愛犬が血尿をした場合、どんな原因が考えられるのでしょうか?
犬の血尿にはさまざまな原因があり、他の症状や犬の様子と合わせて判断する必要があります。
本記事では、犬が血尿をする原因と対処法、血尿の予防法やペット保険の必要性について解説します。
犬の血尿の原因は病気の症状である可能性が高い
犬が血尿をしている場合、そのほとんどは病気が原因です。血尿には、泌尿器疾患や腎臓疾患が隠れていることが多いため、注意してください。
ここでは、犬が血尿をしたときに考えられる主な病気を解説します。
尿路結石
尿路結石症は、膀胱・尿道・尿管・腎臓などに結石ができる病気です。結石や結晶ができると尿路内の粘膜が傷つき、血尿がみられるようになります。
尿路結石症は、細菌感染や栄養バランスの乱れ、ストレスなど、さまざまな原因で発症します。
ミニチュア・シュナウザーやシー・ズーなど、遺伝的に尿路結石ができやすい犬種は、特に注意しましょう。
腎不全
腎不全とは、腎臓の機能が大きく低下した状態のことです。
症状は、血尿のほか、元気・食欲の低下や嘔吐などがみられます。薬の影響や金属中毒、老化や尿路結石症による尿路閉塞などが原因で発症することが多いでしょう。
ぶどうやレーズン、不凍液(エチレングリコール)、ユリ科の植物などを犬が摂取すると、中毒を起こして急性腎不全になるこケースがあります。
なお、腎不全には急性と慢性の2種類があります。急性腎不全の場合、適切な治療をすぐに受ければ、腎機能は回復しやすい傾向があります。
対して、慢性腎不全では腎機能の回復が難しく、発症後は病気の進行をゆるやかにする治療が必要です。
膀胱炎
膀胱炎は、膀胱内の炎症によって膀胱機能にトラブルが起こる病気です。主な症状は、血尿、頻尿、残尿感、膀胱の痛み・違和感、元気や食欲の低下などです。
尿が白く濁っている場合は、尿の中に膿が混じる「膿尿(のうにょう)」を起こしているかもしれません。
放っておくと、発熱や腹痛をともなう腎盂腎炎に進行し、腎臓全体に炎症が及ぶ恐れがあります。
膀胱炎の原因は細菌感染や外傷など、さまざまです。精神的な要因も大きく、長時間の留守番や来客、引っ越しなど環境の変化で発症することもあるでしょう。
また、寒い時期は水を飲む量が減り、尿が濃くなることで細菌繁殖を起こしやすくなります。
前立腺肥大
前立腺肥大は、男性ホルモンの異常によって発症する病気です。元気・食欲はあるものの、血尿や排泄困難などの症状がみられるのが、前立腺肥大の特徴です。
排尿時に痛みを伴うため、トイレで「キャン」と鳴いたり、トイレに行きたがらなくなったりします。
前立腺肥大は去勢手術をしていない高齢のオス犬に多く発症する傾向があります。
膀胱腫瘍
膀胱に腫瘍ができると、腫瘍から出血して血尿がみられます。症状としては、いつもよりトイレの回数が増えたり、長時間トイレから出てこなかったりなどがあります。
腫瘍が膀胱の出口をふさいでしまうと尿が出なくなるため、尿毒症を起こすことも考えられます。
なお、膀胱腫瘍は、膀胱炎の治療を行うと一時的に症状が良くなることもあります。そのために発見が遅れやすく、嘔吐や急性腎不全などの症状がみられて初めて気付くことも多いでしょう。
腫瘍は早期発見・早期治療が大切であるため、複数の検査で慎重にチェックすべきです。
病気ではないときの犬の血尿の原因
多くが病気を原因として起こる血尿ですが、中には病気以外の原因もあります。
ここでは、病気以外で犬が血尿を起こす要因について解説します。
性器の損傷
なんらかの原因で性器が傷つくと、排尿時に血が混じることがあります。
他の犬と激しく遊んでいる最中に傷が付いてしまったり、どこかにぶつけてしまったり、原因はさまざまです。小さな傷であれば自然に治るケースが多いため、しばらく様子をみるようにしましょう。
マウンティング癖のある犬は特に要注意
オス犬の場合、過度なマウンティングで性器に傷が付き、出血がみられることもあります。
マウンティングの要因は興奮や発情、優位性の表現などがありますが、習慣化すると怪我のリスクが高まります。
傷が化膿すると包皮炎に発展する可能性があるため、なるべくさせないようにしたほうが良いでしょう。
発情出血
避妊手術をしていないメス犬では、定期的に発情出血があります。発情周期は犬種によって異なりますが、小型犬では3ヶ月~半年に1回程度起こり、2~3週間ほど続きます。
発情出血の場合、はじめは濃い赤色をしていることが多く、日が経つごとに色は薄くなっていきます。
出血が発情によるものかどうかは、陰部の状態をみれば分かります。発情しているメス犬の陰部はピンク色や赤色になり、通常時の2~3倍の大きさに膨らみます。
また、発情中はオス犬を惹きつけるフェロモンを発するため、犬によっては生臭いような独特の匂いがします。
