症例編

【獣医師監修】猫の血尿の原因は?発症している可能性のある病気や診療費への備え方を紹介

猫が血尿をした時、「なにが原因だろう?」と悩む方も多いでしょう。猫の血尿には命にかかわる病気が隠れていることもあるため、放置してはいけません。

本記事では、猫の血尿の原因と可能性のある病気、診療費への備え方などについて解説します。

猫の血尿が起こる原因

ソファに座る猫
猫の血尿が起こる原因はさまざまです。なかには命にかかわるものもあるため、注意が必要といえるでしょう。

ここでは、猫の血尿の原因を解説します。

病気などの影響で泌尿器から出血が起こる

猫が血尿をしている場合、まず疑われるのは病気の影響による出血です。

猫の血尿の多くは泌尿器からの出血が原因であり、尿管・膀胱・尿道のいずれかが傷ついていると考えられます。陰部から出血していたり、尿に血が混じったりしている場合は、なんらかの病気を疑いましょう。

なお、泌尿器疾患のなかには、悪化すると命にかかわるものも珍しくありません。治療が遅れたことで慢性化し、長期間の治療が必要になるケースもあるため、早期発見・早期治療が大切です。

溶血が起こり血色素尿が排泄されている

免疫介在性溶血疾患や玉ねぎ中毒などが原因で、血色素尿が出ている可能性もあります。

血色素尿とは、「破壊された赤血球から漏れ出した色素が混じった尿」のことで、溶血性貧血を起こしている時にみられます。

血色素尿の他、口の中が白い、ふらふらしている、食欲がないなどの様子がみられたら、ひどい貧血の可能性があるでしょう。

血色素尿と血尿を見分けるには尿検査で成分を確認する必要があり、見た目で判断することはできません。重度の貧血の場合、輸血・酸素吸入など、猫の全身状態を回復させる治療を行います。

犬と異なり発情に伴う出血は起こらないため注意

猫は、発情に伴う出血が起こりません。

犬の場合、定期的に「ヒート」と呼ばれる発情期が訪れ、出血は1~2週間ほど続きます。このように一定間隔で発情出血する動物は「自然排卵動物」と呼ばれます。

一方、猫は「交尾排卵動物」であり、犬のような発情出血はいっさいみられません。猫の陰部から出血がみられた際は異常のサインであるため、「発情出血だろう」と勘違いしないようにしましょう。

猫が血尿をした時に発症している可能性のある病気

寝ている猫
猫が血尿をした時は、なんらかの病気のサインと考えられます。ここでは、猫の血尿の原因として考えられる4つの病気について解説します。

膀胱炎

膀胱炎とは、なんらかの原因で膀胱が炎症を起こす病気です。
原因として細菌感染や膀胱結石などが挙げられますが、猫では原因不明で発症する特発性膀胱炎が最も多く、2017年出版の専門書*のデータによると、特発性膀胱炎が55%、尿路感染症が18.9%、尿道閉塞が10.3%、尿石症が10.3%となっています。

膀胱炎を発症した猫には、トイレに何度も入る、トイレで鳴く、落ち着きがなくなる、血尿が出るなどの症状がみられます。

膀胱炎は再発率が高く、難治性のものもあります。完治まで時間がかかった場合、慢性膀胱炎に進行し、膀胱からの出血も起こりやすくなるでしょう。

*参照元:Textbook of Veterinary Internal Medicine 8th

特発性膀胱炎はストレスが原因となっているケースも多い

細菌感染や結石のような原因がなく発症する膀胱炎のことを、特発性膀胱炎といいます。

特発性膀胱炎はストレスが引き金となって発症することが多く、再発のリスクも高いです。

特発性膀胱炎を防ぐには、猫にとってのストレスを的確に見極め、ストレスの原因を取り除かなければいけません。

尿道炎

尿道炎とは、細菌などによって尿の通り道である尿道に炎症が起きる病気です。

猫が尿道炎を発症すると、血尿をはじめ、不自然な姿勢での排尿や膿が混じって白く濁った「膿尿」がみられます。排尿時の痛みやかゆみから陰部を舐め続ける猫も多く、悪化しやすい病気といえるでしょう。

治療は抗生物質や消炎剤などの投与を行いますが、悪化すると尿道閉塞につながる可能性もあるため、注意が必要です。

猫のトイレはこまめに掃除をし、常に清潔を保つことが大切です。陰部を舐める癖がある猫には、歯磨きやサプリメントなどで口腔内の環境を整え、細菌感染のリスクを減らしましょう。

尿路結石

尿路結石とは、食事や生活習慣、体質などが原因で尿路に結石ができる病気です。

尿路結石には、若い猫に多い「ストルバイト結石」と中~高齢猫に多い「シュウ酸カルシウム結石」の2種類があり、血尿、残尿感、排尿時の痛み、食欲不振などの症状がみられます。

