃみをすることがあります。逆くしゃみとは、息を吐き出すくしゃみと真逆で、強く何度も息を吸い込みながら鼻を鳴らす行動のことです。

明確な原因は明らかになっていませんが、喉の奥の方にある鼻咽頭の粘膜に刺激や鼻腔の狭さ、アレルギーなどが関係して生じるものといわれています。

逆くしゃみをしていても危険ではないことがほとんど

逆くしゃみの場合、多くは単発的で、たいてい1〜3分程度続いた後、自然に治ります。

どの犬にも普通にみられますが、とくに鼻が短い犬種や小型犬に起こりやすい症状とされています。

なお、逆くしゃみが長く続く、食欲や元気の低下がみられるなどの場合は、何らかの病気が潜んでいる場合が考えられるため、獣医師の診察を受けるようにしましょう。

犬がくしゃみをする原因

草むらの犬
犬がくしゃみをしている場合、それが自然な体の反応ならば心配ありません。

しかし、一方で鼻がよく効く犬だからこそ、さまざまな原因でくしゃみを発することがあります。ここでは、犬がくしゃみをする主な原因について解説します。

散歩後によくみられる異物による刺激

くしゃみの原因としてまず挙げられるのが、散歩後の異物による刺激です。

草の種や砂、ほこりなど異物が鼻の中に入ると、犬は生理的にくしゃみをします。この場合、異物が排出されれば自然に治まるでしょう。

ただ、あまりにくしゃみの頻度が多い場合、異物が体に残っている、アレルギー反応が起きているなどのケースが考えられます。

様子がおかしいと感じた場合は、速やかに動物病院を受診することをおすすめします。

寒い季節には冷たい空気による刺激でくしゃみをすることも

寒い季節には、冷たい空気による刺激でくしゃみが出ることもあります。鼻から冷たい空気を吸い込んだときに、鼻腔内の急激な温度変化が刺激となって鼻がムズムズしてしまうのです。

犬の単なる生理的な反応であり、一般的に温度差がなくなれば治まります。くしゃみが1回だけ、またはすぐに止まった場合は問題ないでしょう。

強いにおいや煙などによる刺激

2つ目の原因として、強いにおいや煙などによる刺激からくしゃみをしている可能性が挙げられます。

犬は人間に比べて数千倍〜1億倍も嗅覚が優れており、僅かなにおいでも嗅ぎ取ることができるといわれています。そのため、タバコや香水など人間にとってはほんの少しのにおいでも、犬の鼻には刺激となり、くしゃみをしてしまうのです。

特にビーグルやバセット・ハウンドなどセントハウンドと呼ばれる犬種は、犬の中でも嗅覚が優れています。柔軟剤や芳香剤、アロマオイルなど科学的なにおいを発するものの使用には注意してください。

参照元:PLOS ONE|Test of Canine Olfactory Capacity: Comparing Various Dog Breeds and Wolves in a Natural Detection Task

食事後や季節の変わり目ならアレルギー

食事後や季節の変わり目にくしゃみが出るようなら、アレルギーの可能性もあります。同時に、粘り気のない透明な鼻水や皮膚の痒みなどを伴う場合が多いのが特徴です。

代表的な原因としてはハウスダストやスギ、イネやブタクサなどの花粉などが考えられるでしょう。

特に犬のくしゃみが春だけ、夏だけというように季節ごとで頻繁にみられる場合、植物の花粉に反応している可能性があります。

アレルギーの原因はさまざまなものがあるため、原因を特定するために動物病院でアレルギー検査を受けておきましょう。

興奮やストレス

興奮やストレスも、犬がくしゃみをする原因の1つです。犬は興奮した時に、くしゃみをすることで自分を落ち着かせようとします。

この行動をカーミングシグナルといい、くしゃみ以外にも、尻尾を振る、嬉ションするなどの行動があります。

一方で、ストレスを感じたときにも、犬はくしゃみをします。これはストレスを感じることで自律神経が乱れることが原因です。

ストレスの原因が解消されないまま過ごしていると、鼻水や嘔吐、脱毛や食欲不振などのような症状が生じることもあるため、注意しましょう。

犬 鼻水
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病気によってくしゃみをするケースもあるため要注意

