本記事では、猫風邪の症状や感染時の診療費、様子見のリスクや万が一の診療費の備えとなるペット保険について解説します。
猫風邪を発症した猫にみられる症状や特徴

猫風邪とは、鼻から喉までの上部気道に炎症が起こる病気で、細菌やウイルスなどによって引き起こされます。猫風邪には子猫がかかると重症化する危険もあるため注意しましょう。
まずは、猫風邪の症状や特徴について解説します。
参照元:公益社団法人・日本獣医師会|犬や猫は風邪を引くのでしょうか。
主に人間の風邪と似たような症状がみられる
猫風邪では、人間の風邪のような症状を引き起こします。
- 発熱
- くしゃみ
- 鼻水
- 鼻詰まり
- 目やに
- 咳
- 口の中の炎症
子猫の場合、成猫よりも重症化しやすいため、感染初期のうちに治療しておくことが大切です。
また、猫の食欲には嗅覚が強く影響しているため、鼻詰まりなどから食欲の減退に繋がる可能性もあります。特に子猫がご飯を食べない場合は低血糖になりやすいため、たとえ元気にみられる場合でも念の為動物病院で検査しておきましょう。
参照元:ペット栄養学会誌|犬と猫の嗜好性
感染した猫風邪の種類によっては角膜炎や結膜炎の可能性も
感染内容によっては、角膜炎や結膜炎に発展する可能性もあります。
角膜炎
角膜の変色や目やに、目の痛み
結膜炎
涙量や目やにの増加、結膜の赤みやまぶたの腫れ
目やにの量が多い、充血しているなどの症状がみられる場合、目に何らかのトラブルが生じていると疑われます。「たかが目やに」と軽く考えず、症状が悪化する前に早めに獣医師に相談することをおすすめします。
人間にうつることはないが猫同士は感染する
人間にはうつりませんが、猫同士ではくしゃみなどの飛沫や、グルーミングなどによる接触から猫風邪にかかる可能性があります。
そのため、多頭飼いの環境で、1匹の猫が猫風邪を患った場合は、なるべく他の猫と触れ合わないようにさせることが大切です。感染が疑われる時点で、獣医師の指示の下で隔離などの処置を取るようにしましょう。
猫風邪の種類は発症の原因によって異なる

猫風邪は、さまざまな原因から起こる上部気道の疾患の総称であるため、原因ごとに異なる症状がみられます。ここからは、猫風邪の中でも代表的な病気について解説します。
猫カリシウイルス感染症
代表的な猫風邪としてまず挙げられるのは、猫カリシウイルス感染症です。感染猫との接触からうつるとされ、世界中で猫の感染が認められています。
発症した場合、以下のような症状がみられます。
- くしゃみ
- 発熱
- 歯肉炎
- 口内炎
- 口腔内潰瘍
歯肉炎や口内炎など、口腔内に症状がみられるのが特徴です。口腔内の痛みが進行した場合、大量のよだれや食欲不振などを引き起こすこともあります。
また、回復後も、しばらくウイルスを排出するケースがあるため、他の猫に感染させないよう注意しましょう。
猫カリシウイルスの感染を100%防ぐことは難しく、ワクチンによって発症を抑える、もしくは重症化しないようコントロールする必要があります。
参照元:猫感染症研究会|猫カリシウイルス感染症
猫ウイルス性鼻気管炎
猫ヘルペスウイルスが原因で、猫カリシウイルスと同様に飛沫や接触感染によりうつる疾患で、代表的な猫風邪の1つです。発症した場合、以下のような症状がみられます。
- くしゃみ
- 発熱
- 歯肉炎
- 口内炎
- 口腔内潰瘍
くしゃみの他に、目にも症状があらわれやすいのが特徴です。特に子猫が感染した場合、食欲不振から脱水や衰弱が激しくなることもあり、命にかかわりかねません。猫ヘルペスウイルスは体内から完全に排除することが難しく、回復後も何らかの理由から体力や免疫力が低下した際には再度発症することもあるため注意しましょう。
また、猫ウイルス性鼻気管炎もワクチンを接種することで、感染しても発症を抑える、症状をコントロールすることが可能です。
症状が軽く免疫力や体力がある猫であれば猫風邪は自然治癒する