尿路結石になった猫の尿をよく確認すると、結晶や結石がキラキラと光って見えることもあるでしょう。

治療は特別療法食を中心に行いますが、結石が尿道に詰まった場合、カテーテルを使った処置や緊急手術が必要になるケースもあります。

なお、雄猫は尿路結石を発症しやすく、結石による尿道閉塞のリスクも高いといわれています。再発を繰り返す場合には、尿道を短くする手術をすすめられることもあります。

参照元:Textbook of Veterinary Internal Medicine 8th

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腫瘍

腎臓や膀胱の腫瘍が原因で、血尿がみられることもあります。
腫瘍が正常な組織を圧迫したり傷つけたりすると、体内で出血が起こり、尿に混じって排出されることがあるためです。

腎臓がんでは、尿量が増える、おなかが張るなどの症状がみられるのが一般的です。

一方、膀胱がんの症状は、尿量が減る、トイレの回数が多いなど膀胱炎の症状とよく似ています。膀胱炎の治療で一時的に症状が良くなることもあるため、発見が遅れやすい病気といえるでしょう。

なお、腎臓がんや膀胱がんは大きくなると尿路閉塞を引き起こす可能性があるため、できるだけ早い段階での治療が求められます。治療は主に外科的切除を行いますが、膀胱がんでは投薬治療によって腫瘍の成長を抑えることもあります。

猫に血尿がみられたときの対処法

座っている猫

猫に血尿がみられた場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。
ここでは、動物病院を受診するタイミングと、自宅で様子を見ても良い場合について解説します。

基本的には放置することなく動物病院の受診が望ましい

猫が血尿をしている場合は、なるべく早く動物病院を受診すべきです。

血尿がみられるということは、泌尿器にトラブルが起きている証拠であり、治療の必要があります。特に、猫がぐったりしていたり、明らかに元気がなかったりする時は、夜間でも救急で診てもらえる動物病院を受診しましょう。

ひとくちに血尿が起こる病気といっても、膀胱炎や尿路結石、腫瘍などさまざまですが、場合によっては命にかかわる可能性も考えられます。

猫に血尿がみられたときは、できるだけ早い段階で診察を受けることが大切です。

自宅で様子を見ても良いのは軽微な場合のみ

猫に血尿がみられたとき、以下のような様子があれば、自宅で様子を見ても良いでしょう。

  • 元気・食欲がある
  • 排尿回数に変化がない
  • 血尿が出たのは一回だけ
  • 尿量は普段と変わらない程度

ただし、猫の行動や様子に少しでも変わった様子がある場合は、必ず獣医師に相談してください。

様子を見ているうちに病状が悪化する可能性もあるため、自己判断で動物病院を受診しないのは危険です。なんとなく違和感を感じる程度であっても、万が一のことを考えれば動物病院で詳しい検査をしてもらうべきといえます。

なお、血尿の診察では尿検査を行うことが多いため、尿が採れそうな時は持参すると良いでしょう。

猫の血尿のうち速やかに受診したほうがいい危険な症状

寝ている猫
ここでは、猫の血尿とともにみられる症状のうち、緊急性が高い症状について解説します。

血尿が治らないまま食欲喪失や元気の消失がみられる

血尿が治らず、元気・食欲もない場合は、病気が進行している可能性があります。特に子猫や老猫、持病がある猫では衰弱が激しく、急激に状態が悪くなる恐れもあるでしょう。

粘膜の損傷が激しく感染が起きてしまった場合、敗血症を起こしてショック状態になることも考えられます。猫の元気・食欲がない場合は病態が悪い可能性を考え、すぐに動物病院を受診しましょう。

なかなか尿が排泄されず頻繁にトイレにいく

いつもより頻繁にトイレに行くものの、尿がほとんど出ていない場合も注意が必要です。尿がほとんど出ない・まったく出ない場合、尿路閉塞の疑いがあります。

尿がほとんど出ない状態が半日程度続くと、急性腎不全を起こす可能性があり、非常に危険です。見た目では元気そうに見えても、急激に体調が悪化する恐れがあるため、すぐに動物病院へ向かってください。

嘔吐の症状がみられる場合には急性腎不全を発症している可能性も

尿ができない状態で嘔吐もみられる場合は、すでに急性腎不全を起こしているかもしれません。

急性腎不全が進行すると老廃物や毒素が体内に溜まってしまい、尿毒症を起こす恐れがあります。治療が遅れると慢性腎不全に移行する可能性もあるため、迅速な処置が求められる状態といえるでしょう。

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排尿時に痛がったり鳴き声をあげたりする

猫が排尿時に鳴く時は、膀胱や尿道に痛みを感じている証拠です。鳴くほど痛い場合、症状はかなり進行していると考えられるため、すぐに治療を受けなくてはいけません。

場合によっては尿道が閉塞し、腎不全や尿毒症を起こす可能性があるため、自然治癒に任せるのは危険です。

猫の血尿にかかわる病気の診療費にはペット保険が適用できる場合も

こちらを見る猫
膀胱炎や尿路結石など、血尿がみられる病気の治療には、ペット保険が適用されることもあります。ここでは、血尿がみられる病気の診療費例とペット保険に加入していた場合のメリットについて解説します。