考える犬
犬のくしゃみは生理現象の1つですが、発生原因によっては身体の異常や、病気の発症を示しているケースがあります。

ここからは、犬のくしゃみから懸念される病気について解説します。

歯周病

まず懸念される病気としては、歯周病が挙げられます。一般的に3歳以上の犬の約8割が歯周病にかかっているといわれており、特に高齢でくしゃみが多い場合はこの病気が疑われます。

歯周病は、付着した歯石や歯垢中の菌によって起こる炎症をいい、歯肉の腫れや口臭、歯肉間からの化膿液や出血などの症状が特徴です。

黄色い膿の鼻水を伴うくしゃみが出ることもあり、この歯周病をもとに細菌が奥まで進み、血管を通じて他の部位にまで感染しかねません。

くしゃみの他にも口臭がくさい、食が細くなった、食べにくそうなどの様子がみられたら歯周病が疑われます。速やかに動物病院を受診しましょう。

参照元:eMedia Unit RVC|Veterinary Periodontal Disease

犬伝染性気管気管支炎(ケンネルコフ)

犬伝染性気管気管支炎(ケンネルコフ)も、くしゃみを伴うことが多い病気の1つです。感染力が非常に強く、原因となる病原体は以下のようなものがあります。

  • 犬パラインフルエンザウイルス
  • 犬アデノウイルス2型
  • 犬ヘルペスウイルス
  • レオウイルス
  • 気管支敗血症菌
  • マイコプラズマ属菌

これらのウイルスに、1種類から数種類感染することでケンネルコフを発症します。

初期症状が出るまでに数日ほどの潜伏期間があり、くしゃみや短く乾いた咳などの症状が特徴です。悪化すると、食欲不振や肺炎による発熱を起こしかねません。

感染した犬との接触や飛沫によって感染するため、感染した疑いがある場合は部屋を分けて隔離して他の犬との接触を控えましょう。

特に免疫力の弱い子犬が感染すれば重症化しやすい傾向にあるため、早めに獣医師に相談することをおすすめします。

参照元:日本小動物獣医学会誌|国内における犬呼吸器感染症の病原学的調査

慢性特発性鼻炎

慢性特発性鼻炎も、くしゃみを起こす原因として考えられます。

犬の慢性鼻炎の中で特に発症率が高く、慢性的に白くドロッとした鼻汁が出るほか、鼻閉症状やくしゃみ、喉に引っかかったような咳などの症状があるのが特徴です。

一般的に、異物や細菌感染、真菌感染や腫瘍などが確認できない場合に診断されます。

慢性特発性鼻炎そのものは命を脅かすものではないものの、早期に対処しなければ、鼻詰まりが悪化して睡眠や呼吸に影響しかねません。また、鼻汁は気管支内に吸引されるために誤嚥性肺炎のリスクもあります。

関連して症状が生じるリスクを防ぐため、早めに動物病院に向かいましょう。

参照元:infoVets |上気道閉塞性疾患

鼻腔内の炎症

慢性特発性鼻炎以外に、ウイルスや細菌、真菌などの感染もくしゃみの原因の1つです。

症状はくしゃみや鼻汁が一般的ですが、悪化して鼻腔に鼻汁が詰まった場合、呼吸がしにくいため開口呼吸するケースもみられます。

普段より鼻汁が多かったり、膿性の鼻汁をみかけたりした場合は何らかの菌やウイルスに感染しているかもしれません。

適切な時期・回数のワクチンを受けることで感染を予防できるものもあるため、獣医師に相談して、定期的な抗体検査やワクチンの接種をおすすめします。

ポリープや腫瘍

鼻の中にできたポリープや腫瘍によって、くしゃみが出ることがあります。特に、すっきりしないくしゃみが続く、鼻水や鼻血の出る頻度が高いなどの場合は、鼻腔に何らかのできものがあると考えられるでしょう。