避妊手術をしていない場合は外陰部からの出血や膿に要注意
避妊手術をしていない犬に血尿のような症状がみられた場合、子宮蓄膿症を起こしている可能性があります。
子宮蓄膿症の症状では、元気・食欲の低下のほかに、外陰部からの出血や膿が出ることなどがあり、それが血尿のように見える場合があります。
また、命に関わることも珍しくない病気であり、発症後はすぐに子宮摘出手術を行う必要があるため、すぐに動物病院を受診しましょう。
子宮蓄膿症には「閉塞性」と「開放性」の2種類があります。閉塞性子宮蓄膿症の場合、外陰部からの膿がみられないため、発見が遅れるケースもみられます。
嘔吐・多飲多尿・食欲不振など、いつもと違う様子がみられたら、膿がでていなくても子宮蓄膿症を疑ってください。
血色素尿
血尿と間違えやすいものとして、「血色素尿」というものがあります。
血色素尿は、体内の赤血球がなんらかの原因で破壊され、ヘモグロビンが尿中に排出された状態です。
タマネギ・ニラなどネギ類の誤食による中毒や、溶血性貧血など血液の病気が考えられます。
血色素尿と血尿は尿検査で見分けることができますが、見た目での判断は難しいでしょう。どちらであっても動物病院で適切な治療が必要であることに変わりはなく、迅速な対処が求められます。
愛犬の尿が赤いと感じたら、実際の尿やペットシートを持参し、すぐに動物病院へ相談しましょう。


犬に血尿がみられたときはなるべく早い動物病院の受診がおすすめ
犬に血尿がみられた場合は、できるだけ早く動物病院を受診する必要があります。
病気によってはすぐに治療しなければ手遅れになることもあるため、様子をみるのは危険です。
特に、犬がぐったりしていたり、嘔吐を繰り返したりしているときは、緊急で診てもらえる病院を探しましょう。
犬の血尿は様子見をすることなくすぐに動物病院を受診する
犬が血尿をした場合、泌尿器か腎臓でトラブルが起きていると考えられます。
泌尿器や腎臓疾患では、体内の老廃物や毒素を尿中に排出できなくなったり、尿そのものが出せなくなったりします。
体内に老廃物や毒素が溜まってしまうと命に関わるため、様子見はせず、すぐに動物病院を受診してください。
血尿というと、真っ赤な尿を想像するかもしれません。しかし、混じっている血液の量によって色の濃さは変わるため、実際はピンク色やオレンジ色であることも多いです。
愛犬の尿の色がいつもと違うと感じたら、真っ赤でなくても血尿を疑うべきといえるでしょう。
犬の血尿で必要になる検査
犬に血尿がみられた場合、以下のような検査が必要です。
- 尿検査
- 血液検査
- 超音波検査
- レントゲン検査
まずは尿検査で尿の状態を観察し、細菌や細胞成分、結晶の有無を確認します。
続いて超音波やレントゲン検査で膀胱や腎臓の様子を確認し、各臓器の大きさや尿路結石の有無を調べます。
血尿は泌尿器・腎臓以外の病気でみられることもあるため、血液検査をして他の病気のサインを探す場合もあります。
そのほか、年齢や犬種、性別等も検査結果に加味したうえで、原因となる病気を推測し診断を行います。
参照元:小笠原動物病院|くわしく知ろう!検査項目(1)-尿検査-
犬の血尿にかかわる病気の診療費はペット保険が適用できるケースもある
ペット保険は、大切な家族であるペットの病気や怪我に備えるためのものです。
ペットの診療費は全額自己負担ですが、ペット保険に入っていれば限度額の範囲内で補償が受けられます。
そのため、愛犬が血尿をして治療が必要になったときは、保険金を受け取れる可能性があります。
高額な診療費など急な出費にも備えることができる
ペット保険の大きなメリットは、急な出費にも備えられることです。
血尿をともなう病気は時間とともに症状が悪化することが多く、なかには緊急手術が必要なものもあります。数十万円もの診療費がかかったり、長期間の入院費がかかったりするケースも珍しくないでしょう。
ペット保険に加入しておけば、高額な診療費がかかっても家計の負担を抑えられます。
いざというときに適切な治療を受けるためにも、費用面の圧迫はできる限り少なくしておくことが重要です。
以下記事では、ペット保険各社について保険料や補償内容など、具体的な比較をしています。あわせてご覧ください。

犬の血尿に関連した病気の具体的な診療費事例
血尿がみられる犬の病気では、どのくらい診療費がかかるのでしょうか?ここでは、膀胱炎と慢性腎不全の診療にかかる費用を取り上げ、解説します。
膀胱炎
- 診察料・・・約1,000円
- 尿検査・・・約1,000円
- 超音波検査・・・約3,000円
- レントゲン検査・・・約3,000円
- 合計・・・約8,000円(薬代など除く)
参照元:FPC|膀胱炎
日本獣医師会|家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査