体力のある猫が猫風邪を患った場合、軽い症状ならば自然に治る場合があります。しかし、病状によっては放置している間に症状が進み、病気の慢性化や別の病気を併発する可能性もあるため注意しましょう。
慢性化しやすい病気でもあるため可能なら速やかに動物病院を受診
自然治癒が期待できる一方で、猫風邪は慢性化しやすい傾向があります。例えば子猫が患った場合、免疫力や体力が低いため、放置するほどリスクが高まります。少しの症状で一気に衰弱する恐れもあるため、自然治癒どころか、命にかかわりかねません。
成猫の場合も、元気消失や食欲低下から別の病気を引き起こす恐れがあるため、猫風邪の症状がみられる場合は、なるべく早く獣医師に相談することをおすすめします。
猫風邪らしき症状が現れてから1日程度で受診しておいたほうが良い
猫風邪らしき症状がみられる場合、様子を見るのは長くて1日程度に留めましょう。たとえ鼻水やくしゃみといった少しの症状でも、不調が続く場合は身体に異変が起こっている可能性があります。
そのため、飼い主が気づくほどの症状がみられる場合、すでにある程度病気が進行していることも考えられます。速やかに動物病院で診察を受けましょう。
重症化すると肺炎や気管支炎につながる恐れもある
症状が悪化すると、呼吸の異常を伴うことも多いのが猫風邪の特徴の1つで、肺炎や気管支炎、喘息などに繋がる恐れがあります。特に肺炎を発症すれば高熱や呼吸困難を起こし、場合によっては命の危険を伴うこともあるでしょう。
また、ウイルスの混合感染やクラミジアなどの重複感染を起こしている場合も、重篤化しやすい傾向があります。結膜炎が酷くなる、くしゃみが続くなどの場合は状態が悪化している恐れがあるため、速やかに動物病院へ連れていきましょう。
猫風邪の治療にかかる費用にはペット保険が適用できるケースも

猫風邪は、症状の内容によっては長期にわたる治療が必要になることが多く、診療費が高額になるケースが考えられます。こうした万が一の診療費負担に備えて、ペット保険への加入を検討しておきましょう。
猫風邪はインターフェロン製剤などの投薬治療が一般的
猫風邪の治療は、インターフェロンや抗ヘルペス薬などを使って治療するのが一般的です。特に子猫や体力・免疫力の低下がみられる猫の場合、対症療法に加えて、混合感染の予防として抗生剤などを投与する場合もあります。
その他、目やにや鼻水など局所的に症状がみられる場合は、点眼薬や点鼻薬などを用いて、症状が進行するのを防ぎます。鼻詰まりなどの症状は食欲の低下に繋がりやすいため、全身状態の具合によっては食欲増進剤などを使用するケースもあるでしょう。
参照元:たかつきユア動物病院|【獣医師監修】猫風邪ってどう治療していけばいいの?
猫風邪の診療費事例
猫風邪は、その原因によってかかる診療費が異なります。例えば、猫カリシウイルス感染症の疑いで来院した場合、一般的には以下のような検査が行われます。
猫カリシウイルスの疑いで来院した場合
- 初診料……約1,000円
- 血液検査……約4,000円
- FIV|FeLV検査……約4,000円
合計金額:約9,000円(薬代など除く)
参照元:日本獣医師会|家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査
※上記の診療費等はあくまで一例であり、一般的な平均・水準を示すものではありません
※各診療項目の金額は、動物病院によって異なります
猫カリシウイルス感染症によって関節炎や肺炎、脱水などの症状がみられる場合、より細かい検査などが行われることがあるため、さらに診療費がかかるでしょう。また、軽度の猫ウイルス性鼻気管炎の場合は、以下のような費用発生が想定されます。
猫ウイルス性鼻気管炎の疑いで受診した場合
- 初診料……約1,000円
- レントゲン検査……約3,000円(1枚につき)
合計金額:約4,000円(薬代など除く)
参照元:
株式会社FPC|猫ヘルペスウイルス感染症
日本獣医師会|家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査
※上記の診療費等はあくまで一例であり、一般的な平均・水準を示すものではありません
※各診療項目の金額は、動物病院によって異なります
鼻水が酷い場合はネブライザーで吸入する、結膜炎や角膜炎などには点眼するなど、症状に応じた治療も合わせて行うため、場合によってはさらに費用がかかる可能性があります。
万が一入院が必要になった際には費用が高額化しやすい
ご飯を食べようとしない、明らかにぐったりしているなどの場合は、回復するまで連日通院して点滴や注射を受ける必要があります。猫の状態や環境によっては、入院して集中的な治療が行われるケースがあるため、高額な診療費がかかる可能性が高いでしょう。
また、あまりに経過が長い、症状の改善がみられないなどの場合、猫風邪以外の病気の可能性が疑われます。対症療法と並行して精密検査を進めるため、さらに診療費がかかる傾向があります。
要注意!ワクチンで予防できる病気は補償されない可能性もある
ペット保険は動物病院を受診する際に頼りになる存在です。しかし、ワクチンで予防可能な病気は原則補償されません。ワクチンで予防ができる猫風邪は、ペット保険の補償対象外となる可能性もあるため注意が必要です。
ただし、ワクチンを接種していて、その有効期間内に猫風邪を発症した場合や、猫の健康状態や体質などから、獣医師の判断によってワクチンが受けられなかった場合などには、診療費が補償される場合もあります。
ペット保険加入を検討する際は、各保険会社の補償内容について問い合わせてみると良いでしょう。