腫瘍が悪化すると、鼻腔の外へと腫瘍が広がっていきます。腫瘍の進行によって眼球や脳が圧迫された場合、食欲不振や顔の変形、鼻血なども生じかねません。

鼻にできる腫瘍は悪性のものが多いため、疑われる場合は速やかに動物病院を受診してください。

犬のくしゃみのうち動物病院を受診したほうが良い症状

眠る犬
犬のくしゃみはそれほど珍しいことではありませんが、注意すべき症状もあります。以下の症状がみられる場合は、速やかにかかりつけの動物病院へ連れていきましょう。

くしゃみが長く続いて止まらない

くしゃみが止まらない場合、ケンネルコフや鼻炎、アレルギーや歯周病などさまざまな病気の可能性が考えられます。

ただの風邪として放置するのは危険です。くしゃみが長く続き、明らかにぐったりしている様子がみられた場合、症状が進行している場合があるため、速やかに獣医師に相談してください。

くしゃみと合わせて鼻血が出た

くしゃみと合わせて鼻血が出た場合、注意が必要です。

犬が鼻血を出すことはあまりありません。そのため、くしゃみと同時に鼻血が出た場合は、歯周病もしくは鼻腔内に炎症が起こっている可能性が考えられます。

特に鼻腔内腫瘍はシェットランド・シープドッグやコリーなど長頭種に多く、また、8歳以上のシニア犬がかかりやすい傾向にあります。

鼻血の他にいびきをする、鼻呼吸が難しそう、顔の形が変わってきたなどの様子がみられた場合は速やかに動物病院を受診してください。

参照元:動物臨床医学|犬の鼻腔内腫瘍の診断と治療

食欲が落ちていたり嘔吐があるなど他の症状がみられる

食欲の低下や嘔吐など他の症状がみられる場合、鼻腔内腫瘍や感染症が疑われます。また、歯周病による口の中の違和感から食欲が低下しているケースも考えられます。

特に感染症の場合、食欲不振や嘔吐だけでなく、震えや痙攣、発熱や扁桃の腫れなどを引き起こす場合もあるため注意が必要です。

犬パルボウイルス感染症や犬ジステンバー感染症、犬アデノウイルス2型感染症などにかかっている場合、重症化すると命を落としかねません。

他の犬への感染拡大を防ぐためにも、食欲低下や嘔吐などの症状がみられる場合は迷わず動物病院へ向かってください。

犬のくしゃみに関連する病気にはペット保険が適用できることも!

見つめる犬
犬のくしゃみには重大な病気が隠れている場合があります。症状によっては手術や入院が必要になることも多く、高額な治療費の請求に慌ててしまうケースも少なくありません。

ここからは、こうしたリスクに備えるペット保険について解説します。

※保険会社や発症のケースによって補償対象外となる場合もあります。詳細は加入中または加入を検討しているペット保険会社へお問い合わせください

高額な治療費など急な出費にも備えることができる

ペット保険のメリットの1つに、急な手術や入院の際の高額な医療費にも備えられる、という点が挙げられます。

ペットには公的保険制度がなく、治療費は全額自己負担です。そのため、万が一手術や入院となった場合に高額になりやすい傾向があります。

そこで頼りになるのがペット保険です。ペットの通院や入院、手術などに対する治療費を補償割合に応じて負担してくれます。

保険に加入することで、急な高額出費に焦ることなく、安心して治療に専念することができるでしょう。

※保険会社や発症のケースによって補償対象外となる場合もあります。詳細は加入中または加入を検討しているペット保険会社へお問い合わせください

犬のくしゃみに関連した病気の具体的な治療費事例

犬がくしゃみをしている場合、その原因によってかかる治療費が異なります。たとえば、歯周病の疑いで来院した場合、麻酔をした上で歯科処置が行われます。

歯周病で来院した場合(抜歯なし)