猫の泌尿器疾患の診療費事例

猫の泌尿器疾患にかかる診療費は、どのくらいかかるものなのでしょうか?ここでは、尿路結石と膀胱がんを取り上げ、具体的な診療費例を紹介します。

【尿路結石】

  • 診察…800円
  • 入院(2泊3日)…9,000円
  • 検査…25,000円
  • 全身麻酔…17,500円
  • 手術…45,000円
  • 結石分析…4,500円
  • 点滴…12,600円
  • 処置…6,000円
  • 注射…5,400円
  • 薬…2,000円

合計…127,800円

参照元:アイペット損害保険株式会社|猫の手術・通院費用はどのくらいかかる?
※上記の診療費等はあくまで一例であり、一般的な平均・水準を示すものではありません
※各診療項目の金額は、動物病院によって異なります

【膀胱がん】

  • 診察…約1,000円
  • 血液検査…約4,000円
  • 尿検査…約1,000円
  • X線検査…約3,000円
  • 超音波検査…約3,000円
  • 病理組織検査…約10,000円
  • 膀胱腫瘍摘出…約50,000円

合計…72,000円(入院費・薬代を除く)

参照元:株式会社FPC|膀胱腫瘍
参照元:日本獣医師会|家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査
※上記の診療費等はあくまで一例であり、一般的な平均・水準を示すものではありません
※各診療項目の金額は、動物病院によって異なります

いずれの病気も、治療には高額な費用がかかります。治療が遅れたことで、慢性腎不全など完治が難しい病気に移行してしまった場合、診療費は更に家計を圧迫するでしょう。

病気はある日突然起こるものであり、予測できるものではありません。猫には不調を隠す本能があるため、ちょっとした体調不良だと思っていたら、思いがけず診療費がかかることも珍しくないでしょう。

長期的に発生する可能性のある通院費負担をカバーできる

長期の通院が必要になった場合、家計の負担は大きいもの。そんな時、ペット保険に入っていれば、診療にかかる金銭的な負担をカバーできます。

診療費の負担が減ることで、高額な費用がかかる治療も選択しやすいという安心感もあるでしょう。

また、猫の泌尿器疾患は再発率が高いものが多く、繰り返し血尿を起こすことも珍しくありません。その点、ペット保険へ加入している場合、通院に対するハードルを下げることができるため、様子がおかしいと感じた時にすぐ動物病院を受診できます。

いざという時に備えてペット保険に入っておくことは、愛猫の健康を守ることにつながるといえるでしょう。

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泌尿器系の既往歴がある場合は補償の対象外となる可能性がある

膀胱炎や尿路結石などをはじめ、泌尿器系の病気を発症したことがある場合はペット保険に加入できなかったり、条件付きでの加入になったりする可能性が考えられます。

加入の可否や、補償の条件などは保険会社によって異なりますが、あらかじめ保険の適用対象外となる疾病を定めている会社も少なくありません。

いざという時に万全の補償が受けられるよう、ペット保険への加入を検討する際は病気にかかる前のなるべく早いタイミングをおすすめします。

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監修担当の獣医師より

小島 麻里 先生

猫が突然血尿をするとびっくりされると思いますが、そこにはさまざまな病気が隠れていることが多いです。

猫は自分の体調不良を隠す性質があるため、こちらが思っているよりも痛みなどで強いストレスがかかっているにも関わらず、なかなか気付けないこともあります。

血尿で受診される子の中には「もっと早く連れてきてくれれば……」と思うくらい痛みに耐えている子もいますので、いつもと比べてトイレの様子が変だと気づかれた場合は早めに動物病院に相談しましょう。

無症状でも、尿検査で潜血反応や尿石が見つかることもありますので、定期的な健康診断をおすすめします。

まとめ

宙を見つめる猫
猫の血尿は比較的多くみられる症状であり、病気にいち早く気付くためのサインでもあります。「よくみられる症状ゆえ、放っておけば治るだろう」と思ってしまいがちですが、病気によっては長期間の治療が必要なケースも珍しくありません。

血尿は命にかかわる可能性もあることを覚えておき、日頃から体調チェックは欠かさないようにしましょう。

また、いざという時の費用負担を減らすための選択肢のひとつとして、ペット保険の加入を検討しておくことも大切です。愛猫に納得のいく治療を受けさせてあげるためにも、今のうちにペット保険について調べてみてはいかがでしょうか。

ABOUT ME
記事監修|小島 麻里 先生
酪農学園大学獣医学部獣医学科を卒業後、10年間小動物臨床に従事。 地域密着型の1次病院で経験を積み、東京大学動物医療センターで内科系研修医と並行して臨床研究を行う。 潜水士およびペット管理栄養士取得。7歳になる保護猫2匹(おもち・だんご)と暮らす。 めい動物病院
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トリセツ編集部(アニマライフ)
トリセツ編集部(アニマライフ)についてはこちら>>

ペット保険のスペシャリストである少額短期保険募集人資格保有者が記事の執筆・監修をしています。ペット保険の情報をわかりやすくお伝えすべく、日々最先端のペット保険情報をチェックしています。犬や猫の「もしものとき」に備えるためのペット保険選びを正しい情報でサポートします。
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