猫風邪の予防方法

猫風邪の種類によっては、1度かかるとウイルスが体内から排出されず、体力低下などに伴って再び発症する場合もあります。そのため、感染しないよう予防しておくことが大切です。
ワクチンを接種させる
猫風邪を予防する方法として、まずワクチンが挙げられます。特に免疫力の低い子猫が感染すると、重症化しかねません。そのため、ワクチンを打つことで感染予防や感染時の重症化予防をする必要があります。
猫風邪に有効なワクチンは、3種・5種および猫免疫不全ウイルス単体(1種)の3種類です。愛猫の健康を守るため、適切な時期に猫のライフスタイルに合ったワクチンを接種しましょう。
また、ワクチンの副作用として、食欲不振や軽い発熱など副作用がみられる場合があります。ワクチンを打った後は愛猫の様子を観察し、翌日になっても症状が続くようであれば獣医師に相談することをおすすめします。
他の猫との接触を回避する
猫風邪の予防には、他の猫との接触を回避することも欠かせません。猫風邪は、特に野良猫から感染することも多い感染症です。そのため、外で生活する機会をできるだけ少なくし、他の猫と接触させないように努めましょう。
また、猫風邪は感染力が非常に強い病気です。感染猫と直接触れ合わずとも、食器やトイレ、ベッドなどを共有することで感染することがあるため、多頭飼いの環境ではさらに慎重な対処が求められます。
獣医師からのコメント
猫風邪(猫の呼吸器に症状を起こす感染症)は「キャットフル」と呼ばれ、その中でも重要な病原体は猫カリシウイルス、猫ヘルペスウイルス、猫クラミジア、ボルデテラ菌の4つです。
これらは1つでも症状を引き起こしますが、猫風邪のほとんどは混合感染することで症状が複雑になったり治りにくくなります。
子猫や高齢猫は体力や免疫力が低いため、様子をみていると衰弱したり命に関わることもあります。
早めにかかりつけの動物病院に相談するようにしましょう。
まとめ
猫風邪は、くしゃみや鼻水など人間の風邪のような症状がみられますが、治療が遅れると重症化して命にかかわりかねません。慢性化しやすい傾向もあるため、鼻水やくしゃみなどの症状がみられる、いつもより食欲がないなどの症状がみられる場合は、早めに獣医師に相談することをおすすめします。
猫風邪はワクチン接種によって予防ができるため、1度動物病院で相談してみてはいかがでしょうか。