  • 初診料・・・約1,000円
  • 血液検査・・・約4,000円
  • 全身麻酔・・・約10,000円
  • 歯石除去・・・約5,000円
  • 点滴・・・約1,000円
  • 合計・・・約21,000円(薬代などを除く)

参照元:日本獣医師会|家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査
※上記の診療費等はあくまで一例であり、一般的な平均・水準を示すものではありません
※各診療項目の金額は、動物病院によって異なります

特に歯周病が悪化して下顎骨まで溶けてしまうと、硬いものを噛むだけで簡単に下顎骨骨折を引き起こしかねません。骨折した場合、さらに費用が高額になる可能性もあります。

一方、鼻腔内腫瘍が原因だった場合は、以下のような費用が発生することが想定されます。

鼻腔内腫瘍で来院した場合

  • 初診料・・・約1,000円
  • 検査費(MRIやCT検査、組織診など)・・・約87,000円
  • 全身麻酔・・・約10,000円
  • 放射線治療・・・約30,000円(1回あたり)
  • 合計・・・約128,000円

参照元:日本獣医師会|家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査
※上記の診療費等はあくまで一例であり、一般的な平均・水準を示すものではありません
※各診療項目の金額は、動物病院によって異なります

放射線治療は数回にわたって照射することも多く、通院治療が必要です。なお、上記の治療費等はあくまで一例であり、各項目の金額は動物病院によって異なります。

気になったときすぐに通院できれば病気の早期発見にもつながる

ペット保険に加入していれば経済的負担が軽減されるため、お金がかかるから受診しないといった選択をする可能性が低くなります。

犬はたとえ体調が悪くても、どういう状態なのか言葉では伝えられません。だからこそ、いつもと様子が違うと感じたら、まずは動物病院を受診してみることが大切です。

病気を早期に発見して治療を始めれば、愛犬が病気で辛い期間や治療期間を短くすることにも繋がるでしょう。

以下の記事では、ペット保険について具体的な項目に基づいて比較、解説をしています。合わせてご覧ください。

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獣医師からみた犬とくしゃみの関係

高野 瞳 先生

くしゃみは、多くの飼い主さんが経験する身近なトラブルのひとつです。

異物の排出などの生理的なくしゃみや、犬特有の逆くしゃみのようなものもあり、飼い主さんにとっては受診の判断が難しいですね。

くしゃみをする時間が長かったり、食欲不振など他の症状もみられたりするようであれば、早めに受診しましょう。

くしゃみや、同時によく起こる鼻水などの症状は、重大な病気が原因となっている可能性もあります。

長期にわたる治療や高度な検査が必要となり、費用が高額化してしまうケースも少なくありません。

万が一の場合にも、安心して治療を受けることができるように、ペット保険の加入も検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

寝そべる犬
犬も人と同じようにくしゃみをすることもあるため、すぐに治まるならば慌てる必要はありません。

しかし、くしゃみが長く続いたり、鼻血が出たりする場合は重大な病気が潜んでいる場合が考えられます。いつもと様子がおかしいと感じたら、速やかに獣医師の診察を受けるようにしましょう。

また、犬のくしゃみに関連する病気の中には、治療費や入院費が高額になるケースが少なくありません。万が一の備えとして、ペット保険加入について検討しておくこともおすすめします。

ABOUT ME
記事監修|高野 瞳 先生
獣医大学卒業後、地元千葉県の動物病院に勤務。 身近な症例から介護、終末期獣医療まで幅広い診察経験を活かし、数年後には更に高度な獣医療を学ぶため、出身大学動物病院全科研修医として勤務。 希少な症例や高度および最先端な技術を学んだのち、再び小動物臨床の現場に戻り、1.5次動物病院勤務。また、鳥類臨床にも興味を持ち勉強中。 現在は、妊娠・出産を経て育児と仕事の両立を目指している。
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