※上記の診療費等はあくまで一例であり、一般的な平均・水準を示すものではありません
※各診療項目の金額は、動物病院によって異なります
慢性腎不全
・診察料・・・約1,000円
・尿検査・・・約1,000円
・血液検査・・・約4,000円
・超音波検査・・・約3,000円
・レントゲン検査・・・約3,000円
・点滴・・・約1,000円
・合計・・・約13,000円(薬代など除く)
参照元:FPC|慢性腎不全
日本獣医師会|家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査
※上記の診療費等はあくまで一例であり、一般的な平均・水準を示すものではありません
※各診療項目の金額は、動物病院によって異なります
膀胱炎や尿路結石症などは再発率が高く、何度も繰り返し起こるケースが多いです。また、慢性腎不全は一生涯にわたって治療が必要であるため、医療費が高額になることも珍しくありません。
年間で10万円以上もの診療費がかかることを考えると、家計には大きな負担といえるでしょう。
ペット保険は、必ず入らなければいけないものではありません。しかし、いざ愛犬が病気になったとき、ペット保険の存在は大きな心の支えになります。
これから先、愛犬とともに過ごす時間の長さを考えると、「入っておいて良かった」と思える可能性は十分あるでしょう。
犬との暮らしには思わぬトラブルがつきものだからこそ、元気なときからの備えが大切です。
犬の血尿の予防方法
血尿がみられる病気のなかには、予防が難しいものもあります。しかし、普段の生活を見直すことで、病気の発症リスクを抑えることができるかもしれません。
ここでは、犬の血尿の予防方法を大きく2つに分けて解説します。
ストレスを減らしながら免疫力を高める
ストレスは免疫力を低下させ、さまざまな病気を引き起こします。
日々の散歩や遊びを通してストレスを発散させ、愛犬の免疫力を高めておきましょう。梅雨時など雨が続いて外に出られない場合は、室内でできる遊びを取り入れるなどの工夫も必要です。
犬がストレスなく暮らせる環境を用意し、病気に負けない体作りを心がけることが大切です。
腎臓に負担をかけない生活を心がける
適切な食事管理を行い、腎臓への負担をかけないことも重要です。
腎臓病を防ぐためには、「いかに腎臓へ負担をかけず生活できるか」ということがポイントです。塩分・タンパク質の摂りすぎや水分不足は腎臓に負担がかかるため、特に注意しましょう。
また、睡眠不足や不規則な生活も腎臓に負担をかけます。犬が1日に必要とする睡眠時間は、子犬で19時間程度、成犬で12時間~15時間・老犬で19時間程度といわれています。
人間のリズムに合わせた生活は犬にとって負担が大きく、さまざまな体調不良の原因になります。愛犬の健康のためにも、食事・運動・睡眠のリズムはできる限り整えてあげましょう。
日常生活で急によく水を飲むようになったり飲水量が増えたときは要注意
犬の飲水量が急に増えたときは、なにかの病気のサインかもしれません。
腎臓病や子宮蓄膿症など、血尿の症状がみられる病気の多くは、飲水量がかなり増える傾向にあります。適度な水分摂取は健康維持のために必要ですが、突然たくさんの水を飲み始めたときは注意が必要といえるでしょう。
個体差はありますが、犬に必要な1日の水分量は1kgあたり40ml~60ml程度です。
いざというときすぐ異常に気付けるよう、愛犬が元気なときの飲水量を把握しておくと良いでしょう。
監修担当の獣医師より
犬の血尿は、臨床獣医師として働いていると比較的よく遭遇する症状ですが、飼い主さんにとっては、愛犬が急に血尿を出す様になると驚き、不安になることもあるかと思います。
血尿の原因はさまざまであり、検査をしないことには、本当に血尿かどうかも判断つかないことが多いです。
そのため、いつもと尿の色が違っていたり、排尿回数が多くなっていたりした場合には、まずは動物病院で診察を受けることをお勧めします。
血尿に限らずどんな病気もですが、早期発見、早期治療が大切です。
しっかりと動物病院を活用してあげて、愛犬との暮らしをより良いものにしていきましょう。
まとめ
犬の血尿がみられる病気には、命に関わる重い病気が多くあります。症状の進行を抑え、初期の時点で治療を行うには、早期発見が大切です。
普段から愛犬の様子をよく観察し、いつもと違ったことはないか、常にチェックしておきましょう。
また、いざというときに備えてペット保険に入っておくと、高額な診療費がかかっても安心です。ペット保険は犬の年齢や健康状態によって加入できないケースもあるため、元気なうちの備えが必要です。
大切な家族の万が一を考え、愛犬が若い頃から加入を検討してみてはいかがでしょうか。

